オリジナルBL小説を扱ってます。
メインはLiebeシリーズ(不良×平凡)サブでCuadradoシリーズ(生徒会長×お調子者と親友たちの4角関係)も。pixivで漫画連載してます。更新情報はツイッターでどうぞ。
- 12/02 初夏の嵐(6)
- 10/13 初夏の嵐(5)
- 10/09 【お知らせ】コメント欄について。
- 09/16 fragile (51) Side: 翼 最終回
- 09/08 fragile (50) Side: 俊&巧
This is new entry
「「真っ」」
オレと優士の声が見事にハモった。
真は愛用しているノートパソコンを片手で操作しながら、オレ達の隣に立つ。
「名前は湊。今はサラリーマンですが、学生時代は人気モデルでした」
「へえ…」
肩越しに画面を覗き込むと、モデル時代だろう画像が映っていた。
体型も華奢ではなく引き締まった長身で、涼やかな流し目は色気たっぷりだ。
確かにこの容姿は数多くの女性をノックダウンしたに違いない。
「あのルックスで頭脳明晰、そして人当たりもいい…文句なく男女どちらからでも好かれる人物ですね」
「ってなんでお前がそんなことまで知ってんの?」
真に言ったところで効果はないが、一応突っ込んでおく。
こいつに掛かればプライバシーなんてあってないようなものだ。おお怖。
しかし直クンとは全然似ていない。
兄弟と言われなければ、オレみたいに間違えることだろう。
「…が、ここで重要な点がひとつ」
案の定人の質問をさらりとスルーした真が、眼鏡のブリッジを上げる。
「彼は弟の直くん至上主義。…唯一執着している存在といってもいいでしょうね」
「あーナルホドねー」
「まあ、確かに彼は可愛いからねえ」
それは遠くから見ていても伝わってくる。
車のボンネットを開け、荷物を仕舞おうとしている直クンを手伝う兄さんは終始にこにこと嬉しそうだ。
「…って、ちょい待ち!」
そこでオレはひとつ、重大なことに気付いてしまう。
「なあ真、篤也って兄さんのこと知ってんの?」
「いえ、知らないと思いますよ。お兄さんは高校卒業後すぐにアメリカへ行ってますし…」
「うわー…それじゃあバッタリ会ったりしたらヤバイじゃん!」
直クン至上主義の兄さんと、直クン命の篤也。
同じものが大好きだからって、仲良くなるとは限らない。
寧ろその分反発も大きくなるのが世の常というもので…
(それに自分の知らない間に弟くんに恋人が出来たなんて知ったら…大変なことになりそう)
ぶるり、と震えながらアイスの最後の一口を放りこんだところで、思案顔だった優士がぽつ、と呟いた。
「あれ?そういえば今日篤也、直くんに会いに行くって…」
「……」
「え?」
オレと優士の声が見事にハモった。
真は愛用しているノートパソコンを片手で操作しながら、オレ達の隣に立つ。
「名前は湊。今はサラリーマンですが、学生時代は人気モデルでした」
「へえ…」
肩越しに画面を覗き込むと、モデル時代だろう画像が映っていた。
体型も華奢ではなく引き締まった長身で、涼やかな流し目は色気たっぷりだ。
確かにこの容姿は数多くの女性をノックダウンしたに違いない。
「あのルックスで頭脳明晰、そして人当たりもいい…文句なく男女どちらからでも好かれる人物ですね」
「ってなんでお前がそんなことまで知ってんの?」
真に言ったところで効果はないが、一応突っ込んでおく。
こいつに掛かればプライバシーなんてあってないようなものだ。おお怖。
しかし直クンとは全然似ていない。
兄弟と言われなければ、オレみたいに間違えることだろう。
「…が、ここで重要な点がひとつ」
案の定人の質問をさらりとスルーした真が、眼鏡のブリッジを上げる。
「彼は弟の直くん至上主義。…唯一執着している存在といってもいいでしょうね」
「あーナルホドねー」
「まあ、確かに彼は可愛いからねえ」
それは遠くから見ていても伝わってくる。
車のボンネットを開け、荷物を仕舞おうとしている直クンを手伝う兄さんは終始にこにこと嬉しそうだ。
「…って、ちょい待ち!」
そこでオレはひとつ、重大なことに気付いてしまう。
「なあ真、篤也って兄さんのこと知ってんの?」
「いえ、知らないと思いますよ。お兄さんは高校卒業後すぐにアメリカへ行ってますし…」
「うわー…それじゃあバッタリ会ったりしたらヤバイじゃん!」
直クン至上主義の兄さんと、直クン命の篤也。
同じものが大好きだからって、仲良くなるとは限らない。
寧ろその分反発も大きくなるのが世の常というもので…
(それに自分の知らない間に弟くんに恋人が出来たなんて知ったら…大変なことになりそう)
ぶるり、と震えながらアイスの最後の一口を放りこんだところで、思案顔だった優士がぽつ、と呟いた。
「あれ?そういえば今日篤也、直くんに会いに行くって…」
「……」
「え?」
自宅に帰ると早速エプロンを締めて、夕飯の準備に取り掛かることにした。
「じゃあ、すぐに作るね」
「オレも何か手伝うよ」
「えっ!?…い、いいよ、兄さんは長旅で疲れてるんだから!ソファで休んでて!」
驚きの声をあげたのは、何もその申し出が申し訳なく思ったからだけではない。
脳裏に浮かんだのは、兄さんが過去にやらかした失敗だ。
剥き過ぎてなくなってしまったたまねぎやら、割りまくったお皿やら…
これ以上の犠牲を出さないためにも、長身の背中をぐいぐい押してソファに座らせた。
兄さんはオレ一人にやらせることに気が引けてたみたいだけど…それ以上に手間が増えてしまうんだ、とは流石に言えない。
(なんでも出来るのに、料理だけは駄目なんだよね…)
完璧な兄さんの欠点に苦笑を漏らす。
ひとつくらいオレが頼りにしてもらえるところがあるんだって、嬉しくもあるんだけど。
今日の夕飯は鯖の味噌煮にきんぴらごぼうに漬物。とことん和食にするつもりだ。
ごぼうをささがきにしながら、オレは後ろに向かって声を掛けた。
「そういえば兄さん、向こうでちゃんと食べてるの?」
「あ…ああ、取り敢えずな」
「あ、その言い方!もしかしてまたジャンクフードばっかり食べてるんでしょう!」
歯切れの悪い言い方にピンときて突っ込めば、兄さんがずるずるとソファに隠れた。
「だって自分で作ってもマズイし、買ったほうが早いし…」
「でも味付け濃いし栄養バランス悪いんだから!」
「うう…」
沈没。
大きな身体が完全に見えなくなった。
オレは呆れかえりながら、鍋に火を掛ける。
「やっぱり作ってくれる人見つけたほうがいいんじゃない?」
仕事も忙しいと聞くし、このままじゃ体調が心配だ。
健康面でも早いところ良い人を見つけて欲しい。
兄さんのためなら、どんな女性でも喜んで作ってくれることだろう。
「…直のがいい…」
ぼそぼそとくぐもった声が聞こえる。
「また、そんなこと言って…」
そう言ってもらえるのは嬉しいけれど、オレの体はひとつしかない。
駄々っ子のようなそれをあしらいながらお玉で味を見る。
(ちょっと薄いかな…)
「…本気、なんだ」
「え?」
急に静かな、けれどもはっきりとした口調に変わっていた。
それに気付くよりも早く、続きを紡がれる。
「直には――…アメリカで、オレと一緒に暮らして欲しい」
PR