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オリジナルBL小説を扱ってます。 メインはLiebeシリーズ(不良×平凡)サブでCuadradoシリーズ(生徒会長×お調子者と親友たちの4角関係)も。pixivで漫画連載してます。更新情報はツイッターでどうぞ。
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桜の花弁はとうに散って、緑の色が濃くなる時期を迎えていた。


「あー…ったく、うちの担任って人使い荒いよなあ~」
オレはぶつくさと文句を言いながら、閑散とした廊下を歩いていた。


数十分前。
放課後珍しく部活の無かったオレが、翼と久しぶりにこのまま遊びに行こうと話をしていたときだ。
『あー悪い。そこの2人…いやどっちかで構わんから、この荷物を運ぶの手伝ってくれ』
そう声を掛けてきたのは担任で、オレ達は咄嗟に顔を見合わせた。
別に頼まれごとが嫌というわけではなかったけれど、どっちかと言われ少々困ったからだった。

しかしそう切り出した当の本人が、やっぱり、とすぐさま訂正をした。
『進藤、お前が手伝ってくれ。堂本は生徒会で忙しいだろうしな』
『ちょ、なんスかそれ!』
まるでオレが暇だといわんばかりの台詞に、咄嗟に噛み付く。
翼が昨年の秋に行った生徒会選挙で選ばれ、今生徒会長として忙しく動き回っているのは確かだ。
だがオレだって運動量ではかなりキツい部類に入るバスケ部で毎日青春しているっていうのに、その扱いはないんじゃないか。
(しかもちゃんとレギュラーなんですけども!)

オレの反論に小さく口端を持ち上げた翼は、(ちょっとイラッとくる仕草だ)肩をわざとらしく叩いた。
『だ、そうだ。お前なら体力あるだろ、余計に』
『余計は余計だっつの!』
1年の頃から帰宅部だった翼だが、決してひ弱なわけではない。
それどこかそれなりに良い身体をしているし、運動しないのは勿体無いくらいで…って、オレは変態か。

そんな脳内突っ込みなんて勿論聞こえる筈もなく、さっさと先に行ってしまった担任が首だけ振り返って呼んでくる。
『あーほらいいから。ついてこい進藤』
『…へーい』
仕方なしに大量のノートを両手で持ち上げ、そのあとを追った。

『翼、お前待ってろよ!』
『分かってるよ。ちゃんと待っててやるから』

ひらひらと手を振る翼の黒髪が開け放しの窓から吹く風に靡いて、それだけで十分サマになっていて。
まだ教室に残っていた幾人の女子生徒が、そんな奴の姿に見蕩れているのが目の端に映ってしまった。
つくづく世の中不公平だよな…!



用事はすぐに終わると思っていたのだけれど、そのあと教師の雑用まで手伝う羽目になり、やっと解放されたの時にはもう数十分経っていて。
オレはやや急ぎ足で教室に戻っていた。
翼のことだから怒りもしないだろうし待ってくれているとは思ったけれど、やっぱり悪い。

もう部活の無い生徒の大半は帰っているだろう。
大分時間はロスしてしまったが、オレ達もゲーセンかファーストフードに寄る予定なのだ。
階段を登り、角を曲がれば、教室はすぐそこだ。
2年3組のプレートが目に入り、少し安堵しながら扉に手をかけようと伸ばした。

と、中から話し声が聞こえた。


(え…)

誰か居る?
些か驚きながら扉を開ける。
その音に気づいて顔を上げたのは、翼と――

「あ、お帰り、聖人くん」
「……俊?」

あまりに意外でぱちくりと瞬きするオレに、天使のような笑顔が向けられる。
「あれ?俊まだ残ってたのか?」
「図書館に居たんだってさ」
オレの質問に答えたのは翼の方だった。
な、と確認を振られ、俊は微笑んで頷く。

「そっか…」
驚いていること自体、変なことだ。
だって、俊も同じクラスメートなのだから。
その事実をゆっくりと頭に反芻して、オレもゆっくり笑みを浮かべる。

「俊って真面目なんだな~可愛い上に性格もいいし、言うことないな!」
「もう、褒めすぎだよ」
「お前も見習ったほうがいいな」
「うわ、ひで!」
軽口を叩かれバカみたいに笑って見せる。なのに、なんでだ。

さきほどまでのやり取りとは嘘みたいに……痛い。


あの日から一ヶ月ほど経って、俊はすっかりオレ達の間に溶け込んでいた。
中学の頃から翼の周りには友人が沢山居たけれど、彼以上に馴染んではいなかったろう。
実際彼は凄く良い子だ。素直だし優しいし、友人になれてオレも嬉しい。
だけど時々、無性に心臓が痛くなるときがある。

オレのリアクションに一頻り笑った後、翼がそうだ、と話を変えた。
「オレ達これから遊びに行くんだけど、俊もよかったら一緒に行かないか?」
「!」
え、なんで。

「いいの?」
ぱあ、と顔を明るくする俊とは対照的に、オレは凍りついてしまった。
だって、今日は2人で行く約束で……

(って、なに考えてんだ、オレ)
咄嗟に出そうになる反論を慌てて飲み込む。

「聖人くん、僕もご一緒していいかな…?」
「、あ、ああ!勿論っ!」
下から覗き込まれ、勢いよく何度も首を縦に振る。
よかった、と笑う俊にホッとしながら、オレはのろのろと鞄を取りに机を向かった。

(なんなんだよ…これ)

また痛くなる箇所をシャツの上から握り締める。
最近不定期に訪れるこの症状は、段々酷くなっている気がする。

動きの遅いオレを見かねてか、翼から声が掛かる。
2人はもう帰り支度を済ませ、教室の出入り口で待っていた。
「聖人ー行くぞ」
「お、おう!」
鞄を肩に引っ掛けながら、急いで向かう。


モヤモヤを忘れてしまえるように、このあといつも以上にテンションが高いフリを続けた。
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