オリジナルBL小説を扱ってます。
メインはLiebeシリーズ(不良×平凡)サブでCuadradoシリーズ(生徒会長×お調子者と親友たちの4角関係)も。pixivで漫画連載してます。更新情報はツイッターでどうぞ。
- 12/02 初夏の嵐(6)
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それは、毎朝の目覚めとは程遠い、酷く不快なものだった。
泥沼から身体を掬うように、思考を浮上させるのも重苦しい。
それに伴い痛みがはっきりと輪郭を現してきて、顔を顰める。
(あれ…?オレ、どうして……)
「…っ」
酸素を取り入れようとした口の中に広がる、鉄分の味。
それだけではない。腹もジンジンと痺れている。
何故だろうとぼんやり原因を考えながら身体を動かそうとして、は、と気付く。
己の両腕は真上に束ねられ、動きを封じられている。
(え…何これ…縛られて…?)
そこまで現状を把握できたオレの頭上から、楽しそうな声が降りてきた。
「お、オヒメサマがお目覚めだぜ」
弾かれるように顔を上げると、そんなオレの表情が愉快だったのか男達の笑みが深まる。
「あ…貴方達は…」
思い出した。
オレは校門の前でこいつらに会って、突然殴られ――拉致されたのだ。
連れてこられた場所はもう長いこと使用されていない、工場のようだ。
壁にはヒビが入り、窓ガラスは割れている。
隅に置かれたままの鋼材やタイヤに腰掛けている男達はきっと仲間なのだろう。
先程よりも人数はずっと増えて、見たところ30人はいるだろうか。
オレはというと、天井から下がっているチェーンに繋いだロープに両腕を縛られ、壁際に座り込んでいる状態だ。
そして彼らは皆、一様に下卑た笑みを浮かべている。
どうやらここに、オレの味方はいないようだった。
泥沼から身体を掬うように、思考を浮上させるのも重苦しい。
それに伴い痛みがはっきりと輪郭を現してきて、顔を顰める。
(あれ…?オレ、どうして……)
「…っ」
酸素を取り入れようとした口の中に広がる、鉄分の味。
それだけではない。腹もジンジンと痺れている。
何故だろうとぼんやり原因を考えながら身体を動かそうとして、は、と気付く。
己の両腕は真上に束ねられ、動きを封じられている。
(え…何これ…縛られて…?)
そこまで現状を把握できたオレの頭上から、楽しそうな声が降りてきた。
「お、オヒメサマがお目覚めだぜ」
弾かれるように顔を上げると、そんなオレの表情が愉快だったのか男達の笑みが深まる。
「あ…貴方達は…」
思い出した。
オレは校門の前でこいつらに会って、突然殴られ――拉致されたのだ。
連れてこられた場所はもう長いこと使用されていない、工場のようだ。
壁にはヒビが入り、窓ガラスは割れている。
隅に置かれたままの鋼材やタイヤに腰掛けている男達はきっと仲間なのだろう。
先程よりも人数はずっと増えて、見たところ30人はいるだろうか。
オレはというと、天井から下がっているチェーンに繋いだロープに両腕を縛られ、壁際に座り込んでいる状態だ。
そして彼らは皆、一様に下卑た笑みを浮かべている。
どうやらここに、オレの味方はいないようだった。
(この人達、もしかして先輩の言ってた…!?)
先輩が学校に来なくなった理由は、こいつらを片付けるためだったはずだ。
うちの生徒も何人もカモられている――先輩がそう言っていたことを思い出し、カツアゲのために連れ去られたのだろうという結論に至る。
たかだか一人から金を巻き上げる為にこんな大人数でかかる意味は判らないけれど、それなら、とオレは慌てて口を開いた。
「あ、あの、オレお金持ってません…っ」
いつしか先輩にも言ったような台詞だ。
しかしあのときは全く予想外の用だったけれど、今度ばかりはそれはないだろう。
ただ財布の経済状況だけは変わらず、というか今日購買で消しゴムを買ったから更に少なくなっている。
だからほぼゼロだ、という計算をして、素直に白状した。
あとでどうせないのかよと怒られるくらいなら、今言っておいたほうがマシだ。
「ああ?」
そんなチキンな考えは不発に終わった。
男達は顔を見合わせると、鼻で哂い首を振ったからだ。
「あー金は期待してねえよ」
「ま、貰うモンは貰うけどな」
「そうそ。俺らオヒメサマに用があるんだからよ」
口々に言われたが、最後の単語が引っかかる。
そういえば、先程も同じように言われていたような気がするけれど…
「…おひめさま…?」
一体誰のことを言っているのだろうか。
まさかオレ…
「やめてよ、気色悪い」
オレの思考を読んだかのようなタイミングで、ばっさりと切り捨てる。
その強い調子には聞き覚えがあった。
踵を踏み潰したローファーを鳴らしながら、酷く面倒くさそうな歩き方で近付いてくる。
じゃらじゃらと沢山ついた鞄のストラップが揺れ、長い茶髪を赤いネイルで掻き揚げた。
「おー、ユキ来たか」
「あ…ッ」
『私よ、三島ユキ!他の子とは違ってユキとは何度も寝てくれたじゃん!』
いつぞやの台詞が脳裏に浮かぶ。
でも…なんで、ここに…?
ユキさんは呆然と見上げるオレを、冷たく一瞥した。
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