オリジナルBL小説を扱ってます。
メインはLiebeシリーズ(不良×平凡)サブでCuadradoシリーズ(生徒会長×お調子者と親友たちの4角関係)も。pixivで漫画連載してます。更新情報はツイッターでどうぞ。
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- 10/13 初夏の嵐(5)
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- 09/16 fragile (51) Side: 翼 最終回
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あの頃、世の中の全てがモノクロに染まっていた。
呼吸しているのか止まっているのか、それすら曖昧に感じて。
このまま露と消えてしまっても構わない――否、そうなればいいと思っていた。
だって、誰も悲しまないから。
オレを愛してくれる人は、この世界にはもう…いないから。
中学2年生の秋、オレは最後の家族だった母を失った。
裕福な家庭に生まれた所謂お嬢様の母さんと、貧乏ながらも猛勉強の末弁護士になった父さん。
2人は格差なんて関係なく恋に落ちたけれど、両家からは強固に反対された。
そんな彼らは駆落ち同然で結婚したから、オレは祖母達の顔も知らずに育った。
けれども両親の仲は円満で、優しくて、暖かくて。
毎日が、とても幸せだった。
けれど、それは突然終りを告げる。
オレが小学校低学年のとき、父さんが重たい病気に掛かり治療の甲斐なく死んでしまった。
それからは母さんとオレ、2人だけの暮らしが始まった。
仕事をしたことがなかった母さんはそれでも昼夜問わず懸命に働いて、オレが中学生になるまで育ててくれた。
でもそのせいで白魚のように綺麗だった手はぼろぼろになり、疲れから身体も崩しがちになってしまって。
そして、あの日……
カーテンからの眩しい光に、オレは顔を顰めた。
どんな心持でいるかは関係なく、朝は訪れる。
漆黒の闇の中にいるオレにとっては鬱陶しいだけで、うんざりしながら身体を起こした。
小さなアパートの部屋は、それでもオレ一人だとがらんとしていた。
見遣ると、オレは制服のままだった。
昨日の告別式の後、ベッドに転がっていたら寝てしまったらしい。
(母さんがいたら、怒られただろうな…)
もう、と肩を上げながら可愛く怒ってみせるその表情が容易に思い出されて、小さく笑う。
しかしそれは直ぐに涙声に変わり、オレは膝を抱いて嗚咽をあげる。
母さんは死んだ。
オレのせいで。
オレが、殺してしまったから。
呼吸しているのか止まっているのか、それすら曖昧に感じて。
このまま露と消えてしまっても構わない――否、そうなればいいと思っていた。
だって、誰も悲しまないから。
オレを愛してくれる人は、この世界にはもう…いないから。
中学2年生の秋、オレは最後の家族だった母を失った。
裕福な家庭に生まれた所謂お嬢様の母さんと、貧乏ながらも猛勉強の末弁護士になった父さん。
2人は格差なんて関係なく恋に落ちたけれど、両家からは強固に反対された。
そんな彼らは駆落ち同然で結婚したから、オレは祖母達の顔も知らずに育った。
けれども両親の仲は円満で、優しくて、暖かくて。
毎日が、とても幸せだった。
けれど、それは突然終りを告げる。
オレが小学校低学年のとき、父さんが重たい病気に掛かり治療の甲斐なく死んでしまった。
それからは母さんとオレ、2人だけの暮らしが始まった。
仕事をしたことがなかった母さんはそれでも昼夜問わず懸命に働いて、オレが中学生になるまで育ててくれた。
でもそのせいで白魚のように綺麗だった手はぼろぼろになり、疲れから身体も崩しがちになってしまって。
そして、あの日……
カーテンからの眩しい光に、オレは顔を顰めた。
どんな心持でいるかは関係なく、朝は訪れる。
漆黒の闇の中にいるオレにとっては鬱陶しいだけで、うんざりしながら身体を起こした。
小さなアパートの部屋は、それでもオレ一人だとがらんとしていた。
見遣ると、オレは制服のままだった。
昨日の告別式の後、ベッドに転がっていたら寝てしまったらしい。
(母さんがいたら、怒られただろうな…)
もう、と肩を上げながら可愛く怒ってみせるその表情が容易に思い出されて、小さく笑う。
しかしそれは直ぐに涙声に変わり、オレは膝を抱いて嗚咽をあげる。
母さんは死んだ。
オレのせいで。
オレが、殺してしまったから。
「ちーす…」
学校に着いたのは、もう昼前だった。
クラスメートは皆オレを見て一様に気まずそうに顔を見合わせる。
それでもなんとか笑顔を作り、オレに話しかけてきた。
「ちーす、じゃねえよ!聖人、もう4時間目はじまんぞー」
「あ、マジ?昨日ゲームしてたら夜更かししちまってさあ」
「おいおい、しっかりしろよ」
あはは、と一斉に笑う声につられて口端を上げる。
吐き気がする。
腫れ物を触るような態度の連中も、なんでもなかったかのようにへらへらしている、自分も。
だらだらと歩いて、自分の席に座る。
窓側の一番奥の席は好きだった。
教師の目は届きにくいし、窓をぼんやり見て過ごせるから。
オレは薄い鞄を机に置き、腰を降ろした。
まだ夏の入道雲は残っているが、少しずつ秋へと色を変えていく。
開け放たれた窓から入ってくる風に目を閉じ、オレは寝る態勢に入った。
(あー…なんで学校って義務なんだろ)
お前が出来ることなんて何もない。だから、明日は学校に行きなさい。
そう偉そうに言った大人の顔を思い出し、腸が煮えくり返りそうになった。
葬式で初めて顔を合わせた、知らない親族達。
両家は気まずそうにしていたが、やがて言い争いになった。
やれそっちのせいでうちの娘が苦労をさせられただの、たぶらかされたせいで息子が死んだだの。
そして、あれはどうするんだ、という話になった。
オレのことだ。
母さんの両親はうちにそんな余裕はないから、面倒は見れない、といった。
隣には知らない子供がいた。母さんの兄弟の子供だった。
父さんの方は母親しかおらず、うちもそんな金は無いといった。
要するに、オレは邪魔者だった。
『いいよ、オレは一人で生きるから』
親族の前でそう言えば、一斉に驚いていた。
そして口々に、子供が何を言う、と言いはじめた。
養護施設に預けたほうが、とまで言われ、オレは怒りのあまり壁を殴りつけていた。
しん、と黙った大人達に向かって、叫んでいた。
『オレはあの家から出ていかない!一人で生きていくから邪魔すんなよ!』
うんざりだった。これがあの両親の親なのか?
こんなに汚い奴らに世話になるくらいなら、独りで十分だ。
そう思ったら堪らなくて、走って帰って、家で枯れるまで泣いた。
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