オリジナルBL小説を扱ってます。
メインはLiebeシリーズ(不良×平凡)サブでCuadradoシリーズ(生徒会長×お調子者と親友たちの4角関係)も。pixivで漫画連載してます。更新情報はツイッターでどうぞ。
- 12/02 初夏の嵐(6)
- 10/13 初夏の嵐(5)
- 10/09 【お知らせ】コメント欄について。
- 09/16 fragile (51) Side: 翼 最終回
- 09/08 fragile (50) Side: 俊&巧
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「お前のことが、好きなんだ」
静かに、それでいて心の奥まで貫くような強さを持った声が響く。
暫くは、言われた意味が分からなかった。
オレを好きなことと、翼の話をして欲しくないということが結びつかなかったからだ。
分からないながらも取り敢えず場を繕うと、しどろもどろに口を開く。
「え、えっと…オレもす」
「そうじゃない。お前と俺の好きは、種類が違うんだ」
バサリと切り捨てられ、言葉に詰まる。
巧はいつもより更に声のトーンを落とし、囁くように続けた。
「…お前にキスしたいし、お前を抱きたい。そういう意味で、好きなんだ」
「…っ」
あまりに直截的に告げられ、耳朶までかあと熱くなる。
「…だから、聖人が翼のことばかり話す度に、俺は嫉妬してる」
「で、でも、翼はただの…!」
慌てて言い掛け、はた、と我に気付く。
(ただの…?)
そう言ってしまうのは可笑しいとどこかでストップが掛かる。
まるで巧に言い訳をしているみたいで、変だ。
何故そう感じるのかは、よく分からないけれど。
きっとショックが大き過ぎて、頭がよく回らないせいだろう。
内心で勝手に結論付けてはみたものの、真っ直ぐな瞳を見られない。
俯くと、髪をふわりと撫でられた。
「…悪い。いきなりこんなことを言って、困らせたかった訳じゃないんだ」
「…巧…あの…」
「答えは急がない。だから、考えてくれないか」
考えるって。
ハッと顔をあげると、予想以上に熱っぽい視線とぶつかる。
がつん、と衝撃が襲った気がした。
「…俺と、付き合うこと」
「…っ」
今のオレは唾さえ上手に飲み込めない。
無言で見つめあった2人の間に、涼しい風が通り抜ける。
汗の引いた肌が冷えたせいか、空気を読まずに出たくしゃみに、巧が小さく笑った。
(恥ずかし…)
それにしたって、巧はなんでこんなに落ち着いていられるんだ。
それ程、覚悟を決めていたということなのか。
オレのことを、そこまで。
「やっぱり寒いんじゃないか?ほら」
「あ…」
言うなり、巧は自分の上着を脱ぐとふわりとオレの肩に掛けた。
「え、いいって悪いし…」
「遠慮するな。それにもうすぐオレも試合だし、預かっておいてくれないか?」
「お、おう…それなら借りとく…」
そう言われては他に返す言葉もない。
頷くと満足そうに微笑み、オレの頬をひと撫でした。
今まで何にも感じなかったその仕草さえ、想いが込められていたのかと思うと――途端、ぞくりと背中が波打つ。
「さて、と。それじゃあ行ってくる」
「お、おお…」
間抜けな返事しか出来ないオレに苦笑して、巧は踵を返した。
遠くても人目を惹くその長身が体育館へと戻っていくのを、ぼんやりと眺めることしか出来なかった。
(…どうしよう…)
残されたオレは借りたジャージを引き寄せる。
巧の匂いがするそれは胸を酷く締め付けて、思考は益々混乱するばかりだ。
散々彼女が欲しいなどと口癖のように言っていたオレが、まさか同性の友達から告白されるなんて。
でも不思議と、それに対する嫌悪感は沸かなかった。
それ以上に、彼の熱に惹き寄せられたからかもしれない。
(…巧…)
静かに、それでいて心の奥まで貫くような強さを持った声が響く。
暫くは、言われた意味が分からなかった。
オレを好きなことと、翼の話をして欲しくないということが結びつかなかったからだ。
分からないながらも取り敢えず場を繕うと、しどろもどろに口を開く。
「え、えっと…オレもす」
「そうじゃない。お前と俺の好きは、種類が違うんだ」
バサリと切り捨てられ、言葉に詰まる。
巧はいつもより更に声のトーンを落とし、囁くように続けた。
「…お前にキスしたいし、お前を抱きたい。そういう意味で、好きなんだ」
「…っ」
あまりに直截的に告げられ、耳朶までかあと熱くなる。
「…だから、聖人が翼のことばかり話す度に、俺は嫉妬してる」
「で、でも、翼はただの…!」
慌てて言い掛け、はた、と我に気付く。
(ただの…?)
