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オリジナルBL小説を扱ってます。 メインはLiebeシリーズ(不良×平凡)サブでCuadradoシリーズ(生徒会長×お調子者と親友たちの4角関係)も。pixivで漫画連載してます。更新情報はツイッターでどうぞ。
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「は、はは…」
(恐い…)
二人の自己紹介だけで大体人となりがわかったような気がして、愛想笑いは酷く乾いていた。

「――ほら、座んぞ」
「わっ」
そんなオレの態度に一向に構うことなく、嘉堵川先輩が腕を引っ張った。
なすがまま後ろに倒れたオレは、ぼすんと何かに包まれる。
(えっ、えっ…えええー!)

嘉堵川先輩に後ろから抱きしめられている、ということに気がついたのは、長い腕が腰まで回されてからだ。
「あああ、あの…!?」
「お前…小せえなあ」
混乱するオレに、先輩はくすり、と耳元で小さく笑う。
決して馬鹿にしているという声色ではなく、どこか優しげなそれで。
赤くなっていいものやら青くなっていいものやら分からなくて硬直していると、オレ達の左右に2人の先輩も腰を降ろした。

(って…このまま食べるのかよ~…!)
叫べるものならそう叫びたかったが、オレ以外の皆さんがさも当たり前のように食事を始めたので黙って従うほかなかった。

不良に後ろから抱きしめられながら食事って…我ながらなんと言う光景だろうか。


諦めつつ弁当箱を開けると、前園先輩が真っ先に歓声を上げた。
「うわっ!直クンのお弁当ちょー美味しそー!」
「本当だ。君のママは料理上手だね」
続いて桜橋先輩まで褒めるので、オレは言おうかどうか迷いながら…自己申告することにした。

「あ、あの…これ、オレが作ったんです」

一瞬間があり、今度はほぼ同時に反応がある。
「うっそ!直クンちょーすごーい!」
「へえ、見事だね」
「い、いえ…うちの両親共働きだから、これぐらいはしないとって…」
まさかこんなに素直に感心されるとは思っても見なかった。
嬉しいやら恥ずかしいやらで、オレは両手を弄りながら謙遜する。

昔から家事を手伝うことは苦ではなかったし、料理を作ったときに家族に褒めてもらうのが嬉しかった。
それが大きくなっても趣味になっており、こうして弁当は毎日作るようになっていたのだ。
自分では当たり前になっていただけに、先輩たちの反応はなんだか新鮮だった。


「…ふーん…」
ずっと黙っていた嘉堵川先輩が、ここでぽつり、と呟いた。
首だけで振り返れば、オレの弁当をじっと見つめている。




「え、えっと…良かったら、食べます…か?」

欲しいのかな、と思い聞いてみる。
すると短く「ん」、という肯定らしい返事があったので、まだ食べていないからいいだろうと箸を先輩に差し出した。
「じゃあ、これ…」
「………」

(ひい!)
すると一段と強い眼光に睨まれる。
(やや、やっぱりこんな弁当食えるかってこと…っ!?)
先輩がどうしたいかなんて判る筈もなく半泣きになるのオレを見かねたのか、はたまた単に思いついたからなのか。前園先輩が楽しげに、右手人差し指を振った。
「ダメだよ直クーン、こういうときは、あーんってしなきゃ!」
「えええええ!」

そんなこと出来るわけない!
そう言いかけたが、後ろからとてつもないプレッシャーを感じて声にならなかった。
恐くて直視なんて出来ないけれど、今物凄く見られている。
(まさか…本当にそれをご所望で……?)

オレは極限状態で判断を迫られた。が、この空気で結局やらないという選択肢は選べない。
(ええい、ままよ!)
ぷるぷるする手で卵焼きを掴み――ちなみにうちは出汁巻きだ――先輩の口元へ運んだ。


「……」
「ど、どうです…か?」
黙って咀嚼する先輩に不安になってくる。
これで不味かったら、オレの身も拙い事になるかもしれない。
どきどきするオレに、先輩は飲み込んでから一言、呟くように零した。

「…ん、美味い」
口端に小さく笑みまでのせると、先程までの恐さが急に和らぐ。
(う…)
それだけでサマになってしまうのだから、オレの心臓がまたひとつ跳ねてしまったのも無理はないと思う。


「……手作りの飯なんて…久しぶりだな」
「え…?」
ぽつり、と聞こえるかどうかの音量で、先輩が吐き捨てるように続ける。
先程とは一転、表情を無くしたかのような無機質な横顔に戻ってしまう。

(あ…折角笑ってくれたのに…)

それに今の、どういう意味なのだろう。
気にはなったけれど、聞いてはいけないような気がして、オレは見上げるしかなかった。


「あ!それならさ、これからは直クンがお弁当作ってきてあげればいーじゃん!」
嘉堵川先輩の呟きが聞こえたわけではないらしいけれど、それでも先輩が喜んだのを見て前園先輩が提案してくる。
これからってことは、これが毎日続くっていうことだ。
よくよく考えれば最早決定事項になってしまっていることを気にするべきだったのだろうけれど、そのときのオレは嘉堵川先輩の様子が気になってしまって。
頭で考えるよりも早く、答えていた。

「あ…じゃあ、そうします…か?」
無表情のまま、先輩がオレをじっと見つめる。
そしてそっと目を細めて、頷いた。
「……ああ」
 

(…なんでかな…)

オレもそうしてあげたいと、自然に思ったのは。
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