オリジナルBL小説を扱ってます。
メインはLiebeシリーズ(不良×平凡)サブでCuadradoシリーズ(生徒会長×お調子者と親友たちの4角関係)も。pixivで漫画連載してます。更新情報はツイッターでどうぞ。
- 12/02 初夏の嵐(6)
- 10/13 初夏の嵐(5)
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- 09/16 fragile (51) Side: 翼 最終回
- 09/08 fragile (50) Side: 俊&巧
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(…大人気なかったか)
頂点に上った太陽が照らす、帰り道。
隣でいつものように色んな話をする聖人を横目に、オレは少し反省していた。
帰ってしまうコイツを見た途端、頭で考えるよりも先に声を掛けていた。
テストが始まってから、ろくに話もしていなかった。
それが思った以上にオレの中でストレスになっていたようで、テスト中も殆ど集中出来ない始末だった。
まあ点の方は心配は無いが、それよりも大事なのはこいつのことで。
聖人が、オレと距離を取るんじゃないか。
そう考えただけで、堪らなかった。
どうやらこいつの存在は、オレの考えるよりもずっとずっと――心の深くに根付いているらしい。
これが他の誰かだったなら、きっと何にも思わない。
オレは結構酷い奴だから、近付いてくる人間にも関心がないし、離れていく人間は追いかけたりしない。
(俊にも、フォローしとかないとな…)
2人で帰るとはっきり言ってしまったから、怪訝に思ったことだろう。
俊はいい奴だから傷つけるのは本位ではなし、明日適当に誤魔化しておこう。
「お」
ぐるり、と思考が一周したところで、一通り話し終えた聖人が声をあげた。
何事かと思ってみれば、こいつが好きでよく利用している駅前のコンビニが見えていた。
と、なれば。次に言うことは決まっている。
聖人はこちらを向くと、まるでおやつを待っている子犬のようにきらきらした眼差しで続けた。
「なあ翼、オレアイス食べたい!」
ほら、やっぱりだ。
頂点に上った太陽が照らす、帰り道。
隣でいつものように色んな話をする聖人を横目に、オレは少し反省していた。
帰ってしまうコイツを見た途端、頭で考えるよりも先に声を掛けていた。
テストが始まってから、ろくに話もしていなかった。
それが思った以上にオレの中でストレスになっていたようで、テスト中も殆ど集中出来ない始末だった。
まあ点の方は心配は無いが、それよりも大事なのはこいつのことで。
聖人が、オレと距離を取るんじゃないか。
そう考えただけで、堪らなかった。
どうやらこいつの存在は、オレの考えるよりもずっとずっと――心の深くに根付いているらしい。
これが他の誰かだったなら、きっと何にも思わない。
オレは結構酷い奴だから、近付いてくる人間にも関心がないし、離れていく人間は追いかけたりしない。
(俊にも、フォローしとかないとな…)
2人で帰るとはっきり言ってしまったから、怪訝に思ったことだろう。
俊はいい奴だから傷つけるのは本位ではなし、明日適当に誤魔化しておこう。
「お」
ぐるり、と思考が一周したところで、一通り話し終えた聖人が声をあげた。
何事かと思ってみれば、こいつが好きでよく利用している駅前のコンビニが見えていた。
と、なれば。次に言うことは決まっている。
聖人はこちらを向くと、まるでおやつを待っている子犬のようにきらきらした眼差しで続けた。
「なあ翼、オレアイス食べたい!」
ほら、やっぱりだ。
「いらっしゃいませえー」
まるでやる気の見えないバイトのコンビニ店員の挨拶を聞き流しながら、店内へと滑り込む。
昼下がりの店は立ち読みをしている若い男以外は客もいなくて、流行の音楽だけが軽快に流れていた。
聖人は真っ直ぐアイスの方へと向かう。
オレは喉の渇きを覚え、飲料の棚へ歩いていった。
いつも買っているメーカーの緑茶よりも安い新商品を見かけ、一瞬迷ったがそちらを手に取った。
「決まったか?」
「うーん、どうすっかなあ…」
聖人はやたら真剣な顔でアイスを選んでいた。
大方いつものチョコアイスか新商品といったところだろう。
視線がうろうろと二つを見比べていたから、オレは片方を指差した。
「これ、人気ありすぎて生産中止なんだってよ」
「マジで!じゃあ貴重じゃん!これにするっ」
オレの一言は決定打には十分だったようだ。
「ありがとー!オレこれ買い逃してたら、めっちゃ後悔してたかも」
「…大袈裟」
嬉しそうに数少なくなっていたアイスを手にとってご満悦のその表情に、可笑しくて噴出してしまった。
2人のをまとめて買って、コンビニを出る。
流石にアイスを持ったまま電車に乗るわけにはいかないので、コンビニの外で立ったまま食べることにする。
(暑い…)
キャップを捻り、一気に3分の2ほど飲む。
味は中々だな、と思うオレの隣で、聖人がアイスに齧りついていた。
「おお、うまっ」
「よかったな」
「お前のそれも、新しいヤツだよな?一口頂戴!」
「はいはい」
そうくると思った、とペットボトルを渡せば、じゃあ、と聖人はアイスを差し出す。
「オレのも食べさせてやろう!」
「なんでそんなに偉そうなんだよ」
言い方に呆れながらも、齧った跡のあるアイスを見つめる。
(…間接キス)
中学のときから、幾度となくやってることだ、けど。
年々、その意味がオレの中で強くなっている。
…勿論、こいつにとっては何の意味も無いのだろうが。
「あ、これ美味い」
ペットボトルを一口呷り、聖人が呟く。
その濡れた唇がいやに情欲をそそって、無意識に唾を飲み込んだ。
(…いいよな、これくらい)
想いを伝えることは無いのだ。
これから先も、永遠にオレ達は悪友なんだ。
…だから…許して、欲しい。
心の中でそっと謝りながら齧ったアイスは、やたら甘かった。
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