そう言ってしまうのは可笑しいとどこかでストップが掛かる。
まるで巧に言い訳をしているみたいで、変だ。
何故そう感じるのかは、よく分からないけれど。
きっとショックが大き過ぎて、頭がよく回らないせいだろう。
内心で勝手に結論付けてはみたものの、真っ直ぐな瞳を見られない。
俯くと、髪をふわりと撫でられた。
「…悪い。いきなりこんなことを言って、困らせたかった訳じゃないんだ」
「…巧…あの…」
「答えは急がない。だから、考えてくれないか」
考えるって。
ハッと顔をあげると、予想以上に熱っぽい視線とぶつかる。
がつん、と衝撃が襲った気がした。
「…俺と、付き合うこと」
「…っ」
今のオレは唾さえ上手に飲み込めない。
無言で見つめあった2人の間に、涼しい風が通り抜ける。
汗の引いた肌が冷えたせいか、空気を読まずに出たくしゃみに、巧が小さく笑った。
(恥ずかし…)
それにしたって、巧はなんでこんなに落ち着いていられるんだ。
それ程、覚悟を決めていたということなのか。
オレのことを、そこまで。
「やっぱり寒いんじゃないか?ほら」
「あ…」
言うなり、巧は自分の上着を脱ぐとふわりとオレの肩に掛けた。
「え、いいって悪いし…」
「遠慮するな。それにもうすぐオレも試合だし、預かっておいてくれないか?」
「お、おう…それなら借りとく…」
そう言われては他に返す言葉もない。
頷くと満足そうに微笑み、オレの頬をひと撫でした。
今まで何にも感じなかったその仕草さえ、想いが込められていたのかと思うと――途端、ぞくりと背中が波打つ。
「さて、と。それじゃあ行ってくる」
「お、おお…」
間抜けな返事しか出来ないオレに苦笑して、巧は踵を返した。
遠くても人目を惹くその長身が体育館へと戻っていくのを、ぼんやりと眺めることしか出来なかった。
(…どうしよう…)
残されたオレは借りたジャージを引き寄せる。
巧の匂いがするそれは胸を酷く締め付けて、思考は益々混乱するばかりだ。
散々彼女が欲しいなどと口癖のように言っていたオレが、まさか同性の友達から告白されるなんて。
でも不思議と、それに対する嫌悪感は沸かなかった。
それ以上に、彼の熱に惹き寄せられたからかもしれない。
(…巧…)
「…人、聖人!」
「うわっ!?」
ぽんと肩を叩かれ、過剰に跳ねる。
見上げると、目を見開いた翼が手を宙に浮かせたまま固まっていた。
「な、なんだよ、そんなに驚かせたか?」
「つ、翼…」
『…だから、聖人が翼のことばかり話す度に、俺は嫉妬してる』
先程の巧の言葉が脳裏をよぎる。
(オレってそんなにこいつのことばっかりか?)
