オリジナルBL小説を扱ってます。
メインはLiebeシリーズ(不良×平凡)サブでCuadradoシリーズ(生徒会長×お調子者と親友たちの4角関係)も。pixivで漫画連載してます。更新情報はツイッターでどうぞ。
- 12/02 初夏の嵐(6)
- 10/13 初夏の嵐(5)
- 10/09 【お知らせ】コメント欄について。
- 09/16 fragile (51) Side: 翼 最終回
- 09/08 fragile (50) Side: 俊&巧
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男は絶望した。
仕掛けた時には確かにあった勝算が、今では塵一つも残っていないことに気付いたからだ。
噂を耳にしていた。
Red Scorpion――この地域で常に絶対的な力を誇るチーム。
そこの頂点に君臨する総長の弱みがついに出来た――というものだ。
それが恋愛…しかも相手が男だというのだから、寝首を掻こうと虎視眈々と狙っている他チームが放っておくはずがない。
『アイツは平凡な男に惚れ込んで、牙も抜けた』
そう他の不良達は揶揄し、嘲笑した。
男も例に漏れず、これをチャンスと捉えた。
平凡な男というのだから、暴力を振るえばすぐに言うことを聞くだろう。
そいつを人質にして、あの総長を脅すのだ、と。
いつも喧嘩を挑んでは返り討ちに遭っていた男はずっと恨んでいた。
一度、あの総長の膝を付かせてみたかった。
常に表情ひとつ変えないその顔を、歪めてみたかったのだ。
そんな男の前に、一人の女子高生が現われた。
いつも会う度に違う男を連れ歩いていた彼女は、なかでもRed Scorpionの総長のセフレだということを一番の自慢にしていた。
しかしある日突然、彼女はその立場を失った。
元から特別な感情も持たれていない関係だということは承知済だった。
だが、二度と目の前に現われるなと――総長に突き放された。
その主因は、総長の心を攫った人間が現われたからだ。
故に――彼女も、強い妬みを募らせていた。
男と女の利害関係は一致した。そして手を組むことを、決めた。
今ならば、弱みを持ったあの男相手ならば、かつてのように負けることはないだろう。
明日からは自分がこの街を仕切るのだと――男は高揚した気分で、月峰高校の正門へと向かった。
そしてそこにいたターゲットを捕獲して――天下取りは始まった。
はず、だった。
だが今、膝を付いているのは男ではない。自分だった。
混乱した頭で顔を上げる。
仁王立ちした男は以前と同じく――否、もっと明確な殺意さえ篭った瞳で、こちらを見下ろしていた。
途端に体中を震えが走る。
違う。違う違う違う。
こいつは牙なんか抜けていない。
あの頃のままだ。
『月峰の飢狼』――最強にして冷酷な伝説の男、そのままだった。
仕掛けた時には確かにあった勝算が、今では塵一つも残っていないことに気付いたからだ。
噂を耳にしていた。
Red Scorpion――この地域で常に絶対的な力を誇るチーム。
そこの頂点に君臨する総長の弱みがついに出来た――というものだ。
それが恋愛…しかも相手が男だというのだから、寝首を掻こうと虎視眈々と狙っている他チームが放っておくはずがない。
『アイツは平凡な男に惚れ込んで、牙も抜けた』
そう他の不良達は揶揄し、嘲笑した。
男も例に漏れず、これをチャンスと捉えた。
平凡な男というのだから、暴力を振るえばすぐに言うことを聞くだろう。
そいつを人質にして、あの総長を脅すのだ、と。
いつも喧嘩を挑んでは返り討ちに遭っていた男はずっと恨んでいた。
一度、あの総長の膝を付かせてみたかった。
常に表情ひとつ変えないその顔を、歪めてみたかったのだ。
そんな男の前に、一人の女子高生が現われた。
いつも会う度に違う男を連れ歩いていた彼女は、なかでもRed Scorpionの総長のセフレだということを一番の自慢にしていた。
しかしある日突然、彼女はその立場を失った。
元から特別な感情も持たれていない関係だということは承知済だった。
だが、二度と目の前に現われるなと――総長に突き放された。
その主因は、総長の心を攫った人間が現われたからだ。
故に――彼女も、強い妬みを募らせていた。
男と女の利害関係は一致した。そして手を組むことを、決めた。
今ならば、弱みを持ったあの男相手ならば、かつてのように負けることはないだろう。
明日からは自分がこの街を仕切るのだと――男は高揚した気分で、月峰高校の正門へと向かった。
そしてそこにいたターゲットを捕獲して――天下取りは始まった。
はず、だった。
だが今、膝を付いているのは男ではない。自分だった。
混乱した頭で顔を上げる。
仁王立ちした男は以前と同じく――否、もっと明確な殺意さえ篭った瞳で、こちらを見下ろしていた。
途端に体中を震えが走る。
違う。違う違う違う。
こいつは牙なんか抜けていない。
あの頃のままだ。
『月峰の飢狼』――最強にして冷酷な伝説の男、そのままだった。
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「クソ…ッ!!」
座り込んでいたリーダー格の男は思いつめたように呟くと、右手を制服のポケットに入れた。
そして素早く取り出したものに、オレは凍りついた。
振り上げた拍子に飛び出したのは、鋭利なナイフ。
「死ねえええっ!!」
男は狂ったように叫びながら、篤也先輩に襲い掛かる。
「先輩!!」
(危ない…っ!)
その場を動かない先輩に向かって悲鳴にも似た声をあげる。
最悪の場面が脳裏を過ぎり――オレはゾッとした。
しかし、リーダーの男のナイフはまるきり外れた。
先輩がいとも簡単に、殆ど身体をずらさずに避けたのだ。
「……ザコが…」
先輩が吐き捨てるように呟く。
そして右手を振り上げ――次の瞬間、リーダーの男は宙に舞っていた。
目の前でモノのように崩れ落ちる男を、呆然と見つめる。
(つ……強い…)
レベルが違うなんてものじゃない。
そこに、歴然とした”格”の違いがあった。
(今まで優しい嘉堵川先輩しか知らなかったけれど…)
これが、Red Scorpionの総長の実力――…
先程の喧騒が嘘のように静まり返った廃工場。
もう立っているのは、先輩達だけだった。
それを破ったのはあの人だった。
「どうしてよ、篤也!!」
「クソ…ッ!!」
座り込んでいたリーダー格の男は思いつめたように呟くと、右手を制服のポケットに入れた。
そして素早く取り出したものに、オレは凍りついた。
振り上げた拍子に飛び出したのは、鋭利なナイフ。
「死ねえええっ!!」
男は狂ったように叫びながら、篤也先輩に襲い掛かる。
「先輩!!」
(危ない…っ!)
その場を動かない先輩に向かって悲鳴にも似た声をあげる。
最悪の場面が脳裏を過ぎり――オレはゾッとした。
しかし、リーダーの男のナイフはまるきり外れた。
先輩がいとも簡単に、殆ど身体をずらさずに避けたのだ。
「……ザコが…」
先輩が吐き捨てるように呟く。
そして右手を振り上げ――次の瞬間、リーダーの男は宙に舞っていた。
目の前でモノのように崩れ落ちる男を、呆然と見つめる。
(つ……強い…)
レベルが違うなんてものじゃない。
そこに、歴然とした”格”の違いがあった。
(今まで優しい嘉堵川先輩しか知らなかったけれど…)
これが、Red Scorpionの総長の実力――…
先程の喧騒が嘘のように静まり返った廃工場。
もう立っているのは、先輩達だけだった。
それを破ったのはあの人だった。
「どうしてよ、篤也!!」
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