オリジナルBL小説を扱ってます。
メインはLiebeシリーズ(不良×平凡)サブでCuadradoシリーズ(生徒会長×お調子者と親友たちの4角関係)も。pixivで漫画連載してます。更新情報はツイッターでどうぞ。
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VIP専用ルームは、幹部だけが踏み入れることが出来る領域だ。
ここではいつも他のグループの動向やら、オレ達に喧嘩を吹っ掛けてきた奴らの詳細やらが伝えられる。
Red Scorpionの幹部…龍人や優士、真とする”話”は、大抵が愉快なものとは程遠い。
毎日が暴力と血で塗られた汚い世界だ。
元々オレ自身、このグループで頂点を目指そうという気持ちは微塵もなかった。
ただ絡んでくる奴らを倒していたら、必然的にこの地位までのし上がってしまっただけだ。
しかし、オレ達を…オレを倒すことで名実ともにNO,1になろうと尽きることの無い欲を持つ奴らは、吐いて捨てるほどいる。
少し前までのオレなら、挑んでくる奴らをただ厭い、殴って気を紛らわし、高まった熱を適当な女で発散させていた。
それしか他に知らなくて、益々酷くなる渇きに苛立ちだけが募って。
本当に殴りたいのは誰でもなく己自身だと気付いていながら、もがき苦しんでいた。
――だが、今は違う。
護りたいものができた。
それは、オレの人生を変えるには十分過ぎるほど。
「わあ、流石ッスね!!」
真の理路整然とした説明が済み、話し合いは終了した。
と、VIPルームを一歩出たところで、大きな歓声が飛び込んできた。
何事かと思い見渡すと、主因はすぐに判明した。
うちの不良連中が囲んでいるその中心には、照れくさそうに笑う恋人がいたからだ。
「これで又着れます!俺これすっげえ気に入ってたんで、マジで助かりました!」
「あ、あの!次オレも頼んじまってもいいですか?」
「あ、はい。オレでよければ」
あいつらが手に持っているのは自分達の洋服で、そして彼が持っているのは針と糸。
オレが考えるよりも先に、横に居た優士が微笑んだ。
「ああ…また直くんに破れた服を縫ってもらってたんだね」
「いーな!オレも今度やってもらっていいー?」
それを聞いた龍人がすかさず手を上げて直に頼む。
「はい、勿論いいですよ」
正直言って面白くは無いが、直が本当に明るい顔で頷くから文句は口の中だけで消えた。
直がここにやってきて、雰囲気が一変した。
最初彼は強面の連中にかなりビビッていたようだが、数週間もしないうちに大分打ち解けたようだ。
そして不良連中もすっかり気に入ったらしい。最近では直がこのバーにやってくるや否や、皆して声を掛けようとしている。
ここではいつも他のグループの動向やら、オレ達に喧嘩を吹っ掛けてきた奴らの詳細やらが伝えられる。
Red Scorpionの幹部…龍人や優士、真とする”話”は、大抵が愉快なものとは程遠い。
毎日が暴力と血で塗られた汚い世界だ。
元々オレ自身、このグループで頂点を目指そうという気持ちは微塵もなかった。
ただ絡んでくる奴らを倒していたら、必然的にこの地位までのし上がってしまっただけだ。
しかし、オレ達を…オレを倒すことで名実ともにNO,1になろうと尽きることの無い欲を持つ奴らは、吐いて捨てるほどいる。
少し前までのオレなら、挑んでくる奴らをただ厭い、殴って気を紛らわし、高まった熱を適当な女で発散させていた。
それしか他に知らなくて、益々酷くなる渇きに苛立ちだけが募って。
本当に殴りたいのは誰でもなく己自身だと気付いていながら、もがき苦しんでいた。
――だが、今は違う。
護りたいものができた。
それは、オレの人生を変えるには十分過ぎるほど。
「わあ、流石ッスね!!」
真の理路整然とした説明が済み、話し合いは終了した。
と、VIPルームを一歩出たところで、大きな歓声が飛び込んできた。
何事かと思い見渡すと、主因はすぐに判明した。
