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オリジナルBL小説を扱ってます。 メインはLiebeシリーズ(不良×平凡)サブでCuadradoシリーズ(生徒会長×お調子者と親友たちの4角関係)も。pixivで漫画連載してます。更新情報はツイッターでどうぞ。
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広海を選んだのは、中学から続けているフェンシングの強豪校だったからだ。

周囲にここへ進学した者はなかったが、もとより友人と呼べる人間も少ない自分にとっては大したことではなかった。
感情が顔に出にくいというのと口下手なのが起因し、同年代の奴らからは一歩引かれていたことは自覚していた。
けれどこれはすでに確立された性格であるし、無理してまで安っぽい友情を築くというのもなんだか馬鹿らしくて。
高校も部活さえ出来ればいいと、友人との思い出なんて期待すらしていなかった。

…そう思っていたのだ、一年前までは。


放課後練習の終了後、部活仲間へと短く挨拶を交わし早足でバスケ部の部室へと急ぐ。
先ほど同じ時間に引き上げていったのを見ているから、きっとまだ居るはずだ。

「あはは、なんだよ、それ!」

あと数歩というところで、大きな笑い声とともに目的の部屋のドアが開く。
中からぞろぞろと出てきたのはあいつの友人であろう一行で、一番最後にその姿を見つけた。
「いやマジなんだって!今度お前も授業のときに見てみろよ!」
「やめろって~そんなこと言われたらオレ、今度からまともにコバセンの顔見れねえって…っ!」

(コバセン…日本史の木場森先生、か)

彼らの会話のキーワードを自分の中で紐解く。
選択していない授業だけに、その会話の意味を理解出来ない(断片しか聞いていないこともあるが)自分がもどかしい。

一行は外に突っ立っている俺の存在に気付き、足を止めた。
「あ、西園寺じゃん」
「え?お、巧~!お前ももう帰るのか?」
ひょい、と後ろから顔を覗かせた聖人がこちらに近寄ってくる。
見上げてくるその瞳を直視できなくて、ややずれた後方の地面を見つめた。

「ああ…お前もこのまま帰るのか?」
「うん、そう…あ、よかったら一緒に帰るか?」
「…そう、だな」
本当はそう切り出したかったのを察してくれたらしい。
俺が頷くと、聖人は二カッと笑い、後ろの友達に振り向いた。

「んじゃ、オレは巧と帰るな~また明日な!」
「おお、じゃあな~」
ひらひらと手を振って見送るバスケ部のメンバーと別れ、聖人が俺の隣に並ぶ。

「あー今日も疲れたな!」
「ああ」
「あ、でもお前はインハイ控えてるからもっと大変だよな」
「そうでもないが…いつも通りにやっていれば、結果は出るからな」
気負いしている訳でもないからこその本心なのだが、こういう言い方は時として反感を招くこともある。
かつて何度かそう取られてしまったことを思い出し、しまった、と後悔するが遅く、俺は不安に駆られながら彼を見た。

しかし聖人は目を輝かせて、本当に感心したように笑った。
「おー流石巧!カッコいい~!」
「いや…」
「本当だって!今の女子が聞いてたら惚れる…っていうか、オレまで惚れちゃうから!」
「…っ」

言葉の綾というのは判っていても、そのフレーズに思わず動揺してしまう。
言った本人は大して気にも留めず、一人うんうんと納得しながら先へ行ってしまった。

(…惚れる…か)


それが本当ならいいのに。


「?巧?」
「…なんでもない」
その言動に振り回されているばかりの自分に内心呆れながら、彼に追いつくべく歩みを速めた。


俺が聖人と出会ったのは去年の4月、初めての部活のときだった。
フェンシング部へと入部するために体育館へと訪れた俺に、彼が声を掛けてきたのが最初だった。

『あ、お前もバスケやんの?』

体育館で上履きを脱いでいるときにそう尋ねられ、首だけで振り返った。
真ん中分けで髪の先だけ一段濃いブラウンのその色がいやに特徴的で、まずそこに視線を向けてしまう。
『いや…俺はフェンシングを』

答えておきながら、俺は少々面倒なことになったな、と密かに眉を顰めた。
日本では比較的競技人口の少ないスポーツのせいで、こういうと大抵の人間は興味本位で食いついてくる。
もう何十回も目の当たりしてきたありきたりのリアクションなど見たくもなくて、さっさと別れたくなってきた。

しかし彼はパッと顔を輝かせると、合点がいった、と言うように手を叩いた。

『ああ!ここってフェンシング強いもんな!そっかー、お互い頑張ろうな!』

じゃ、と手を上げるとさっさと背を向けられ、俺の方が面食らってしまった。
踏み込んで欲しくない、といった気持ちが露骨だったのだろうか、と却って心配にすらなったが、あっさりしていただけに気分がよくて。
彼ともう一度話をしてみたい、とそう思った自分にまた驚くことになった。

それから挨拶をするようになって、名前やクラスなどを知って。
2年に上がってもクラスは別になってしまったが、それも関係ないくらいに友好関係は続いていた。


「なあ巧、お前疲れてるんじゃねえの?」
「?何故だ?」
「だって、さっきからボーっとしてるし…」

(それはお前を見ていたからだよ)
なんて、そんなことが言えたらどんなに楽だろうか。

一見お調子者の印象ばかりが目立つ聖人だが、時として人の機微に驚くほど敏感だ。
だから悟られるようなことがあってはならない。
今は、まだ。

俺は腕を伸ばして、その前髪に触れた。
栗毛の特徴的な髪は見た目通り絹のようで、さらさらと音がしそうだ。
「…ゴミついてたぞ」
「あ、本当?ありがと」

無防備にされるがままだった聖人は俺の嘘など知らず、にこりと笑った。
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