オリジナルBL小説を扱ってます。
メインはLiebeシリーズ(不良×平凡)サブでCuadradoシリーズ(生徒会長×お調子者と親友たちの4角関係)も。pixivで漫画連載してます。更新情報はツイッターでどうぞ。
- 12/02 初夏の嵐(6)
- 10/13 初夏の嵐(5)
- 10/09 【お知らせ】コメント欄について。
- 09/16 fragile (51) Side: 翼 最終回
- 09/08 fragile (50) Side: 俊&巧
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笑っていながら、笑っていない。
その深く沈んだ昏い瞳が強く印象付けられて、つい声を掛けていた。
他人と関わりあうなんて殆どしなかったはずなのに、と驚いたのは誰よりもオレ自身だった。
『昨日から転入してきた、堂本翼だ。宜しくな』
『お、おお…オレは進藤聖人…宜しく』
目の前の男子生徒はオレに対して不信感ありありで、まるで手負いの獣のようにこちらを警戒していた。
しかし表面上はそれをおくびにも出さず、へらりと笑っている。
きっと誰もが、この一面を見ただけでお調子者だと思うだろう。
何重にも重ねられた鎧のように分厚い心の壁のうちなんて、容易には見抜けないからだ。
同じように、人をどこかで拒絶しているところのある…オレのような人間以外は。
そう思うと途端に、オレは隣の存在が気になるようになっていた。
なんでだろうと考えても、漠然としたまま一向に答えは出なかった。
同情?憐れみ?そんな安っぽいものではなくて。
今日だって、こんなことをしている。
「ほら」
「え……?」
ずい、と目の前に出されたものに、男子生徒――進藤聖人は、間抜けにぽかんと口を開ける。
気を緩めた顔は珍しいな、と思うからか、ついつい口端が緩む。
「弁当。今日も持ってきてないんだろ?」
ずばりと指摘してやったら、肩が跳ねる。
「…なん、で」
(そりゃ分かるさ)
昨日だって、購買に行くと言ったまま帰ってこなかった。
予鈴が鳴ってから戻ってきたところを見ると、そのままどこかで適当に時間を潰していたことも、なにも食べてこなかったことも容易に想像がついた。
進藤の事情については、オレが弁当を無理矢理食べさせていたことに興味を抱いたのか知らないが、彼の居ないときに周りの生徒から教えられた。
たった一人の肉親を亡くしたこと。
両親の結婚が駆落ちの末だったために、親族同士で彼の親権について揉めていること。
『進藤くん、どうなっちゃうんだろうね?独りぼっちで可愛そうだね…』
『盥回しなんて、ヒデエ話だよな』
皆口々にそう言ってはいるが、目を見れば残酷な好奇心に駆られているのがよく分かる。
(酷いのは、どっちだよ)
クラスメートにそこまで漏れてしまっているなら余計に辛いだろう。
だからきっと、あんなに傷ついている。今だって。
彼の心情を推し量ると堪らなくて、気がついたらオレは2人分の弁当をこさえていた。
その深く沈んだ昏い瞳が強く印象付けられて、つい声を掛けていた。
他人と関わりあうなんて殆どしなかったはずなのに、と驚いたのは誰よりもオレ自身だった。
『昨日から転入してきた、堂本翼だ。宜しくな』
『お、おお…オレは進藤聖人…宜しく』
目の前の男子生徒はオレに対して不信感ありありで、まるで手負いの獣のようにこちらを警戒していた。
しかし表面上はそれをおくびにも出さず、へらりと笑っている。
きっと誰もが、この一面を見ただけでお調子者だと思うだろう。
何重にも重ねられた鎧のように分厚い心の壁のうちなんて、容易には見抜けないからだ。
同じように、人をどこかで拒絶しているところのある…オレのような人間以外は。
そう思うと途端に、オレは隣の存在が気になるようになっていた。
なんでだろうと考えても、漠然としたまま一向に答えは出なかった。
同情?憐れみ?そんな安っぽいものではなくて。
今日だって、こんなことをしている。
「ほら」
「え……?」
ずい、と目の前に出されたものに、男子生徒――進藤聖人は、間抜けにぽかんと口を開ける。
気を緩めた顔は珍しいな、と思うからか、ついつい口端が緩む。
「弁当。今日も持ってきてないんだろ?」
ずばりと指摘してやったら、肩が跳ねる。
「…なん、で」
(そりゃ分かるさ)
昨日だって、購買に行くと言ったまま帰ってこなかった。
予鈴が鳴ってから戻ってきたところを見ると、そのままどこかで適当に時間を潰していたことも、なにも食べてこなかったことも容易に想像がついた。
