オリジナルBL小説を扱ってます。
メインはLiebeシリーズ(不良×平凡)サブでCuadradoシリーズ(生徒会長×お調子者と親友たちの4角関係)も。pixivで漫画連載してます。更新情報はツイッターでどうぞ。
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街灯がぽつぽつと灯る道を2人で歩く。
2人の間には会話は少なくて、殆どがオレから話すことばかりだ。
先輩は大抵、黙って聞いているか時折頷くだけ。
けれども、初日のような気まずさはない。先輩の反応が素っ気無いそれではないと判ってきたからだ。
それがなんだか嬉しくてつい下らないことばかり喋ってしまったかな、とちょっと反省して顔をあげると、決まって穏やかな色を湛えた瞳とぶつかる。
だから余計にどぎまぎして、また詮無い事を口にしてしまう…それの繰り返しだった。
やがて、家が見えてきた。
「あ、ここで大丈夫です」
門扉の前で振り返ると、ああ、と先輩も足を止める。
「あの…送っていただいて、有難うございました」
「いや、いい…」
頭を下げるオレに先輩が言いながら、少し考える素振りをみせた。
そしてふと、話題を振る。
「…直、明日は部活か?」
「あ、はい」
週二回ある料理部の部活の日だ。
思い出しながら頷くと、先輩は僅かに眉間の皺を寄せる。
「…オレは用事があるから、学校には行かれねえ」
「あ、そうなんですか…判りました、オレ一人で帰」
「駄目だ。行き帰りは送る」
間髪入れずに否定され、思わず言葉に詰まる。
「え、でも…わざわざそんな…」
か弱い女子生徒でもないのに…確かに強いとはお世辞でもいえないけれど…
オレの戸惑いを受けて、先輩が重い溜息を吐きながら口を開いた。
心なしか、その瞳が冷たくなった、気がした。
「――…最近、この辺りに雑魚がうろついてンだ。…うちの生徒も、何人かカモられてる」
2人の間には会話は少なくて、殆どがオレから話すことばかりだ。
先輩は大抵、黙って聞いているか時折頷くだけ。
けれども、初日のような気まずさはない。先輩の反応が素っ気無いそれではないと判ってきたからだ。
それがなんだか嬉しくてつい下らないことばかり喋ってしまったかな、とちょっと反省して顔をあげると、決まって穏やかな色を湛えた瞳とぶつかる。
だから余計にどぎまぎして、また詮無い事を口にしてしまう…それの繰り返しだった。
やがて、家が見えてきた。
「あ、ここで大丈夫です」
門扉の前で振り返ると、ああ、と先輩も足を止める。
「あの…送っていただいて、有難うございました」
「いや、いい…」
頭を下げるオレに先輩が言いながら、少し考える素振りをみせた。
そしてふと、話題を振る。
「…直、明日は部活か?」
「あ、はい」
週二回ある料理部の部活の日だ。
思い出しながら頷くと、先輩は僅かに眉間の皺を寄せる。
「…オレは用事があるから、学校には行かれねえ」
「あ、そうなんですか…判りました、オレ一人で帰」
「駄目だ。行き帰りは送る」
間髪入れずに否定され、思わず言葉に詰まる。
「え、でも…わざわざそんな…」
か弱い女子生徒でもないのに…確かに強いとはお世辞でもいえないけれど…
オレの戸惑いを受けて、先輩が重い溜息を吐きながら口を開いた。
心なしか、その瞳が冷たくなった、気がした。
「――…最近、この辺りに雑魚がうろついてンだ。…うちの生徒も、何人かカモられてる」
「えっ!?」
不穏なその言葉に肩が跳ねる。そんなオレの反応を見て、先輩は益々不機嫌になったみたいだ。
「…だから、オレ達が片付けるまで一人で出歩くな。…分かったな?」
「は、はい…っ」
そんな話があるなんてちっとも知らなかった。
噂好きの順平辺りなら真っ先に飛びつきそうな話だけれど…先輩達グループの方が、情報は早いのだろうか。
そこまで考えて、二階堂君のことを思い出し――…オレは納得した。
(…でも…)
兎に角平穏無事であればいい、と思っていたけれど、今の先輩の言葉が引っかかってふと顔を上げる。
「…それって、先輩達が喧嘩をするっていうこと…ですよね?」
「ああ」
やっぱり…と考えて、なんだか胸の辺りがズキズキと疼くのが分かった。
先輩たちは凄く強いチームなのだと聞くし、自信がなければ簡単に片付けるとは言わないのだろう。
だけど…それでも…
「……怪我、しないでくださいね」
オレは堪らなくなって、口に出していた。
だって、嫌なんだ。
先輩には、傷ついて欲しくない。
嘉堵川先輩が珍しく、酷く驚いた顔をした。
「…直」
その表情のまま声を掛けられ、やっぱり失礼なことを言ってしまったのだと遅れて気付く。
「あ…っ、ご、ごめんなさい…っ」
(先輩…怒ったかな…)
しゅん、と項垂れたまま、顔を上げられなくなった。
次の瞬間。
オレの頭上に影が差し――強い力で引き寄せられていた。
大きな腕に抱きしめられている。
それを知ったのは、先輩のコロンの匂いが鼻腔を掠めたから。
(わ、わわわ…っ)
同じ男とは思えないほど、先輩の逞しい胸にすっぽりと収まってしまうオレの小さな身体。
それを考えただけで、制服越しに伝わってくる暖かい体温に、首筋にかかる先輩のさらさらの金髪に――触れてる全ての箇所に反応して、ばくばくと心臓が跳ね上がる。
「―――…っとに…」
先輩の声が、少し掠れている。それがまた色っぽくて、ぞくりとした。
「……お前には、適わないな…」
悔しそうな、それでいてどこか愉しそうな、その声色。
一体、今どんな顔をしているのだろう。窺えないのが、凄く勿体無い気がした。
だからオレは少しだけ距離を取ろうと、間に腕を入れる。
「か、嘉堵川せんぱ…」
けれどそれを拒むように、先輩の手が頭から頬へと移動して。
「……なあ」
その生まれたばかりの僅かな隙間を、埋めるように。
「――……名前、呼んでくんねえの……?」
暖かいものが、唇を塞いだ。
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