オリジナルBL小説を扱ってます。
メインはLiebeシリーズ(不良×平凡)サブでCuadradoシリーズ(生徒会長×お調子者と親友たちの4角関係)も。pixivで漫画連載してます。更新情報はツイッターでどうぞ。
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「や、やっと解放された…」
よろり、と下駄箱で靴を履く。
部活仲間からの質問攻めから漸く自由になり、オレはやっと帰宅の途に付くことができた。
といっても、オレは終始のらりくらりと交わしていたのだけれど――そのうち下校時刻のチャイムが鳴ったことでやっと諦めてくれたのだった。
ただし、彼ら全員が納得してくれたかどうかは判らない。
(まあ…本当のことを言ったところで、信じてくれる筈もないのだけれど…)
一瞬考えて、ふ、と苦笑いを漏らす。
オレと嘉堵川先輩はどう見たっていじめられっこといじめっこ…パシリと主人、といったところだろう。
それが…
(うわっ…!ヤバイヤバイ!)
また昨日のことを思い出しそうになってしまい、慌ててぶんぶんと頭を振った。
熱くなりかけた耳を醒ましながら、校門まで歩く。
最終下校時刻を過ぎていることもあり、校庭もすっかり静かだ。
正門の壁に凭れ掛かりながら、オレは仕舞ったばかりのあるものを鞄から取り出した。
パンケーキは焦がしてしまったが、そのあとのクッキーは上手く焼くことが出来た。
食欲旺盛な皆に食べられないように残しておいた分を、袋に移しておいたのだ。
(先輩…喜んでくれるかな…?)
先輩達の好みも粗方把握できるようになってきた。
甘いものはあまり出したことはないのだけれど…確か、前園先輩は無類のスイーツ好き、桜橋先輩は和菓子が好き、嘉堵川先輩はさして得意ではない、らしい。
だから、このクッキーは砂糖を減らしてみたのだけれど…果たして先輩の口に合うだろうか。
(って、オレ…無意識に嘉堵川先輩に合わせてるし…)
はた、とその事実に気付き、ぎゅう、と袋の口を握る。
よろり、と下駄箱で靴を履く。
部活仲間からの質問攻めから漸く自由になり、オレはやっと帰宅の途に付くことができた。
といっても、オレは終始のらりくらりと交わしていたのだけれど――そのうち下校時刻のチャイムが鳴ったことでやっと諦めてくれたのだった。
ただし、彼ら全員が納得してくれたかどうかは判らない。
(まあ…本当のことを言ったところで、信じてくれる筈もないのだけれど…)
一瞬考えて、ふ、と苦笑いを漏らす。
オレと嘉堵川先輩はどう見たっていじめられっこといじめっこ…パシリと主人、といったところだろう。
それが…
(うわっ…!ヤバイヤバイ!)
また昨日のことを思い出しそうになってしまい、慌ててぶんぶんと頭を振った。
熱くなりかけた耳を醒ましながら、校門まで歩く。
最終下校時刻を過ぎていることもあり、校庭もすっかり静かだ。
正門の壁に凭れ掛かりながら、オレは仕舞ったばかりのあるものを鞄から取り出した。
パンケーキは焦がしてしまったが、そのあとのクッキーは上手く焼くことが出来た。
食欲旺盛な皆に食べられないように残しておいた分を、袋に移しておいたのだ。
(先輩…喜んでくれるかな…?)
先輩達の好みも粗方把握できるようになってきた。
甘いものはあまり出したことはないのだけれど…確か、前園先輩は無類のスイーツ好き、桜橋先輩は和菓子が好き、嘉堵川先輩はさして得意ではない、らしい。
だから、このクッキーは砂糖を減らしてみたのだけれど…果たして先輩の口に合うだろうか。
(って、オレ…無意識に嘉堵川先輩に合わせてるし…)
はた、とその事実に気付き、ぎゅう、と袋の口を握る。
「それにしても…先輩達遅いなあ…」
ちら、と時計を見遣る。
もう夏前の長い陽さえ、校舎の影を長く伸ばしている。
これまで、オレが帰るときには先輩はもう正門で待っていてくれていた。
(他の生徒は皆恐々と避けていたものだが)それがオレにとって、とても嬉しかったのだ。
逢魔が時、という言葉がふと思考を掠める。
だからだろうか、まるで心に隙間が開いたかのような寂しさが募るのは。
ただ遅れてしまっているだけなのかもしれない。すぐに来てくれるはず。
そう何度も言い聞かせるけれど…ぼんやりとした不安が真っ白い布にインクが染み込むようにじわじわと染み込んでくる気がするのは、どうしてだろう。
「…先輩…」
綺麗と言うよりは少し恐くなるくらい紅い夕焼けにぽつり、と溜息混じりに呟いた。
そのときだ。
ジャリ、という砂を踏む音が聞こえて、オレは勢いよく顔を上げた。
「せんぱ…っ」
言いかけた言葉が途切れる。
そこにいたのは、同じ学ラン姿の―――とはいっても、見たことも無い襟章をしている―――3人の男子学生だった。
一様ににやにやと、下卑た笑いを湛えている。
その真ん中の、両耳にいくつもピアスを開けたつり目がちの人が、徐に口を切った。
「ねえ、君さァ…」
「は、はい…?」
危険だ。
脳内で信号が送られて、オレは一歩後退りした。
先輩達のチームの人達でもない…こんなあからさまな嫌な雰囲気を纏っているのは、絶対違うと思う。
そうなれば、オレがこれまでよく遭遇していた不良に違いない訳で。
(どど、どうしよう…カツアゲとかされる?どうにかして逃げないと…)
校舎に逃げ込んでしまおう、と色々計画を張り巡らせる。
が、次の一言でオレは固まることになる。
「ひょっとして…君が、山田直クン?」
「え…」
なんで、オレの名前を?
「ああ、やっぱり?ちょーっと、来てもらいたいんだよねえ」
真っ白になったオレに、笑みを深めた不良達が近付いてくる。
やめて下さい、と叫ぼうとして、腹に熱い塊をぶつけられたように激痛が走って――
ああ殴られたのか、と知ったときには、意識が途切れていた。
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