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オリジナルBL小説を扱ってます。 メインはLiebeシリーズ(不良×平凡)サブでCuadradoシリーズ(生徒会長×お調子者と親友たちの4角関係)も。pixivで漫画連載してます。更新情報はツイッターでどうぞ。
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部活の声がかすかに聞こえる、夕方の教室。
自暴自棄になって呟くオレに、動揺したのか彼の呼吸がひとつ乱れた。

「……なに、言ってんだよ」

僅かな焦燥感を孕んだような、堂本の声。
それを背中で聞きながら、オレは薄く口を開いた。
ずっと脳内で繰り返している、あの日の悪夢。
犯してしまった、罪。

誰にも言わなかった…言えなかった気持ちを――堂本にだけは、話してもいいかもしれない。
彼はしつこいくらいにオレに構ってきて…遠巻きにただ見守ったり、厄介者扱いして触れようともしないような奴らとは、違うから。

ゆっくりと、噛み締めるように、思い出すように。
オレは振り向かないまま、切り出した。


「堂本も、聞いてるだろ?この前、オレの母さんが亡くなったってこと」
急な話題変換に戸惑ったのか、言い辛そうに堂本は言葉を濁す。

「あ、ああ…事故だったって…」
オレが自分からこの話を切り出すとは思わなかったのだろう。
堂本は慎重に様子を窺っているようだ。
オレはその言葉に自虐的に口端を上げて、また窓に視線を移す。

真っ赤な夕陽がビル群に飲み込まれていく。
あのときと同じ色に、恐怖がぶり返す。


「事故…か。あれは……殆ど、オレが殺してしまったようなもんなんだ」
「……」
「オレのせいで……母さんは…」

キリキリと鋭く痛み出す胸をシャツの上から強く掴みながら、オレは堪えるように目を強く瞑った。



あの日――よく晴れた、日曜日だった。


オレは夕飯の買出しに、母さんとスーパーへ向かっていた。
重たい日用品を買出しに行くときは、いつもついていくようにしている。
部活が忙しくて中々家のことを手伝えないので、これくらいはさせて欲しいと自分から申し出たことだ。
それでも母さんは申し訳無さそうに、いつも眉を下げながら有難う、と言うんだ。

学校の話や、友達の話。
母さんが仕事に出るようになってからはあまり一緒にいることが出来なくなったから、時間があるときに沢山話そうとついついお喋りになってしまう。
それでも母さんがしきりに頷いて楽しそうに笑ってくれるから、それだけで嬉しくなるんだ。


両手に袋を下げて歩くオレに、片手で荷物を持った母さんが悪そうに尋ねる。
『ごめんね、聖人。重たくない?』
『大丈夫だって!オレだってバスケで毎日鍛えられてるんだからさ!』
『ふふ、そうね。父さんはあまりスポーツが得意じゃなかったから、聖人に遺伝したら悪いな、なんてよく言っていたけれど…その心配は無かったわね』
『あー…確かに父さん、スポーツマンって感じじゃないかも』
『でしょ』
おぼろげながら父さんの姿を思い出し、母さんと顔を見合わせて微笑する。

夕方の日差しになっても暑さは抜けなくて、オレはビルの間から射す眩しい光に目を細めた。

『ねえ聖人、そういえば今日は見たい番組があるとか言ってなかった?』
『え?…あーっ!そうだすっかり忘れてた!やっべ、録画してないし!』
言われてみれば、その放送時間まで5分も無かった。
録画してなかったことを悔いながら、オレは青に変わったばかりの歩道を走る。

『聖人、急に走ったら危ないわよ』
『嫌だな母さん、オレもう子供じゃないんだから…』

オレが苦笑いしながら続けた――丁度そのとき、だった。
道路の向こうから、狂ったようなスピードでトラックが突っ込んできた、のは。

『…っ!?』

運転手は意識が無いのか、ぐったりとシートに沈んでいる。
暴走する鉄の塊と化したトラックを止める者は誰も居ない。
唖然としていた行き交う人々が事態に気付き、悲鳴を上げながら逃げていく。

しかしオレは真っ直ぐこちらへ向かってきているというのに、縫い付けられたように足が竦んでしまった。
(やばい、動けない…っ!)

ぶつかってしまう――諦め、死を覚悟した。


『せいとっ!!』

しかし。
誰かがそう叫んだかと思うと、オレの身体は突き飛ばされていた。


倒れこむのとほぼ同時、衝撃音が耳を劈いた。
そして車の燃える匂い、人の悲鳴――そして、血の匂い。


「母さん!無事!?」

はっと遅れて我に返り、辺りを見渡す。
しかし野次馬がいるくらいで、その人の姿は見つからなかった。

(…まさか…)

一番考えたくなかった、悪夢のような答えに行き着く。
足元に広がる血を辿っていくと…よく見慣れた、腕時計をした、手が見えた。



「かあ、さん…?」

からからと足元に転がって止まるのは、車の部品の一部。
四方に散らばるガラス片――その中でぐったりと動かない、母さんがいた。

「かあさん、嫌だ、そんな」

腰が抜けて力が入らず這いつくばって近寄る。
短い呼吸と、大量の血。
ただでさえ色白なその頬は――殆ど、青くなっていた。

「よか、った…ぶ…じ…ね」

きっと微笑みたかったのだろう。
目だけが優しく細められ、そしてそのまま――


閉じてしまう。


「あ、ああ……」


うそだ。
うそだうそだうそだうそだうそだ。





「う、うあああああっ!!」
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