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オリジナルBL小説を扱ってます。 メインはLiebeシリーズ(不良×平凡)サブでCuadradoシリーズ(生徒会長×お調子者と親友たちの4角関係)も。pixivで漫画連載してます。更新情報はツイッターでどうぞ。
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「……」
「……」

ここまで気まずい沈黙が今まであっただろうか。
そう尋ねられたら、オレは全力で首を横に振るだろう。

放課後、まあ大方の予想を裏切ることなく、先輩が迎えに来て。
こうして嘉堵川先輩と2人、帰路についているのだけれど。
(か、会話がない……)

前園先輩達がいてくれたら――勿論恐いのだけれど――違ったのかもしれないが、折角なので2人きりでごゆっくり、と有り難くもない気遣いをされてしまった。

オレはちら、と横目で先輩を見遣る。
黙々と歩く先輩は、怒っているのかつまらないのか、読み取れない。

(ど、どうしよう…)
なにをすべきかも判らないけれどずっとこのままなのか、と辛くなってきたときだった。
にゃあ、という、とても可愛い鳴き声がオレの耳に飛び込んできたのは。

「!」
ぴくん、とそれに過剰に反応して、辺りをきょろきょろと見渡す。
するとなんと、ビルの隙間から白い猫がこちらへと近寄ってくるではないか。

「わあっ!」
一瞬にして意識はそちらに向かってしまい、オレはまっしぐらに駆けた。
しゃがんで話しかけても、猫は逃げるどころから擦り寄ってくる。
たまらなく可愛い。文句無く可愛い。
「おお、お前人懐っこいなあ~よしよし、抱っこしちゃうぞー」

一気にオレのテンションは最高潮になり、抱き上げてその柔らかな毛並みを堪能する。
ああ、癒される……

「ふわふわだなーうーん、可愛いー…」
「…猫、好きなのか」
「はい、可愛いですよねっ!!」
力強くそう言いきったオレが振り返ると、そこには無表情の先輩が見下ろしていた。
(…ってうわあ!わわ、忘れてた!オレ今先輩と居たんだ…っ!)

動物を目の前ににすると、つい我を忘れてしまうのが悪い癖だ。
今だって、先輩を放置してしまった。

「ごご、ごめんなさい!オオ、オレ、動物が大好きで、この前も捨てられた猫を放って置けなくて、飼っちゃうくらいで、その…っ」
最早何を言っているのかも良く分からない。
聞かれても居ないことを捲し立てて、オレはなんとか謝罪しようと必死になった。
(はしゃいでてウゼーとか思われたよね、絶対…っ!)

そんなオレを見つめて、先輩はふ、と小さく、口端を持ち上げた。
「…いや…」
そして、オレの腕に抱かれている猫を大きな手で優しく撫でる。


「……知ってる」


「…え…?」
知ってる?
知ってるって…何を?

オレの疑問は言葉にならなかった。
それを遮るかのように、大きな声が飛んできたのだ。

「あーっ、篤也っ!!」


人並みを掻き分けてやってきたのは、茶髪を肩まで伸ばした女子高生だった。
メイクもばっちりで、瞬きをするたびに長い睫毛は音がしそうだ。
制服のシャツも第二ボタンまで外して、手先には真っ赤なネイル。
所謂ギャルという格好だ。
他校の生徒なのだろうが、そもそもこんな派手な女子とは話したことも無いチキンなオレは格好だけで少しビビってしまった。

「篤也っ!ちょー久々っ」
そして彼女もオレなんて視界に入ってすらいないようで、思い切り押しのけると、先輩に抱きつかんばかりに密着した。
「も~最近連絡ないんだもんっ!ユキ、ちょー寂しかったんだからあ」

(…この人、先輩の彼女さんなのかな…?)
あまりに親しげな様子に、オレは2,3歩後退する。
彼女も綺麗な人で、先輩とよくお似合いだ。
どうみたってオレ1人が浮いているだろう。

「ねえー、篤也今日暇?このままデートしようよ~」

女性のその言葉に、やっぱり、と目を瞑る。
別に先輩に彼女がいたってなんら不思議はない。寧ろオレなんかと付き合うほうがよっぽど可笑しいのだ。
(…やっぱりオレ、からかわれてたのかな)

こんな平凡男子と付き合うなんて、罰ゲームかなにかだったのだろう。
前園先輩達もあんなに当たり前のように受け入れてくれてたのも、そのゲームを知っていたからで…


「ああ?誰だ、お前」

どんどんと悪い方向に考え出していたオレの思考がそこで止まった。
「へ?」
「ひっどーい!その冗談笑えないんですけど!」
先輩の一言に憤慨した彼女が自分を指差しながら詰め寄る。
「私よ、三島ユキ!他の子とは違ってユキとは何度も寝てくれたじゃん!」
「んなモンいちいち覚えてねえよ」
「何それ…っ」

吐き捨てるように言われ、ユキさんの眉がつりあがった。
キツめのメイクをしているから、怒るとさらに迫力がある。
ひそかに怯えていたオレの肝をさらに潰したのは、そんな彼女を黙らせた先輩だ。
「ウゼエ。――馴れ馴れしく話しかけんな、消えろ」
「…っ!」

怒鳴るような激しさはない。けれど、まるで氷のように冷たい拒絶だった。
彼女もこれには恐怖を覚えたようで、一歩後ろへ下がる。

「直、行くぞ」
先輩は何事もなく振り返ると、オレの肩を押した。
「は、はい…」
条件反射のように何度も頷き、慌てて先輩についていった。


だから、気がつかなかった。
このとき、残されたユキさんが物凄い形相でオレを睨みつけていたことに。


「……なに…あの、チビ…っ」
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