オリジナルBL小説を扱ってます。
メインはLiebeシリーズ(不良×平凡)サブでCuadradoシリーズ(生徒会長×お調子者と親友たちの4角関係)も。pixivで漫画連載してます。更新情報はツイッターでどうぞ。

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- 12/02 初夏の嵐(6)
- 10/13 初夏の嵐(5)
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- 09/16 fragile (51) Side: 翼 最終回
- 09/08 fragile (50) Side: 俊&巧
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試合開始前は期待にざわついていた会場は一転、水を打ったように静まり返っていた。
ブザーの音が無情にも終りを告げる。
生徒達は信じられない思いでスコアボードを見つめていた。
90-65。
同じような実力を持つ相手との試合とは思えないほどの点差をつけられて負けたのは――広海高校だった。
俺はただ一点を注視する。
タオルを頭から被り、ベンチに座っているキャプテンの顔は、応援席となっている2階から窺うことは出来ない。
泣いているようにも見えて、走り寄りたい衝動に駆られる。
どうしてこんなことになったのか。
それは他の誰よりも、本人が一番強く思っていることだろう。
巻かれた包帯。氷の袋。
きっと腫れているであろう左足――その怪我さえ、なければ。
試合はリードしていた広海が常にボールを支配する有利な展開だった。
事故は、そんな第二クオーターが終わりかけていたときに起こった。
ボールを持った聖人が、相手と接触してしまったのだ。
悲鳴が上がるコート。
変な態勢で転んでしまった聖人は暫く起き上がることが出来ず、蹲っていた。
監督に起こされた彼は2,3言話したあと試合に戻ったが、動きが明らかに可笑しかった。
すぐに止められた彼はそのまま交代を余儀なくされることとなり、キャプテンを欠いたチームは動揺もあったのだろう、急に動きが悪くなってしまった。
それからは圧倒されるばかりで、試合は一方的なものとなってしまったのだった。
ばらばらと生徒達が体育館から出て行くなか、俺は手摺を強く握り締める。
(聖人…)
彼は接触してしまった対戦相手に声を掛けられ、何か話していた。
頭を振っているところをみると、なんでもないと笑みさえ浮かべているのだろう。
心の中は痛いくらい、後悔の念に締め付けられている筈なのに。
そんな彼を見ていることしか出来ない自分が――歯痒かった。
「なんだよ、うち強いんじゃねえの?」
「これじゃ、今度の大会も望み薄だなー」
「…っ」
俺の後ろを通った男子生徒の酷薄な言葉にカッとなる。
(何も知らないくせに…!)
とても黙っていることなんて出来なかった。
声を張り上げようと、顔を上げる。
「必死に戦った奴らの試合見て、よくそんなことが言えるな」
ブザーの音が無情にも終りを告げる。
生徒達は信じられない思いでスコアボードを見つめていた。
90-65。
同じような実力を持つ相手との試合とは思えないほどの点差をつけられて負けたのは――広海高校だった。
俺はただ一点を注視する。
タオルを頭から被り、ベンチに座っているキャプテンの顔は、応援席となっている2階から窺うことは出来ない。
泣いているようにも見えて、走り寄りたい衝動に駆られる。
どうしてこんなことになったのか。
それは他の誰よりも、本人が一番強く思っていることだろう。
巻かれた包帯。氷の袋。
きっと腫れているであろう左足――その怪我さえ、なければ。
試合はリードしていた広海が常にボールを支配する有利な展開だった。
事故は、そんな第二クオーターが終わりかけていたときに起こった。
ボールを持った聖人が、相手と接触してしまったのだ。
悲鳴が上がるコート。
変な態勢で転んでしまった聖人は暫く起き上がることが出来ず、蹲っていた。
監督に起こされた彼は2,3言話したあと試合に戻ったが、動きが明らかに可笑しかった。
すぐに止められた彼はそのまま交代を余儀なくされることとなり、キャプテンを欠いたチームは動揺もあったのだろう、急に動きが悪くなってしまった。
それからは圧倒されるばかりで、試合は一方的なものとなってしまったのだった。
ばらばらと生徒達が体育館から出て行くなか、俺は手摺を強く握り締める。
(聖人…)
彼は接触してしまった対戦相手に声を掛けられ、何か話していた。
頭を振っているところをみると、なんでもないと笑みさえ浮かべているのだろう。
心の中は痛いくらい、後悔の念に締め付けられている筈なのに。
そんな彼を見ていることしか出来ない自分が――歯痒かった。
「なんだよ、うち強いんじゃねえの?」
「これじゃ、今度の大会も望み薄だなー」
「…っ」
俺の後ろを通った男子生徒の酷薄な言葉にカッとなる。
(何も知らないくせに…!)
とても黙っていることなんて出来なかった。
声を張り上げようと、顔を上げる。
「必死に戦った奴らの試合見て、よくそんなことが言えるな」
張り上げることもなく告げられた言葉には、それでいて強い憤りに満ちている。
二人にそれを投げつけたのは、翼だった。
男子生徒達を睨みつける彼の拳は、強く握り締められていた。
「…っ、なんだよ堂本」
「んな怒んなって、冗談だよ…」
生徒会長の怒りに驚いた二人は先程とは違ってうろたえたようにそう言うと、そそくさとその場を後にした。
自然と向かいあう形になった俺達だが、会話はなかった。
ただ、彼の瞳には明らかな敵意が覗く。
いつもの上辺だけの爽やかさなどかなぐり捨てた、素のままの男が其処に居た。
(…やはりな)
喉の奥で小さく笑った。
お前は、そちらの方が余程似合っている。
翼は結局一言も発しないまま、背を向けて立ち去っていった。
静かになった夕方の部室。
そこから聖人が出てこないのを確認して、そっと扉に手をかけた。
擦れ違いざまに声を掛けてきた、バスケ部員である俺のクラスメートの言葉を思い出す。
『進藤の奴一人で病院行くって言ってきかないんだ。けどあいつのことだからきっと行かないだろうし…西園寺、お前引っ張って行ってくれないか?』
だろうな。
心の中でそう頷き返して、一人残っている彼の背中に声を掛けた。
「…お疲れ」
びくり、とその身体が跳ねる。
振り返った彼は、一瞬こちらを凝視したあとに不自然なくらいの笑みを浮かべた。
「あ、あれー、どうしたのお前。あ、ごめんな今日はみっともないとこ見せちゃって」
「…聖人」
「本当なら圧勝…とまではいかないだろうけど、勝ちたかったんだけどなー」
「聖人」
「ってかオレカッコ悪いよなあ、こんなところで怪我しちまうし」
「聖人!」
流れる水のように続く言葉を強引に遮る。
固まった彼の隣に座り、その頭を抱き寄せた。
とても見ていられなかった。
何故、そこまでして強くあろうとするんだ。
「…もう、いいから」
その言葉に、シャツにじんわりと涙が染みていった。
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