だって翼は大事な恩人で、親友で…
(オレの…中心なんだ)
彼という柱が無ければ簡単に壊れてしまう家みたいなもので。
ここまで依存し過ぎているのもよくないことは分かっている。
けれど、彼を支えにして生きてきたようなものだから、他にどうしようもなかった。
「おい、聖人!聞いてンのか?」
「えっ!?お、おう!」
「…じゃあ今オレがなんて言ったか答えてみろよ」
またぼんやりしている間に翼の発言をスルーしていたらしい。
けれどすぐに認めるのもらしくないので、オレは思いきりふざけてみせる。
「えっとー…さっきのシュート決めちゃうオレってマジカッコいい!みたいな!」
「言ってねえし!オレはナルか!」
「いてっ!先生~!生徒会長が暴力してます!」
ワザとボケるとすかさず気持ちのいいツッコミが入る。
いつもの即興のコントに、周りを行き交う生徒や先生までも笑っている。
「…お前のせいで恥掻いただろ」
「元はと言えばお前が…」
「なんだよ」
「ナンデモアリマセン」
片言の日本語で返すオレに翼は呆れた溜息を吐きながら肩を竦めてみせた。
「…で。どうだったんだよ、今の試合は?」
「あ、ああ…。良かったよ、本当」
ひとしきりふざけた後で仕切り直して尋ねた彼に、オレも素直に答える。
「派手なプレーばっかするから、女の子の視線を独り占めだったぜ~?」
「ああ、そう」
本当にどうでもいい、というように一言で片付けると、翼はオレの左胸に視線を向けた。
と、それまで殆ど変化のなかった表情が急に強張る。
「…なんで、巧のジャージ着てんだよ」
「え!?」
なんで分かったんだろうと自分も目線を落とす。
すると成る程、そこには西園寺と書かれた刺繍が施されていた。
「えっと…巧が次試合らしくて、オレがこんな格好だから貸してくれた」
「……」
「…翼?」
前後の会話を避けながら無難に説明したのに、翼の眉間の皺は深いままだ。
小さく舌打ちをすると、オレに聞こえない音量で何かを呟いた。
(何怒ってんだよ~)
「…え、えっと…あ、オレそろそろ次の試合あるから!じゃあな!」
気まず過ぎる空気に耐え切れず、オレはそそくさと立ち去ることにした。
「…待てよ。オレも行く」
「えっ」
しっかりと腕を掴まれ、慌てて振り返る。
「お前観に来いって言ってただろ」
「え、あ~う、うん、そうかな…」
確かにほんの数分前までの自分ならそう言っていた。
しかし…今体育館へ戻ると、巧と鉢合わせする危険性があった。
何故か翼も近頃やたらと巧に過剰な反応を見せるし、今の状態で顔を合わせてはいけない気がするんだ。
(って、翼がこんなに怒る理由はわかんないんだけどさ…)
てっきり、生徒会役員同士気が合うんだと思っていたのに。
こいつらの関係性がオレには全然理解出来ない。
…尤も、巧の心情は知ってしまった訳だが。
「堂本くん、ちょっと…」
そんなことを考えていると、丁度他のクラスの女子数人に声を掛けられた。
タオルを持っているところを見ると、翼に渡したくて待っていたらしい。
「ごめん、悪いけど今は…」
「あ、行ってこい行ってこい!オレの試合なんていいから!じゃあ!」
「は?っておい、聖人!」
チャンスとばかりに翼の手を離し、肩を押す。
彼がよろめいた隙にオレはダッシュで逃げた。
(ああもう…なんでこんなややこしいことに…)
これまでのなんてことない日常が、大きく変わってしまった。
オレはそれを、ちゃんと受け止めることが出来るんだろうか。
巧に、向き合うことが――
まだ頭がぐちゃぐちゃで、とても分からない。
兎に角今は試合に集中するんだと嘯きながら、オレは頬を強く叩いた。
「うわっ!?」
ぽんと肩を叩かれ、過剰に跳ねる。
見上げると、目を見開いた翼が手を宙に浮かせたまま固まっていた。
「な、なんだよ、そんなに驚かせたか?」
「つ、翼…」
『…だから、聖人が翼のことばかり話す度に、俺は嫉妬してる』
先程の巧の言葉が脳裏をよぎる。
(オレってそんなにこいつのことばっかりか?)
