オリジナルBL小説を扱ってます。
メインはLiebeシリーズ(不良×平凡)サブでCuadradoシリーズ(生徒会長×お調子者と親友たちの4角関係)も。pixivで漫画連載してます。更新情報はツイッターでどうぞ。
- 12/02 初夏の嵐(6)
- 10/13 初夏の嵐(5)
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- 09/16 fragile (51) Side: 翼 最終回
- 09/08 fragile (50) Side: 俊&巧
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ホームルーム開始前の、ごちゃごちゃした雰囲気の中。
オレは唯独り張り詰めた気持ちで、ある一点を凝視していた。
その先は教室の後ろのドア。唯一の脱出口だ。
ちら、とその次に確認するのは、ターゲットともいえる相手。
こちらの動きには気付かない様子で、クラスメートから話しかけられている。
(よし、いける…!)
3日前、何を思ったのか突然教師から命じられた、補習。
ただでさえ嫌なのに、教師ではなく、一人の生徒から受けろというもので。
はっきりと拒否したところでオレの成績が散々なのは変わらないので(寧ろ余計に立場が悪くなるだろう)ある方法で、それを免れることに決めた。
そろそろと鞄を掴み、目的地へと近寄る。
ひと一人が漸くすり抜けることが出来る幅にドアを開けたところで――気付かれた。
「っ、進藤!お前また…っ!」
「お先に!!」
言うが早いか、オレは猛烈な勢いで教室を飛び出した。
後ろから叫んでいるのは他の誰でもない、堂本翼だ。
補習を受けない方法は簡単だ。
ただ、逃げればいい。
バスケ部で鍛えた脚力には自信がある。
実際に一昨日も昨日も、オレは逃げることが出来た。
一日ずつ堂本の怒りは蓄積されているようで、今日の朝には「今度こそ逃げるなよ」と念を押されていたが…そんなことは知ったこっちゃ無い。
勉強なんて真っ平ごめんだ。
だって高校なんかに進学する気は全く無いのだ。
やりたいことだって何にもないし…そもそも、生きてることだって間違いなんじゃないかって思ってるのに。
(家の更新の話だって、片付いてないんだし…)
オレは唯独り張り詰めた気持ちで、ある一点を凝視していた。
その先は教室の後ろのドア。唯一の脱出口だ。
ちら、とその次に確認するのは、ターゲットともいえる相手。
こちらの動きには気付かない様子で、クラスメートから話しかけられている。
(よし、いける…!)
3日前、何を思ったのか突然教師から命じられた、補習。
ただでさえ嫌なのに、教師ではなく、一人の生徒から受けろというもので。
はっきりと拒否したところでオレの成績が散々なのは変わらないので(寧ろ余計に立場が悪くなるだろう)ある方法で、それを免れることに決めた。
そろそろと鞄を掴み、目的地へと近寄る。
ひと一人が漸くすり抜けることが出来る幅にドアを開けたところで――気付かれた。
「っ、進藤!お前また…っ!」
「お先に!!」
言うが早いか、オレは猛烈な勢いで教室を飛び出した。
後ろから叫んでいるのは他の誰でもない、堂本翼だ。
補習を受けない方法は簡単だ。
ただ、逃げればいい。
バスケ部で鍛えた脚力には自信がある。
実際に一昨日も昨日も、オレは逃げることが出来た。
一日ずつ堂本の怒りは蓄積されているようで、今日の朝には「今度こそ逃げるなよ」と念を押されていたが…そんなことは知ったこっちゃ無い。
勉強なんて真っ平ごめんだ。
だって高校なんかに進学する気は全く無いのだ。
やりたいことだって何にもないし…そもそも、生きてることだって間違いなんじゃないかって思ってるのに。
(家の更新の話だって、片付いてないんだし…)
だからと言って妙案がある訳でもない。
ただ悪戯に時間だけが過ぎていくことに、オレは無性に苛立っていた。
そんなことを考えながら昇降口まで降りて来る。
ここまでくればもう追っては来ないだろう。
安心したオレは歩く速度を緩め、呼吸を整えながら己の靴箱へと近付こうとして…そこに人影を見つけた。
近付いていくと影の中からその輪郭がはっきりと見えてきて――オレは、絶句した。
「ど…堂本…」
嘘だ。
有り得ない。
だってオレの方が早かったし、一回も抜かされなかった。
なのになんで、こいつは涼しい顔してオレの靴箱を背に、腕を組んで立っているんだ。
唖然とするオレとは対照的に、彼は妙に落ち着いた声で話し始めた。
「…知ってるか?お前の通ったルートより、職員室側の一番端の階段を使った方が昇降口には近いんだぜ」
「え…そ、そうなの…?」
「普段通る道を選ぶのは癖みたいなもんだからな…ま、それはいいとして」
言いながら下駄箱から身体を起こした堂本が、動揺しきって油断していたオレの腕を、しっかり掴んだ。
若干痛いくらいのそれに、思わずハッとなるが時既に遅し。
「…言ったよな。逃げるなって」
「…え、えっと…」
「……やるぞ、補習」
笑顔はぴくりともしないし、言葉はどこまでも静かだ。
だがそれ故に…すさまじく、恐ろしかった。
「……はい」
それ以外にオレが此処で言える言葉は、きっと存在しなかった。
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