進藤の事情については、オレが弁当を無理矢理食べさせていたことに興味を抱いたのか知らないが、彼の居ないときに周りの生徒から教えられた。
たった一人の肉親を亡くしたこと。
両親の結婚が駆落ちの末だったために、親族同士で彼の親権について揉めていること。
『進藤くん、どうなっちゃうんだろうね?独りぼっちで可愛そうだね…』
『盥回しなんて、ヒデエ話だよな』
皆口々にそう言ってはいるが、目を見れば残酷な好奇心に駆られているのがよく分かる。
(酷いのは、どっちだよ)
クラスメートにそこまで漏れてしまっているなら余計に辛いだろう。
だからきっと、あんなに傷ついている。今だって。
彼の心情を推し量ると堪らなくて、気がついたらオレは2人分の弁当をこさえていた。
「や、でも悪いしさ…」
「いいんだよ。オレが好きでやってることなんだし。一人分作るのも二人分も変わらないし」
「……」
半ば押し付けるようにして、弁当を進藤の手の上に乗せる。
彼は暫く惚けたようにそれをじっと見つめていた。
お節介だということも重々承知している。というか、オレだってこんなことをするとは思わなかった。
ただ、このまま放っておいたら、彼は露と消えてしまいかねない。
そんな気さえした。
「…がと」
小さく、本当に小さく。
彼が呟いたその一言に、なんだか心がきゅう、と締め付けられた。
オレも存外、扱いやすい人間だったのかもしれない。
次の日から、毎日進藤の為に弁当を作るようになった。
こちらの言い分は全て同じで、申し訳ないという顔をする前に言い切って渡してしまう。
進藤は最初の頃は戸惑って、どんな反応をしていいか分からないようだった。
悪意のある感情や言葉にはなんてことのない顔をしてやり過ごすくせに、真っ直ぐぶつけられる好意からくる言動には弱いらしい。
彼は受け取るとき、直ぐにはいつもの薄笑いの対応も出来なくて、眉を下げて泣きそうに顔を歪める。
(…我慢すんなよ)
何度もそう思ったが、上げた顔はもう笑みを作っていた。
そんな毎日が暫く続いた。
いつも綺麗に食べていた進藤だったが、見ているうちに好みが少しずつ把握できるようになっていった。
好きなものは一番最後に取っておくこと。
甘い卵焼きより、出し巻き卵の方が好きなこと。
辛いものが苦手なこと。
弁当の中身が進藤の好きなもので埋め尽くされることも多くなって、オレは蓋を開けるときの彼を見るのが楽しみになってきた。
そのときだけは、何も苦痛のない、素のままの進藤が出るからだ。
「…すげえ…」
きらきらと、輝いた瞳。
それを、こちらにも向けてくれればいいのに。
そう考えている自分がいて、愕然とした。
「いいんだよ。オレが好きでやってることなんだし。一人分作るのも二人分も変わらないし」
「……」
半ば押し付けるようにして、弁当を進藤の手の上に乗せる。
彼は暫く惚けたようにそれをじっと見つめていた。
お節介だということも重々承知している。というか、オレだってこんなことをするとは思わなかった。
ただ、このまま放っておいたら、彼は露と消えてしまいかねない。
そんな気さえした。
「…がと」
小さく、本当に小さく。
彼が呟いたその一言に、なんだか心がきゅう、と締め付けられた。
オレも存外、扱いやすい人間だったのかもしれない。
次の日から、毎日進藤の為に弁当を作るようになった。
こちらの言い分は全て同じで、申し訳ないという顔をする前に言い切って渡してしまう。
進藤は最初の頃は戸惑って、どんな反応をしていいか分からないようだった。
悪意のある感情や言葉にはなんてことのない顔をしてやり過ごすくせに、真っ直ぐぶつけられる好意からくる言動には弱いらしい。
彼は受け取るとき、直ぐにはいつもの薄笑いの対応も出来なくて、眉を下げて泣きそうに顔を歪める。
(…我慢すんなよ)
何度もそう思ったが、上げた顔はもう笑みを作っていた。
そんな毎日が暫く続いた。
いつも綺麗に食べていた進藤だったが、見ているうちに好みが少しずつ把握できるようになっていった。
好きなものは一番最後に取っておくこと。
甘い卵焼きより、出し巻き卵の方が好きなこと。
辛いものが苦手なこと。
弁当の中身が進藤の好きなもので埋め尽くされることも多くなって、オレは蓋を開けるときの彼を見るのが楽しみになってきた。
そのときだけは、何も苦痛のない、素のままの進藤が出るからだ。
「…すげえ…」
きらきらと、輝いた瞳。
それを、こちらにも向けてくれればいいのに。
そう考えている自分がいて、愕然とした。
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