だって翼は大事な恩人で、親友で…
(オレの…中心なんだ)
彼という柱が無ければ簡単に壊れてしまう家みたいなもので。
ここまで依存し過ぎているのもよくないことは分かっている。
けれど、彼を支えにして生きてきたようなものだから、他にどうしようもなかった。
「おい、聖人!聞いてンのか?」
「えっ!?お、おう!」
「…じゃあ今オレがなんて言ったか答えてみろよ」
またぼんやりしている間に翼の発言をスルーしていたらしい。
けれどすぐに認めるのもらしくないので、オレは思いきりふざけてみせる。
「えっとー…さっきのシュート決めちゃうオレってマジカッコいい!みたいな!」
「言ってねえし!オレはナルか!」
「いてっ!先生~!生徒会長が暴力してます!」
ワザとボケるとすかさず気持ちのいいツッコミが入る。
いつもの即興のコントに、周りを行き交う生徒や先生までも笑っている。
「…お前のせいで恥掻いただろ」
「元はと言えばお前が…」
「なんだよ」
「ナンデモアリマセン」
片言の日本語で返すオレに翼は呆れた溜息を吐きながら肩を竦めてみせた。
「…で。どうだったんだよ、今の試合は?」
「あ、ああ…。良かったよ、本当」
ひとしきりふざけた後で仕切り直して尋ねた彼に、オレも素直に答える。
「派手なプレーばっかするから、女の子の視線を独り占めだったぜ~?」
「ああ、そう」
本当にどうでもいい、というように一言で片付けると、翼はオレの左胸に視線を向けた。
と、それまで殆ど変化のなかった表情が急に強張る。
「…なんで、巧のジャージ着てんだよ」
「え!?」
なんで分かったんだろうと自分も目線を落とす。
すると成る程、そこには西園寺と書かれた刺繍が施されていた。
「えっと…巧が次試合らしくて、オレがこんな格好だから貸してくれた」
「……」
「…翼?」
前後の会話を避けながら無難に説明したのに、翼の眉間の皺は深いままだ。
小さく舌打ちをすると、オレに聞こえない音量で何かを呟いた。
(何怒ってんだよ~)
「…え、えっと…あ、オレそろそろ次の試合あるから!じゃあな!」
気まず過ぎる空気に耐え切れず、オレはそそくさと立ち去ることにした。
「…待てよ。オレも行く」
「えっ」
しっかりと腕を掴まれ、慌てて振り返る。
「お前観に来いって言ってただろ」
「え、あ~う、うん、そうかな…」
確かにほんの数分前までの自分ならそう言っていた。
しかし…今体育館へ戻ると、巧と鉢合わせする危険性があった。
何故か翼も近頃やたらと巧に過剰な反応を見せるし、今の状態で顔を合わせてはいけない気がするんだ。
(って、翼がこんなに怒る理由はわかんないんだけどさ…)
てっきり、生徒会役員同士気が合うんだと思っていたのに。
こいつらの関係性がオレには全然理解出来ない。
…尤も、巧の心情は知ってしまった訳だが。
「堂本くん、ちょっと…」
そんなことを考えていると、丁度他のクラスの女子数人に声を掛けられた。
タオルを持っているところを見ると、翼に渡したくて待っていたらしい。
「ごめん、悪いけど今は…」
「あ、行ってこい行ってこい!オレの試合なんていいから!じゃあ!」
「は?っておい、聖人!」
チャンスとばかりに翼の手を離し、肩を押す。
彼がよろめいた隙にオレはダッシュで逃げた。
(ああもう…なんでこんなややこしいことに…)
これまでのなんてことない日常が、大きく変わってしまった。
オレはそれを、ちゃんと受け止めることが出来るんだろうか。
巧に、向き合うことが――
まだ頭がぐちゃぐちゃで、とても分からない。
兎に角今は試合に集中するんだと嘯きながら、オレは頬を強く叩いた。
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