オリジナルBL小説を扱ってます。
メインはLiebeシリーズ(不良×平凡)サブでCuadradoシリーズ(生徒会長×お調子者と親友たちの4角関係)も。pixivで漫画連載してます。更新情報はツイッターでどうぞ。
- 12/02 初夏の嵐(6)
- 10/13 初夏の嵐(5)
- 10/09 【お知らせ】コメント欄について。
- 09/16 fragile (51) Side: 翼 最終回
- 09/08 fragile (50) Side: 俊&巧
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「ここだよ、ここ」
数歩前を歩いていた聖人くんが立ち止まる。
僕は無意識に止めていた息をそっと吐き出した。
放課後ということと、ここが特に一般の生徒も近寄らないということもあって、学校の中でも酷く静かな一角。
ここに掛けられているプレートが、その厳かな雰囲気を醸しだしているのかもしれない。
事実、僕もちょっと緊張しているくらいだ。
けれど、聖人くんは変わらない。
中に居るのが自分の友達だからだろうか、その普段の振る舞いが羨ましく映る。
「んじゃ、入ろっか」
まるで鼻歌でも歌いだしそうな調子で僕にそう声を掛けると、迷うこともなく扉を開けた。
「よーっす!」
その声に、中にいた役員が2人、顔をこちらに向ける。
いつものように無表情な西園寺くんと、そして眼鏡を掛けた…翼だ。
「お前なあ…ノックくらいしたらどうだ」
「あれ?今してなかったっけ?ごめんごめん」
「ったく…もうオレ達しかいないからいいけどな…」
呆れて溜息を吐いた翼が、読んでいた書類を机に置いた。
僕達の登場で集中力が切れたらしい。
休む態勢に入ったのだろう、西園寺くんも立ち上がる。
今日は放課後、生徒会室にいる翼に会いに来た。
尤もそれは聖人くんの用事だったのだけれど、僕も行きたいと我侭を言ったのだ。
彼が快く了承してくれたので、こうして教室以外の、普段では入室できない場所にまで来ている。
「あ、皆帰ったんだ」
「ああ、だから自由に座ってくれ」
「おう!ありがと、巧」
コーヒーの置いてある給湯室へ向かうその背中に声を掛けた聖人くんが、翼の右隣に腰を降ろす。
僕は自然を装い、反対側に座ることにした。
丁度西園寺くんが座っていた席の二つ隣だ。
「あの、ごめんね翼…仕事の邪魔、しちゃったよね」
彼に行くことは伝えてあったとはいえ、困らせてしまったかなと思い翼にそっと声を掛ける。
すると眼鏡を外しながら、彼はにこり、と微笑んだ。
「ああ…いいんだ。どうせ、そろそろ休憩しようと思ってたところだから」
「そう、なんだ?」
「ああ。だから俊が気にすることじゃないから、な」
「っ」
笑顔を讃えたまま、翼にそっと頭を撫でられる。
大きなそれに初めて触れられ、どきりと心臓が大きく音を立てた。
(どうしよう、顔真っ赤だよ…)
数歩前を歩いていた聖人くんが立ち止まる。
僕は無意識に止めていた息をそっと吐き出した。
放課後ということと、ここが特に一般の生徒も近寄らないということもあって、学校の中でも酷く静かな一角。
ここに掛けられているプレートが、その厳かな雰囲気を醸しだしているのかもしれない。
事実、僕もちょっと緊張しているくらいだ。
けれど、聖人くんは変わらない。
中に居るのが自分の友達だからだろうか、その普段の振る舞いが羨ましく映る。
「んじゃ、入ろっか」
まるで鼻歌でも歌いだしそうな調子で僕にそう声を掛けると、迷うこともなく扉を開けた。
「よーっす!」
その声に、中にいた役員が2人、顔をこちらに向ける。
いつものように無表情な西園寺くんと、そして眼鏡を掛けた…翼だ。
「お前なあ…ノックくらいしたらどうだ」
「あれ?今してなかったっけ?ごめんごめん」
「ったく…もうオレ達しかいないからいいけどな…」
呆れて溜息を吐いた翼が、読んでいた書類を机に置いた。
僕達の登場で集中力が切れたらしい。
休む態勢に入ったのだろう、西園寺くんも立ち上がる。
今日は放課後、生徒会室にいる翼に会いに来た。
尤もそれは聖人くんの用事だったのだけれど、僕も行きたいと我侭を言ったのだ。
彼が快く了承してくれたので、こうして教室以外の、普段では入室できない場所にまで来ている。
「あ、皆帰ったんだ」
「ああ、だから自由に座ってくれ」
「おう!ありがと、巧」
コーヒーの置いてある給湯室へ向かうその背中に声を掛けた聖人くんが、翼の右隣に腰を降ろす。
僕は自然を装い、反対側に座ることにした。
丁度西園寺くんが座っていた席の二つ隣だ。
「あの、ごめんね翼…仕事の邪魔、しちゃったよね」
彼に行くことは伝えてあったとはいえ、困らせてしまったかなと思い翼にそっと声を掛ける。
すると眼鏡を外しながら、彼はにこり、と微笑んだ。
