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オリジナルBL小説を扱ってます。 メインはLiebeシリーズ(不良×平凡)サブでCuadradoシリーズ(生徒会長×お調子者と親友たちの4角関係)も。pixivで漫画連載してます。更新情報はツイッターでどうぞ。
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球技大会の翌日、聖人が休んだ。

高校で皆勤を狙っていたあいつの欠席の連絡は朝の教室をどよめかせるのには充分で、本人からメールを貰ったオレでさえ驚きを隠せなかった。


「聖人くん大丈夫かな…いないと寂しいね…」
「……ああ」
お昼休み。
箸を持つ手を止め、俊が溜息交じり呟いた。
オレも空席になっている一箇所を見つめながら頷く。

昨日のバスケの部優勝の立役者がいないことで、今日の放課後行う筈だった打ち上げは延期になった。
あいつ一人いないだけで、うちのクラスは灯りが消えたようだ。

(…なにかあったのか)

メールには熱が出たと書いてあったが、その原因が引っかかっていた。
昨日の聖人は明らかに様子がおかしかったからだ。
あいつのことは他の誰より判っているつもりだ。
昨日、あれから聖人がいつも以上にテンションが高かったのは優勝の喜びからではなく、何かしら抱えていることを隠すためだった筈だ。

オレに、悟られないように。

(…なんでだよ…)

面白くない。
自身でよく理解しているが、オレはかなり嫉妬深い。
巧がジャージを貸していたことさえ気に食わないくらいだ。
オレの試合中に、2人に何かあったんだろうか。

最初は直ぐにでも、巧に直接聞き出してやろうかと思った。
だが、お互い今まで口に出していなかった話題を持ち出すのは躊躇われた。
ぐらぐらと揺れる危ういバランスで成り立っているオレ達の関係を壊し、水面下で行われていた戦いを鮮明にしてしまうことになるからだ。

それは時期尚早だ。確信を持ってからでも遅くない。
どちらにせよ、いつかはぶつかる運命なのだから。
同じ人間を好きになってしまった者同士、必ず。


「…どうしたの?ボーッとして」
「ん、ああ…何でもないよ」
不思議そうな俊の声に笑いかけながら、殆ど味を感じないおかずを口に突っ込んだ。


この日は生徒会もなく、オレは授業が終わると聖人の家を目指した。
見舞いに行くと昼休み中にメールをすると、移すと悪いからとやんわり拒否されたが押し切った。
こいつは辛いとか負の感情を口にしないから、こういうときは強行するに限るのだ。
会いたくない気持ちもあるのかとは…思いたくないが。

古いアパートの鉄階段を上がり、角部屋が聖人の家だ。
途中コンビニで買ったスポーツ飲料と額に貼る冷感シートと林檎の入った袋を下げて、オレは部屋をノックした。
「聖人。オレ、翼だけど」
「あ~…鍵空いてる…」
不用心だな、と思いつつドアノブを回し、中へ入る。

意外にといっては失礼だが聖人の家には片付いている。
というより、あまり物を置かないからだろう。
家電の他に目立つといえば、アメリカプロバスケ選手のポスターとバスケ雑誌、そして家族の写真くらいだろう。

勝手知ったる、といった様子で奥まで進むと、窓に沿ってベッドがある。
そこにパジャマのまま寝ていた聖人が、気だるそうにこちらを見上げた。
「…よっす…」
「…随分辛そうだな…熱測ったか?薬は?」
「熱は…確か39度近くで…なんも食ってないから薬のんでない…」
「…それはマズイな」
思ったより深刻な容態に眉根を寄せる。
酷く汗を掻いていて呼吸も乱れ、暑いからかボタンが上三つほど空いている。
こんな状況だというのに、その艶かしい姿に唾を飲んだ。

「取り敢えず、服着替えるか。パジャマの替えは?」
「そこの箪笥の一番上…」
「じゃあ取ってくるから、服脱げ」
「ん…」
返事とも吐息ともつかない言葉を発し、のろのろと起き上がる。
裸をなるだけ意識しないようにきつく心に言い聞かせて、汗を拭き新しいパジャマを着せた。
頭に冷感シートを貼り、氷枕に変えた上に寝かせる。

「あー冷たくて気持ちいい…」
人心地ついた聖人がうっとりと目を瞑る。

それに安堵しつつ、次にすべきことのために立ち上がる。
「なんか食わないとな…お粥なら食えるか?今作るから」
「ありがと…」

台所を借り、簡単に卵粥を作る。
加えて持ってきた林檎を剥いて、トレイに載せて戻った。
「ほら、聖人」
「お…いい匂い」
へにゃり、と力無く笑った聖人の手にお椀を持たせる。

「熱いから気をつけろよ」
「うん…」
猫舌なこいつは何度も息を吹き、ゆっくりと口の中へ入れた。


「うま…やっぱり翼の飯美味いなあ…」
「…そいつは良かった」
時間を掛けてお粥、林檎と食べて進めていた聖人が手を止めた。
いつもよりずっと量は少ないが、食べられたので大丈夫だろう。
置き薬を飲ませ、枕元にスポーツ飲料を置く。

「あと何かあるか?」
「んーん…大丈夫…ありがと」
「…そっか」
本当なら一晩中そばについてやりたいくらいだが、こいつが気を遣うだけなので諦める。
それでも明日また朝来るから、と言うと、心配症だなあと緩く笑われた。


「バカ、こんなときに無理すんな。…もっとオレを頼れよ」
「…ん…もう充分…頼りすぎてる、から…」
「…んな事、ないだろ」

そうなら、なんで何も言ってくれない?
喉元まで出掛かり、今のこいつには酷だと飲み込む。

そんなオレの心境など知らず、聖人は殆どうわ言のように、ぽつり、と呟いた。


「やっぱり…頭使い過ぎたかなあ…」
「…何に?」
「…オレには…わかんないことばっか…」
「…おい、聖人」
オレが身を乗り出すよりも早く、寝息が聞こえる。

薬の効きもあり眠ったのだろう。
寝息は穏やかだが、オレは複雑な心持ちだった。

「…お前…何悩んでるんだよ…」


オレには、何でも話してくれていたのに。
2人の間に、今まで感じなかった溝があるような気がして、オレはただその寝顔を見つめることしか出来なかった。



 
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