オリジナルBL小説を扱ってます。
メインはLiebeシリーズ(不良×平凡)サブでCuadradoシリーズ(生徒会長×お調子者と親友たちの4角関係)も。pixivで漫画連載してます。更新情報はツイッターでどうぞ。
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進藤から聞かされる生々しい事故の話に、オレは言葉も出てこなかった。
彼の肩が戦慄いて、小さく見える。
「救急車が来るまで、オレはずっと母さんの手を握ってた。段々体温がなくなっていくのを、懸命に温めようと擦るけど駄目なんだ」
「……」
「あのときオレがちゃんと逃げてれば…ううん、オレが轢かれればよかったのに」
「…もういい、進藤」
「…葬式で親族には会ったけど、みーんなオレが邪魔そうだった…そうだよな、母さん殺して自分だけのうのうと生きてるんだから」
「もういいからっ…!」
彼の口が紡ぐ自虐的な言葉に耐え切れなくて、その腕を掴んでこちらに向かせる。
オレを見つめる瞳からは、堪えきれなくなった雫が次から次へと零れていく。
ああ、そうだ。そうだったんだ。
こいつは隠し通そうとしていたんじゃない。
吐き出す場所を探し続けて、疲れきってしまったんだ。
自責の念と絶望感を抱えながら、苦しくても誰にも頼れなくて、言えなくて。
14歳の少年が背負うには余りにも酷な現実に、眩暈がしそうだった。
「だから、いいんだ、オレなんて…生きてる価値もない…っ」
「もうやめろ!!」
嗚咽交じりの言葉を遮るように、強く抱きしめた。
身長はさほど変わらないのに、細い身体は頼りなく壊れてしまいそうだ。
「お願いだから、これ以上自分自身を責めるのはやめてくれ…」
「…どう、もと…?」
「…お前は何にも悪くないんだ。悪くないんだよ……」
「……っ」
ふ、と進藤が肩越しに息を吐いたのが聞こえた。
ずっと我慢していたのだろう。肩に、じんわりと涙が染み込んでいく。
「どうしよ…オレ…もう…ひとりだ…」
「…一人なんかじゃ、ないだろ…」
「え…?」
そんな悲しいことを思って欲しくない。
身体を離し、近距離から覗き込む。
冷え切ってしまった心にどうか届いてくれと、祈りながら続ける。
初めてだった。
本心から、誰かの力になりたいと思ったのは。思えたのは。
彼の肩が戦慄いて、小さく見える。
「救急車が来るまで、オレはずっと母さんの手を握ってた。段々体温がなくなっていくのを、懸命に温めようと擦るけど駄目なんだ」
「……」
「あのときオレがちゃんと逃げてれば…ううん、オレが轢かれればよかったのに」
「…もういい、進藤」
「…葬式で親族には会ったけど、みーんなオレが邪魔そうだった…そうだよな、母さん殺して自分だけのうのうと生きてるんだから」
「もういいからっ…!」
彼の口が紡ぐ自虐的な言葉に耐え切れなくて、その腕を掴んでこちらに向かせる。
オレを見つめる瞳からは、堪えきれなくなった雫が次から次へと零れていく。
ああ、そうだ。そうだったんだ。
こいつは隠し通そうとしていたんじゃない。
吐き出す場所を探し続けて、疲れきってしまったんだ。
自責の念と絶望感を抱えながら、苦しくても誰にも頼れなくて、言えなくて。
14歳の少年が背負うには余りにも酷な現実に、眩暈がしそうだった。
「だから、いいんだ、オレなんて…生きてる価値もない…っ」
「もうやめろ!!」
嗚咽交じりの言葉を遮るように、強く抱きしめた。
身長はさほど変わらないのに、細い身体は頼りなく壊れてしまいそうだ。
「お願いだから、これ以上自分自身を責めるのはやめてくれ…」
「…どう、もと…?」
「…お前は何にも悪くないんだ。悪くないんだよ……」
「……っ」
ふ、と進藤が肩越しに息を吐いたのが聞こえた。
ずっと我慢していたのだろう。肩に、じんわりと涙が染み込んでいく。
「どうしよ…オレ…もう…ひとりだ…」
「…一人なんかじゃ、ないだろ…」
「え…?」
そんな悲しいことを思って欲しくない。
身体を離し、近距離から覗き込む。
冷え切ってしまった心にどうか届いてくれと、祈りながら続ける。
初めてだった。
本心から、誰かの力になりたいと思ったのは。思えたのは。
「…オレがいる。オレは絶対に、お前の傍から離れないから」
「…っ」
驚いたように、進藤の目が大きく見開かれる。
「…な、んで…知り合ったばかりなのに…そこまで、オレのこと…?」
「…なんで、なんだろうな。オレも判んないけどさ…でも、お前のこと、放っておけないんだよ」
苦笑交じりに話しながら、冗談ではないことを示すように、ゆっくりと話す。
「…それに、母さんもお前に悔やんでなんか欲しくないと思うぜ」
「え…?」
「…オレも、似たような経験があるから分かるんだ」
今まで他の誰にも話していなかったことを、ぽつり、と話し始める。
「オレがアメリカにいた頃…父さんと行った銀行で、強盗に出くわしたんだ」
「!」
「犯人は銃を持った三人組だった。威嚇で何発も撃って、居た人は皆恐怖で震えていた」
今でもありありと脳裏に浮かぶ光景。
覆面マスクで顔を覆った犯人は不慣れなのか、段取りも悪くもたついていた。
そのうち三人で揉め始め、イラついた一人が手当たり次第に発砲しだした。
人質となった客達が悲鳴を上げながら物の影へ隠れる。
オレも父さんに強く抱きしめられて、ずっと護られていた。
結局犯人達は立てこもったものの金を持ち出すことも出来ず、突入した警察に取り押さえられ無事に事件は解決した。
「アメリカに居たときはオレ、結構父さんに反発しててさ。だからあの時護ってくれたのに素直に有難うって言えなくて…逆につっかかって言ったんだ」
『オレなんか護らなくてもよかったのに…父さんが撃たれたらどうするんだよ』
軽く苛立ちながら言ったオレに…父さんはひどく真剣な顔をして、オレの両腕を掴んだ。
『お前を護るためなら、自分の命なんか惜しくないさ。…ただ、それで自分を責めることだけはして欲しくない。…オレにとっては、当たり前のことをしただけ、なんだからな』
「…!」
自分達の姿と被るのだろう、進藤は驚いた顔のまま固まっていた。
「それを聞いた途端、無意味に父さんに反抗してた自分が恥ずかしくなったよ」
オレは小さく笑いながら、そんな進藤を見つめ返した。
「だから、お前はもっと楽になったっていいんだ。お前の母さんだって、幸せになって欲しいって願ってる筈だからな」
「…そんな、こと…」
「ないって言えるのか?」
「……」
すかさず聞き返すと、暫く黙って頭を振った。
俯きながら、ともすれば消えそうな声で続ける。
「母さん…よく言ってた…オレが笑って暮らしてることが一番…う…嬉しい、って…」
「ほら、な?そうだろう…?進藤」
促すように優しく聞き返す。
ぽろぽろと流れる涙を乱暴に拭って、進藤が顔を上げた。
そこには、初めて見る――素の、彼がいた。
「……あり、がと…」
ああ、ほら。
彼はまだ、こんなに綺麗に――笑うことが、できるじゃないか。
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