オリジナルBL小説を扱ってます。
メインはLiebeシリーズ(不良×平凡)サブでCuadradoシリーズ(生徒会長×お調子者と親友たちの4角関係)も。pixivで漫画連載してます。更新情報はツイッターでどうぞ。
- 12/02 初夏の嵐(6)
- 10/13 初夏の嵐(5)
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- 09/16 fragile (51) Side: 翼 最終回
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「あーつまんなーい!」
吐き捨てるように言うと、前園は地面の小石を蹴飛ばした。
両腕を頭の後ろで組みながら溜息を吐く。
「なにアイツらー超激弱だったんですけどー」
相変わらず間延びしたような言い方だが、その中に隠せない苛立ちが紛れていた。
それを汲み取った桜橋が、引き継ぐように口を開く。
「粗方片付けたけど、肝心のリーダーが見つからないね」
「ええ。この近くにいるのは確かなんですが…」
二階堂が携帯を操作しながら頷く。
彼らRed Scorpionは、数日前から最近縄張り内を荒らしているグループの退治に乗り出していた。
本来ならば部下たちに任してもいいような仕事だったが、総長自身がやると言い出したために幹部も続いている。
それというのも、一抹の不安が胸を過ぎっていたからだった。
(…まだ、知られてねえみたいだけどな…)
一人先頭を歩きながら、眉間の皺を刻む。
参謀が齎した情報はいつでも確実だ。だからこそ、急がねばならない。
最悪の事態を避けるためにも。
目を瞑ると直ぐに浮かぶのは――心配そうにこちらを見上げた、その顔。
『怪我、しないでくださいね』
(―――…直…)
柔らかい声色が紡ぐのは、いつだって誰かを気遣う言葉で。
こんな不良に向かってそんな優しいこと言うのは――…お前だけだ。
暫く歩いていると、やがて月峰高校の正門が見えてきた。
自然と歩調が速くなるのは、一刻も早くその姿を視界に収めて安心したいから。
今日は部活と言っていたが、徐々に薄暗くなってきたこの時間ではもうそれも終わっているだろう。
待たせているかもしれないと思うと、余計に焦りが生まれた。
だが、そこに彼の姿はなかった。
吐き捨てるように言うと、前園は地面の小石を蹴飛ばした。
両腕を頭の後ろで組みながら溜息を吐く。
「なにアイツらー超激弱だったんですけどー」
相変わらず間延びしたような言い方だが、その中に隠せない苛立ちが紛れていた。
それを汲み取った桜橋が、引き継ぐように口を開く。
「粗方片付けたけど、肝心のリーダーが見つからないね」
「ええ。この近くにいるのは確かなんですが…」
二階堂が携帯を操作しながら頷く。
彼らRed Scorpionは、数日前から最近縄張り内を荒らしているグループの退治に乗り出していた。
本来ならば部下たちに任してもいいような仕事だったが、総長自身がやると言い出したために幹部も続いている。
それというのも、一抹の不安が胸を過ぎっていたからだった。
(…まだ、知られてねえみたいだけどな…)
一人先頭を歩きながら、眉間の皺を刻む。
参謀が齎した情報はいつでも確実だ。だからこそ、急がねばならない。
最悪の事態を避けるためにも。
目を瞑ると直ぐに浮かぶのは――心配そうにこちらを見上げた、その顔。
『怪我、しないでくださいね』
(―――…直…)
柔らかい声色が紡ぐのは、いつだって誰かを気遣う言葉で。
こんな不良に向かってそんな優しいこと言うのは――…お前だけだ。
暫く歩いていると、やがて月峰高校の正門が見えてきた。
自然と歩調が速くなるのは、一刻も早くその姿を視界に収めて安心したいから。
今日は部活と言っていたが、徐々に薄暗くなってきたこの時間ではもうそれも終わっているだろう。
待たせているかもしれないと思うと、余計に焦りが生まれた。
だが、そこに彼の姿はなかった。
「…直?」
まだ学校内に残っているのだろうかとも思ったが、校舎からは教師が生徒に早く帰るよう急かす声が聞こえる。
彼が怒られるまでそこにいるとも考えにくく、残っているとしたらここが一番可能性があるような気がした。
携帯に掛けるか、と思いながらふと地面に目線を落とし、息を詰めた。
「あれー?直クンいないのー?」
後ろから追いついてきた前園が、きょろきょろと辺りを見渡す。
隣の桜橋は、固まったままの嘉堵川に声を掛ける。
「篤也…?どうかしたの?」
嘉堵川は地面に落ちていたものを拾い上げた。
認めたくは無かった。
だが、これは…
後悔とまだどこか混乱している思考で、ゆっくりと口を開く。
「…これは、直の携帯だ」
「!」
それだけで2人には全てが伝わったようだ。
その顔が一気に張り詰める。
地面に打ち付けられ、ヒビの入った携帯電話。
彼がお気に入りなんですと照れくさそうに言っていた、猫のストラップ。
落としたらしい袋から飛び出したクッキーは踏まれ、粉々になっていた。
そのとき、二階堂の携帯が震えた。
出た彼が、何時になく取り乱した声を上げる。
それから2,3言電話の向こうの部下に指示を出すと、低く沈んだ声で報告をあげた。
恐れていた、悪夢のようなそれだった。
「――…総長…リーダーほか数人の男に山田君が連れ去られるところが、目撃…されたそうです」
ぎり、と手のひらが白くなるまで握り締める。
そうでもしないと、怒りに任せて何をするか判らなくなりそうだった。
『嘉堵川先輩』
うんと高い自分を懸命に見上げて、笑う。
あの笑顔を消しはしない。そんなことはさせない、絶対に。
一度、深く息を吸って、吐く。
「……場所は…」
「…っ、すぐに出します!」
彼の低音に弾かれるように二階堂がパソコンを開く。
「…許さねえ…」
「…篤也」
2人も、ごくりと唾を飲み込んだ。
背中を向けたままだが、総長がどんな表情なのかは手に取るように解る。
そして同時に、馬鹿なことをした敵をどこか哀れにも思えた。
あいつ等は、一番してはいけないことをしたのだ、と。
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