オリジナルBL小説を扱ってます。
メインはLiebeシリーズ(不良×平凡)サブでCuadradoシリーズ(生徒会長×お調子者と親友たちの4角関係)も。pixivで漫画連載してます。更新情報はツイッターでどうぞ。
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- 10/13 初夏の嵐(5)
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- 09/16 fragile (51) Side: 翼 最終回
- 09/08 fragile (50) Side: 俊&巧
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放課後のがらんとした教室。
熱心な野球部の声がずっと遠くから響いて、ここだけ隔離された空間のようだ。
薄っぺらい学生鞄と、机に入れたままの教科書たち。
随分前から帰る準備のまま、オレは動けずにいた。
(あー…部活行かなきゃ…シバっちに怒られる…)
今日は練習試合形式でやるといっていたから、オレが来なくてさぞお怒りだろう。
顧問の姿を思い浮かべて苦笑が漏れるが、それも思うだけで。
どうやらオレはこんなにショックを受けてしまうほど、昨日のことを引きずっているようだ。
放課後になり漸く張り詰めていた糸が切れたようで、どっと感情の波が押し寄せてくる。
昨日の日曜日、翼は約束通りたこ焼きを奢ってくれた。
が、2人だけではない。
そこには、俊と、巧も一緒だった。
『よかったら、俊も来るか?』
あいつが言ったとき、オレは最初言葉の意味が理解出来なかった。
俊もって。だってこれは、オレとの約束で。
2人だけの約束の筈で―――
『本当?うん、僕も行くよ!』
嬉しそうにはしゃぐ俊を前にして、そんなことが言えるだろうか。
熱心な野球部の声がずっと遠くから響いて、ここだけ隔離された空間のようだ。
薄っぺらい学生鞄と、机に入れたままの教科書たち。
随分前から帰る準備のまま、オレは動けずにいた。
(あー…部活行かなきゃ…シバっちに怒られる…)
今日は練習試合形式でやるといっていたから、オレが来なくてさぞお怒りだろう。
顧問の姿を思い浮かべて苦笑が漏れるが、それも思うだけで。
どうやらオレはこんなにショックを受けてしまうほど、昨日のことを引きずっているようだ。
放課後になり漸く張り詰めていた糸が切れたようで、どっと感情の波が押し寄せてくる。
昨日の日曜日、翼は約束通りたこ焼きを奢ってくれた。
が、2人だけではない。
そこには、俊と、巧も一緒だった。
『よかったら、俊も来るか?』
あいつが言ったとき、オレは最初言葉の意味が理解出来なかった。
俊もって。だってこれは、オレとの約束で。
2人だけの約束の筈で―――
『本当?うん、僕も行くよ!』
嬉しそうにはしゃぐ俊を前にして、そんなことが言えるだろうか。
『マジで、やったね!休日に俊に会えるなんてラッキー!』
表情筋と声帯をフル稼働して、オレは思い切り派手に喜んで見せた。
そして黙ったままの巧に、そうだと振り向く。
『巧は用事ある?お前も行かない?』
『……そう、だな。俺も行こう』
テンションの高いオレに苦笑したあと、巧はゆっくりと頷いて。
こうして4人で、出かけることになった。
深い溜息を吐いて、鞄を広げたままの机に突っ伏する。
枕代わりの腕に、雫がぽつり、と落ちた。
「友達と遊ぶだけじゃん……」
分かってる。友達同士で遊ぶだけの、極普通の用事だ。
こんなことでショックを受けているのが、可笑しいのだ。
でも、これが他の友達だったら――きっと、こんなことで悩んだりはしない。
「オレ…嫌われてンのかな…」
あ、駄目だ。泣けてくる。
自分で言った言葉に酷く傷ついて、じわりと涙腺を刺激する。
最近翼が俊を一緒に誘うのは、オレと居たくないからなのかな。
オレが嫌いになったから、なのかな。
飛躍しすぎな思考だとは分かっていても、その可能性は捨てきれない。
迷惑ばかり掛けてきたオレは、いつ愛想を付かされてもおかしくない、から。
「聖人?」
「!」
突然名前を呼ばれ、驚いて顔を上げる。
強く目を押し付けた為にぼんやりとした歪んだ視界に、長身の人が立っていた。
一瞬翼に見えて、でも髪を後ろに撫で付けたその髪型に、ああ違うと思い知る。
オレは手で乱暴に涙を拭って、笑顔を作った。
「巧じゃん、お前どうしたの?部活は?」
「忘れ物を取りに戻ってきたんだが…お前こそ、部活があるだろう」
言いながら巧が近付いてくる。
気まずさもあって、オレは顔を背けると鞄に教科書を仕舞い始めた。
「ついつい寝ちまって…もう試合やってた?」
「ああ、お前を探してたぞ」
「やば!早く行かないと…!」
「聖人」
急に静かな声で名前を呼ばれる。
「ん?」
いつものオレを繕いながら、巧の顔を見上げる。
視線が絡む。
深海のような黒い瞳が、真っ直ぐオレを捉えていた。
無表情な巧の唇が小さく動いた。
しかし言葉にはならず、すぐに閉ざされる。
「…いや、なんでもない」
「そ?早く行こうぜ~」
追求されなかったことに安堵しながら、オレは先に教室を出た。
だから気付かなかった。
巧が、じっとその背中を見つめていたことを。
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