オリジナルBL小説を扱ってます。
メインはLiebeシリーズ(不良×平凡)サブでCuadradoシリーズ(生徒会長×お調子者と親友たちの4角関係)も。pixivで漫画連載してます。更新情報はツイッターでどうぞ。
- 12/02 初夏の嵐(6)
- 10/13 初夏の嵐(5)
- 10/09 【お知らせ】コメント欄について。
- 09/16 fragile (51) Side: 翼 最終回
- 09/08 fragile (50) Side: 俊&巧
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砂埃が舞う。
廃工場の扉がまるでスローモーションのようにゆっくりと剥がれていく。
重たい鉄のそれが地面にめり込んで、また巻き上げられて。
「な、なんだ…!?」
煙幕のようにもうもうと立ち上がるせいで、不良達は状況が掴めずパニックになっているようだ。
オレは願うような想いで、一点に集中する。
(も…もしかして…)
その扉の向こう、近付いてくるシルエットに、オレは息を呑んだ。
きらりと光る金髪。紅いピアスと右側だけつけられた、銀のループピアス。
今日の朝に見たばかりだというのに、もう遠い昔のように懐かしかった、そのひと。
「か…」
不良達が一斉に色めき立つ。
「嘉堵川…篤也…っ!?」
来た。
来てくれた。
(篤也先輩…っ)
先輩の顔を見たら緊張の糸が切れたのか、堪えていた雫が頬を伝った。
篤也先輩は工場内をサッと見渡した。そしてオレと目が合うと、見開く。
「!直…っ」
「んー!」
オレも必死に、布の下から先輩の名前を叫ぶ。
「…テメエら……」
先輩が拳を硬く握り締める。
震えているのは、憤怒故だろうか。
鋭く尖った金属のような瞳が、不良達に向けられる。
「…全員、ぶっ殺す…!」
廃工場の扉がまるでスローモーションのようにゆっくりと剥がれていく。
重たい鉄のそれが地面にめり込んで、また巻き上げられて。
「な、なんだ…!?」
煙幕のようにもうもうと立ち上がるせいで、不良達は状況が掴めずパニックになっているようだ。
オレは願うような想いで、一点に集中する。
(も…もしかして…)
その扉の向こう、近付いてくるシルエットに、オレは息を呑んだ。
きらりと光る金髪。紅いピアスと右側だけつけられた、銀のループピアス。
今日の朝に見たばかりだというのに、もう遠い昔のように懐かしかった、そのひと。
「か…」
不良達が一斉に色めき立つ。
「嘉堵川…篤也…っ!?」
来た。
来てくれた。
(篤也先輩…っ)
先輩の顔を見たら緊張の糸が切れたのか、堪えていた雫が頬を伝った。
篤也先輩は工場内をサッと見渡した。そしてオレと目が合うと、見開く。
「!直…っ」
「んー!」
オレも必死に、布の下から先輩の名前を叫ぶ。
「…テメエら……」
先輩が拳を硬く握り締める。
震えているのは、憤怒故だろうか。
鋭く尖った金属のような瞳が、不良達に向けられる。
「…全員、ぶっ殺す…!」
「ヒッ…!」
不良達は先輩のドスの利いた声だけで怯んだ様だ。
じり、と僅かに後退する。
「ほーんと、ちょームカつくよねえー…」
ピリピリとした空気に場違いな間延びした声。
扉に居た不良の一人の背中を、八重歯を覗かせた人が足蹴にする。
「オレ達の大事な直クンを攫ってくれちゃってさあ…」
しかしいつもの調子にも、ちらほらと燃える火のような危うさが垣間見える。
横に居る穏やかな先輩ですら、その右手に引き寄せているのは不良の胸倉だ。
「本当…美しくないね…」
(前園先輩、桜橋先輩…っ!)
ホッとしたのは当然だろうがオレだけで、不良達は一気にざわつく。
「コイツら、何時の間に…!?」
「おい、見張りがやられてンぞ!?」
しかし彼らの言葉は前園先輩を更に苛立たせただけらしい。
倒れている不良を思い切り蹴飛ばすと、長い溜息を吐いた。
「もしかしてオレら、舐められてンの?――…フザけてんじゃねえぞ?ああ?」
(せ…先輩…キレて…る?)
