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オリジナルBL小説を扱ってます。 メインはLiebeシリーズ(不良×平凡)サブでCuadradoシリーズ(生徒会長×お調子者と親友たちの4角関係)も。pixivで漫画連載してます。更新情報はツイッターでどうぞ。
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「コイツら…Red Scorpionの幹部を倒せば、オレ達がこの街のトップだ…!」
鼓舞するようにリーダーが叫べば、周りの不良達が一斉に声を上げる。
その数は30人対3人で、あまりにも不利な状況だ。

だがしかし、篤也先輩達は全く焦る素振りも見せない。
それよりも先程のリーダーの男の放言がよほど頭に来たようで、前園先輩は両手をボキボキと鳴らし、桜橋先輩は蔑んだ視線を不良達に向けた。
「はあ?あー…もうマジ無理。本気でやっていい?総長」
「己の実力を知らないなんて…悲しいほど、愚かだね」

篤也先輩は黙って不良達を睨みつけていた。
その酷く静かな殺気が伝わり、空気が痛いほどに張り詰める。

そして…先輩が一言、引き金を引いた。


「―――やれ」


きっかけは、それで充分だった。

「やっちまえ!!」
不良達が様々な怒号を上げながら殴りかかる。
足音と鈍い音が交差し、さながら戦場のようだ。

「…っ」

不良同士の喧嘩など間近で見たことなどないオレは、ただその様子に息を呑む。
恐い。けれどそんな感情以上に心を占めるのは、先輩達のことで。
(どうか無事で…っ)

ぎゅ、と目を瞑り祈ることしか出来ない自分が、歯痒い。


と、急に呼吸が楽になった。
口を覆っていた布が取り払われたのだ。

見上げると、そこにはブレザーの学生が覗き込んでいた。

「二階堂くん!」
「山田君、ご無事ですか?」
ホッと息を吐いたのも束の間、彼の肩越しから不良が走ってくるのが見えた。

「てめえ、何やってんだ!?」
「あっ…二階堂くん!!」

今まさに鉄パイプを振り翳そうとするところで、オレは急いで叫ぶ。

鮮やかだった。
二階堂くんは自分へと振り下ろされたそれを掴むと、相手の勢いを利用しそのまま投げ飛ばしたのだった。
スピードがついていたこともあったのだろう、相手は廃材が積み重なっている山へとダイブした。

「――いい加減にしてくださいね」

少しずれたらしい眼鏡のブリッジを直す。
にこにこと笑っている印象が強い彼が無表情になると、途端に震えるほど冷たく変わる。

「こっちは裏を掻かれて山田君を攫われて――…ブチ切れているんですから」

(に、二階堂くん…)
丁寧な口調はそのままだけど、それが余計に恐く感じる。
今、凄く…彼が地区トップの不良チームの幹部をやっていることが、納得出来てしまったかもしれない…

彼が次にこちらを向いたときは、もういつもの調子だった。
「さ、縄は解けましたよ。立てますか?」
「う、うん…有難う」
いっそ清清しいまでの笑顔を浮かべてオレの縄をすぐに解いてくれた二階堂くんに、オレもつられてぎこちなく微笑む。
なんだか、ここが今まさに喧嘩をしている場所だということを忘れてしまいそうなくらいだ。
その証拠に、彼はオレの腕を引いて立たせてくれながら、のんびりと言い放った。

「少々お待ち下さいね。もうすぐに、終わりますから」


(…そう)
素人のオレでも、すぐに分かったんだ。
少し前まで、ここは確かに戦場だった。
けれど、状況は既に収束に向かっている。

ここに、圧倒的な力の差があったからだ。

前園先輩が繰り出す拳は目に見えないくらい速くて、飛んでいった不良は倒れてぴくりともしない。
こともなげにやってのけると、先輩は軽い調子で呟いた。

「14人目っと…優士はどー?」
人差し指をくるり、と回し尋ねる前園先輩に、殴り倒した不良の胸元を放した桜橋先輩が答える。
「僕は12人」
「やりー勝った~」
まるでゲームでもしているかのような会話だ。
粋がっているわけでも、強がっているわけでもなく。そして息が切れる様子もなく、2人は極々自然に軽口を交わしながら敵を倒していく。

「龍人、いつも言ってるだろう?こういうのは数じゃなくて、いかに相手をだね…」
「ヒイイッ…!!」

そんな会話を遮るような絶叫。
それはリーダー格のあの男のものだった。

見遣ると、すでに壁にまで追い詰められている男。
「オ、オレが悪かった…!許してくれ…っ!!」
先程までの威勢は何処へやら、へっぴり腰になって男が請う。

その相手は――


「ああ?」


頬についた血にも構わず…いや、気付いても居ないのかもしれない。
今の先輩は、オレの知っている先輩ではなかった。
あの、穏やかに見つめてくれる瞳は、触れればなんでも切ってしまいそうなほどに冷たく凍りつき。
頭を撫でてくれた大きな手は、誰のものか判らない血で、汚れていた。

嘉堵川篤也。
その名前が持つもう一つの響きを…オレはやっと本当の意味で、知ることになる。
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