うちの不良連中が囲んでいるその中心には、照れくさそうに笑う恋人がいたからだ。
「これで又着れます!俺これすっげえ気に入ってたんで、マジで助かりました!」
「あ、あの!次オレも頼んじまってもいいですか?」
「あ、はい。オレでよければ」
あいつらが手に持っているのは自分達の洋服で、そして彼が持っているのは針と糸。
オレが考えるよりも先に、横に居た優士が微笑んだ。
「ああ…また直くんに破れた服を縫ってもらってたんだね」
「いーな!オレも今度やってもらっていいー?」
それを聞いた龍人がすかさず手を上げて直に頼む。
「はい、勿論いいですよ」
正直言って面白くは無いが、直が本当に明るい顔で頷くから文句は口の中だけで消えた。
直がここにやってきて、雰囲気が一変した。
最初彼は強面の連中にかなりビビッていたようだが、数週間もしないうちに大分打ち解けたようだ。
そして不良連中もすっかり気に入ったらしい。最近では直がこのバーにやってくるや否や、皆して声を掛けようとしている。
普段はオレが隣にいるから萎縮してなかなか話せないだけに、オレが幹部とVIPルームに籠っているときがチャンスと踏んでいるようだ。
「……」
オレのだと怒るのも大人気ない。
が、寛容に構えていられるほど本当に大人でもない。
オレの複雑な心持に気付いたのか、マスターが磨いたグラスを棚に戻しながら、小さく笑った。
「本当、彼が現われてからのお前は変わったな」
「…そう、スか」
なんと答えて言いか分からず、眉間に皺が寄る。
ここのマスターはかなり変わっている。
オレが高校入学後にいつものように喧嘩をしているところへふらりとやってきたかと思うと、自分の店をアジトにしたらどうか、と提案してきたのだ。
普通こんなことを言い出す店長もいないだろう。
グループで動く気なんて更々無かったオレは断ろうとしたが、龍人達が乗り気になって話が纏まってしまった。
肩までの髪を後ろにひとつに縛り、垂れ目でいつも上機嫌。
その様子からは想像もつかないが、このマスターも、昔は相当名の知れた不良だったらしい。
それにここだって、いつもオレ達しかいない。
儲かっているのかと尋ねたら、もうひとつ、この店の裏側に一般の客専用の喫茶店をやっているらしい。
だからここは趣味なのだとあっけらかんと言い放っていた。
そのマスターがカウンターに座ったオレにアイスコーヒーを出しながら(直が来るときは酒を飲まないことにしている)、更に続けた。
「纏う空気が違うからね。篤也にとっても他の奴らにとっても、直くんは大事な存在になったようだ」
「……」
それは、そうかもしれない。
いつも不満を抱えているような、苛立っているような顔ばかりだった連中が、いつしか大分柔らかくなっている。
こんな風に笑う奴らだとは思わなかった。気付こうともしてこなかった証拠だとも、思う。
直といると、ただ力だけが強さの証明にはならないのだと――痛感させられる。
「直」
無性に抱きしめたくなって、名前を呼ぶ。
肩のほつれを直し、シャツを持ち主に返した恋人はさっと立ち上がり、オレに駆け寄ってきた。
「はい、篤也先輩」
紅潮している頬と、優しく包んでくれる黒の瞳に――酷く安心感を覚える、自分がいる。
好きだ。
声に出せずにそう呟いて抱きしめると、ふわりと優しい匂いがした。
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伊知様キリリクの「Liebeのなにか」でしたー!
なにかとのことでしたので、好き勝手に書いてしまいました(笑)
直は不良グループのアイドルになればいいと思います。
それに安心するやら嫉妬するやら複雑な総長(笑)
皆にとっての光、ということで。
こんな駄作ですが、伊知様キリリク有難うございました!
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