延びていた語尾が引っ込むと、途端にがらりと変わる。
前園先輩の豹変っぷりに驚いていると、やれやれと桜橋先輩が顔色一つ変えずに肩を竦めた。
「龍人、こんな雑魚相手に本気出しても楽しくないよ?」
「だってー…あ。」
そこでまたいつもの調子に戻った先輩はなにかに気付くと、桜橋先輩の頬を指差した。
「優士、返り血ついてるー」
(…あ…)
そこでオレは唐突に、一番最初に出会ったときの会話を思い出した。
確か桜橋先輩が喧嘩を好まない理由って…
「……な…」
先輩は手で頬を確かめると、そこに付いた血にわなわなと肩を揺らし始めた。
「なんてことを…!…僕の…美しい…顔に…!!」
ゆらあ、とゆっくり起き上がった先輩は、まるで般若のようだった。
「…殺す……」
(べ、別人…)
完全にスイッチが入ったらしい。
遠くから見ているだけのオレでも思わずビクついてしまう、先輩達の怒りの波動。
それを間近に受けると、きっと生きた心地がしないに違いない。
その証拠に、あんなに粋がっていた不良達が今やすっかり飲み込まれている。
雰囲気を肌で感じたのだろう、リーダーの男が奮い立たせるように声を張り上げた。
「おい!こいつらを囲め!!」
不良達は先輩のドスの利いた声だけで怯んだ様だ。
じり、と僅かに後退する。
「ほーんと、ちょームカつくよねえー…」
ピリピリとした空気に場違いな間延びした声。
扉に居た不良の一人の背中を、八重歯を覗かせた人が足蹴にする。
「オレ達の大事な直クンを攫ってくれちゃってさあ…」
しかしいつもの調子にも、ちらほらと燃える火のような危うさが垣間見える。
横に居る穏やかな先輩ですら、その右手に引き寄せているのは不良の胸倉だ。
「本当…美しくないね…」
(前園先輩、桜橋先輩…っ!)
ホッとしたのは当然だろうがオレだけで、不良達は一気にざわつく。
「コイツら、何時の間に…!?」
「おい、見張りがやられてンぞ!?」
しかし彼らの言葉は前園先輩を更に苛立たせただけらしい。
倒れている不良を思い切り蹴飛ばすと、長い溜息を吐いた。
「もしかしてオレら、舐められてンの?――…フザけてんじゃねえぞ?ああ?」
(せ…先輩…キレて…る?)
延びていた語尾が引っ込むと、途端にがらりと変わる。
前園先輩の豹変っぷりに驚いていると、やれやれと桜橋先輩が顔色一つ変えずに肩を竦めた。
「龍人、こんな雑魚相手に本気出しても楽しくないよ?」
「だってー…あ。」
そこでまたいつもの調子に戻った先輩はなにかに気付くと、桜橋先輩の頬を指差した。
「優士、返り血ついてるー」
(…あ…)
そこでオレは唐突に、一番最初に出会ったときの会話を思い出した。
確か桜橋先輩が喧嘩を好まない理由って…
「……な…」
先輩は手で頬を確かめると、そこに付いた血にわなわなと肩を揺らし始めた。
「なんてことを…!…僕の…美しい…顔に…!!」
ゆらあ、とゆっくり起き上がった先輩は、まるで般若のようだった。
「…殺す……」
(べ、別人…)
完全にスイッチが入ったらしい。
遠くから見ているだけのオレでも思わずビクついてしまう、先輩達の怒りの波動。
それを間近に受けると、きっと生きた心地がしないに違いない。
その証拠に、あんなに粋がっていた不良達が今やすっかり飲み込まれている。
雰囲気を肌で感じたのだろう、リーダーの男が奮い立たせるように声を張り上げた。
「おい!こいつらを囲め!!」
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