「ああ…いいんだ。どうせ、そろそろ休憩しようと思ってたところだから」
「そう、なんだ?」
「ああ。だから俊が気にすることじゃないから、な」
「っ」
笑顔を讃えたまま、翼にそっと頭を撫でられる。
大きなそれに初めて触れられ、どきりと心臓が大きく音を立てた。
(どうしよう、顔真っ赤だよ…)
「ほら」
「おおーサンキュ、巧」
俯いているうちに、給湯室から西園寺くんが戻ってきた。
両手には二つのマグカップを持ち、その一つを聖人くんの前へと置く。
そしてもうひとつを僕へと渡してくれた。
「有難う、西園寺くん」
「これこれ、生徒会室のコーヒーって美味いんだよな~」
聖人くんの言うとおり、マグカップからは香ばしい香りが立ち込めていた。
「本当だ、いい匂い…これって誰の好みなの?」
「殆どオレかな?一番よく飲んでるからな」
(翼ってコーヒー好きなんだ)
飲み掛けのカップを持ちながら小さく笑う彼に、また新しい好みを知ることが出来たと内心喜ぶ。
教室ではまず見ることの出来ない姿はやっぱり新鮮で、ついつい横目で追ってしまう。
書類を捲る長い指。レンズ越しの真剣な眼差し。
時折考えるように顎に手をかける、その仕草。
と、彼が弾かれたように顔を上げる。
それとほぼ同時に、短い悲鳴が上がった。
「あっつ…!」
「バカ、大丈夫か?」
それはほんの数秒の間の出来事だった。
コーヒーを飲んで口内を火傷したらしい聖人くんに、慌てて翼が立ち上がる。
僕は事態を把握するまでに時間がかかり、西園寺くんも腰を浮かせたものの彼より素早く反応は出来なかったようだ。
翼は焦ったように聖人くんの顔を覗きこむと、顎を掬い口を開かせる。
「あ…あふい…」
「火傷は大したことなさそうだな…」
中を覗き込みながら、翼がほ、と息を吐く。
「ったく…お前猫舌なんだから、もっとゆっくり飲めって言ってるだろ?」
「わわってるけどお…」
「はは、なんつってるか分かんねえよ」
ころころと可笑しそうに笑いながら、翼が彼の頬を何度も撫でた。
先ほどまで僕に向けてくれた笑みとは、また違う種類のそれ。
「うー…ひりひりする…」
「しょうがねえなあ…次から気をつけろよ?」
「うん…」
(……なんか…)
なんだろう、心に少し引っかかるものを感じてしまう。
…気にしすぎ、なのかな。
「……仲、いいなあ…」
「…本当だな」
「!」
なんだか寂しくて小さく呟いた言葉に同調され、僕は慌てて振り返った。
隣に居た西園寺くんも彼らをじっと、見つめていた。
「おおーサンキュ、巧」
俯いているうちに、給湯室から西園寺くんが戻ってきた。
両手には二つのマグカップを持ち、その一つを聖人くんの前へと置く。
そしてもうひとつを僕へと渡してくれた。
「有難う、西園寺くん」
「これこれ、生徒会室のコーヒーって美味いんだよな~」
聖人くんの言うとおり、マグカップからは香ばしい香りが立ち込めていた。
「本当だ、いい匂い…これって誰の好みなの?」
「殆どオレかな?一番よく飲んでるからな」
(翼ってコーヒー好きなんだ)
飲み掛けのカップを持ちながら小さく笑う彼に、また新しい好みを知ることが出来たと内心喜ぶ。
教室ではまず見ることの出来ない姿はやっぱり新鮮で、ついつい横目で追ってしまう。
書類を捲る長い指。レンズ越しの真剣な眼差し。
時折考えるように顎に手をかける、その仕草。
と、彼が弾かれたように顔を上げる。
それとほぼ同時に、短い悲鳴が上がった。
「あっつ…!」
「バカ、大丈夫か?」
それはほんの数秒の間の出来事だった。
コーヒーを飲んで口内を火傷したらしい聖人くんに、慌てて翼が立ち上がる。
僕は事態を把握するまでに時間がかかり、西園寺くんも腰を浮かせたものの彼より素早く反応は出来なかったようだ。
翼は焦ったように聖人くんの顔を覗きこむと、顎を掬い口を開かせる。
「あ…あふい…」
「火傷は大したことなさそうだな…」
中を覗き込みながら、翼がほ、と息を吐く。
「ったく…お前猫舌なんだから、もっとゆっくり飲めって言ってるだろ?」
「わわってるけどお…」
「はは、なんつってるか分かんねえよ」
ころころと可笑しそうに笑いながら、翼が彼の頬を何度も撫でた。
先ほどまで僕に向けてくれた笑みとは、また違う種類のそれ。
「うー…ひりひりする…」
「しょうがねえなあ…次から気をつけろよ?」
「うん…」
(……なんか…)
なんだろう、心に少し引っかかるものを感じてしまう。
…気にしすぎ、なのかな。
「……仲、いいなあ…」
「…本当だな」
「!」
なんだか寂しくて小さく呟いた言葉に同調され、僕は慌てて振り返った。
隣に居た西園寺くんも彼らをじっと、見つめていた。
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