オリジナルBL小説を扱ってます。
メインはLiebeシリーズ(不良×平凡)サブでCuadradoシリーズ(生徒会長×お調子者と親友たちの4角関係)も。pixivで漫画連載してます。更新情報はツイッターでどうぞ。
- 12/02 初夏の嵐(6)
- 10/13 初夏の嵐(5)
- 10/09 【お知らせ】コメント欄について。
- 09/16 fragile (51) Side: 翼 最終回
- 09/08 fragile (50) Side: 俊&巧
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Side:俊
物音ひとつしない教室。
取り残された僕の脳内には、ひとつの言葉がリフレインしていた。
『俊のことは、大事な友達だと思ってる』
言いながら浮かべた、完璧なまでの綺麗な笑顔。
それだけを置いて、彼は駆けていってしまった。
この世界の誰よりも大事な――彼の心を動かす、唯一無二のひとのもとへ。
「…酷いな」
暫くして、やっとそれだけ呟けた。
ぽつんと小さな影だけが落ちる床を見たら落ちてしまうから、ぐっと天井を見上げた。
最後まで、彼は皆のよく知っている堂本翼のままだった。
優しくて落ち度なんてひとつもない、絵に描いたような理想の王子様。
そして――同じくらいに、残酷なひと。
「まあ…自業自得、かな」
あはは、と渇いた笑いを溢しながら、胸にずっと抱いていた教科書とノートを持つ手に力を籠める。
今日こそは聖人くんを捕まえるんだと、放課後残るという彼に付き合ったのは僕の我侭だった。
明らかに困ったような翼に気付いていながら、それまで勉強を教えて欲しいと無理を言った。
そして、擦った拍子にゴミが入ったらしく目を傷めた僕に、翼は屈んで診てくれて。
まるでキスをしてるみたい、なんて浮かれていたら――彼が、来たのだ。
「…好き…」
ぽつりと告げるのは、行き先を喪った僕の心。
「好き…なんだよ…翼」
もう誰も居ない。誰も聞いていない。
こんな状況でやっと言葉になるなんて、我ながら可哀想だな、なんて笑ってしまう。
彼は、伝えることさえ、許してはくれなかった。
こうなることは判っていたのに。
これで傷つくのはお門違いだと、理解しているのに。
暫く嗚咽は止まらず、僕は蹲りながら感情の波をやり過ごすしかなかった。
夜は、もうそこまで来ていた。
Side:巧
「巧…ちょっと、いい?」
朝練後の体育館を出たところで、そう声を掛けてきたのは聖人だった。
そのすっきりとした顔を見たとき、彼の大きな心の痞えが取れたこと。
そして――俺が賭けていた一縷の望みが消え失せたのだと、知った。
体育館の裏手は朝ということもあり人気はない。
登校中には降っていた絹のような雨は既に上がっており、薄日が差し込んでいる。
空気はまだ雨の匂いがして、夏前にしては少しひんやりしていた。
連れてきた聖人は、向かい合うと言い難そうに視線を彷徨わせた。
「えっと…あのな?この前言ってくれてたこと…なんだけど」
「――翼と、付き合うことになったんだな」
助け舟を出すつもりでそう補足すると、聖人は酷く吃驚した顔で凝視した。
「え…なんで…」
「…判るさ」
それくらい。
どれだけ、俺がお前を見ていたと思っているんだ?
聖人は頬を染めながら、小さく一回頷いた。
「…あいつのことが…好きなんだな」
「うん…ちゃんと、恋愛として…想ってる」
「……そうか」
今まで己の気持ちをはっきり攫めていなかった聖人が、言葉にしてそう綴った。
その変化は顕著で、俺は複雑な想いを噛み締めるように頷く。
「いや、いいんだ。…分かってた」
「……巧」
そう、最初から分かっていた。
男同士ということだけではない、大きな障害。
いつだって聖人のなかに存在していたあいつを完全に掻き消すことなんて、不可能だということにも。
「…なあ、これからも好きでいてもいいか?」
例え叶わなかったとしても、気持ちが消えるわけではない。
せめてこれくらいは、と頼むように見つめると、彼は目を見開いたあと、はっきりと告げた。
「オレの気持ちは、これからも変わらない。それでも、いいのなら」
「……」
下手な繕いよりもストレートなそれに胸を突き抜かれたような錯覚に陥る。
(…眩しい、な)
澄んだ瞳。
強い意志の籠ったそれ。
「…ああ、勿論だ」
やはり、俺にはそんな顔をさせることは出来なかった。
「あとひとつ……このまま、友達でいてくれるか?」
「ああ。当たり前だろ!」
「そうか…ありがと、な」
俺の言葉に彼も肩の力が抜けたらしい。
にっこりと向日葵のような笑みには救われたような気がして、世界は朝日にきらきらと光る雫で輝いていた。
「巧…ちょっと、いい?」
朝練後の体育館を出たところで、そう声を掛けてきたのは聖人だった。
そのすっきりとした顔を見たとき、彼の大きな心の痞えが取れたこと。
そして――俺が賭けていた一縷の望みが消え失せたのだと、知った。
体育館の裏手は朝ということもあり人気はない。
登校中には降っていた絹のような雨は既に上がっており、薄日が差し込んでいる。
空気はまだ雨の匂いがして、夏前にしては少しひんやりしていた。
連れてきた聖人は、向かい合うと言い難そうに視線を彷徨わせた。
「えっと…あのな?この前言ってくれてたこと…なんだけど」
「――翼と、付き合うことになったんだな」
助け舟を出すつもりでそう補足すると、聖人は酷く吃驚した顔で凝視した。
「え…なんで…」
「…判るさ」
それくらい。
どれだけ、俺がお前を見ていたと思っているんだ?
聖人は頬を染めながら、小さく一回頷いた。
「…あいつのことが…好きなんだな」
「うん…ちゃんと、恋愛として…想ってる」
「……そうか」
今まで己の気持ちをはっきり攫めていなかった聖人が、言葉にしてそう綴った。
その変化は顕著で、俺は複雑な想いを噛み締めるように頷く。
「いや、いいんだ。…分かってた」
「……巧」
そう、最初から分かっていた。
男同士ということだけではない、大きな障害。
いつだって聖人のなかに存在していたあいつを完全に掻き消すことなんて、不可能だということにも。
「…なあ、これからも好きでいてもいいか?」
例え叶わなかったとしても、気持ちが消えるわけではない。
せめてこれくらいは、と頼むように見つめると、彼は目を見開いたあと、はっきりと告げた。
「オレの気持ちは、これからも変わらない。それでも、いいのなら」
「……」
下手な繕いよりもストレートなそれに胸を突き抜かれたような錯覚に陥る。
(…眩しい、な)
澄んだ瞳。
強い意志の籠ったそれ。
「…ああ、勿論だ」
やはり、俺にはそんな顔をさせることは出来なかった。
「あとひとつ……このまま、友達でいてくれるか?」
「ああ。当たり前だろ!」
「そうか…ありがと、な」
俺の言葉に彼も肩の力が抜けたらしい。
にっこりと向日葵のような笑みには救われたような気がして、世界は朝日にきらきらと光る雫で輝いていた。
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