オリジナルBL小説を扱ってます。
メインはLiebeシリーズ(不良×平凡)サブでCuadradoシリーズ(生徒会長×お調子者と親友たちの4角関係)も。pixivで漫画連載してます。更新情報はツイッターでどうぞ。
- 12/02 初夏の嵐(6)
- 10/13 初夏の嵐(5)
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- 09/16 fragile (51) Side: 翼 最終回
- 09/08 fragile (50) Side: 俊&巧
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「…もう、いいから」
優しすぎる声色に、堪えていたものが零れた。
今日は絶対に結果を残さなきゃいけなかった。
そう気負いすぎていたのかもしれない。
オレはドリブルの最中に激しいブロックに遭い、結果接触して転倒してしまった。
ここ数日の考え事なんて関係ない。
焦るあまりオレのプレーが乱雑になっていたことと、相手のタイミングが悪かったことが重なって起こった事故だった。
シバっちに交代するかと尋ねられて「いけます」と即答したものの、段々と足の痛みは酷くなるばかりで。
結局オレはベンチに引っ込むことになってしまった。
(情けない…)
オレの沈んだ姿はチームにも悪影響だった。
流れはがらりと変わり、結局大差で負けてしまったのだ。
皆は口々に「気にするな」「本番で勝とうぜ」と言ってくれたけれど、それは罪悪感を募らせるばかりだった。
これ以上迷惑を掛けたくなくて、シバっちが病院まで車を出してくれると言うのを断った。
重たい身体はベンチに張り付いたまま動かなくて、オレはぼんやりと虚空を見つめたまま動けないで居た。
そんなときだ。来てくれたのは――巧だった。
抱き寄せられる形になって、オレの頭を大きな手が撫ぜていく。
「お前は本当に…感情を押し殺してまで笑おうとするんだな」
「…巧?」
「お願いだ…俺の前ではそんな顔をしないでくれ…」
「……」
そんな顔って。オレは今、どんな表情をしているのだろう。
(きっと情けないんだろうなあ…)
その証拠にすでに涙でぐちゃぐちゃで、彼のワイシャツを濡らしている。
悪いから身体を起こそうと思ったのに、いいからと更に距離を縮められた。
虚勢はとうに見抜かれている。
だから嗚咽があがるだけで、言葉が上手く出てこない。
けれど巧は構うことなく、あやすように撫で続けてくれた。
優しすぎる声色に、堪えていたものが零れた。
今日は絶対に結果を残さなきゃいけなかった。
そう気負いすぎていたのかもしれない。
オレはドリブルの最中に激しいブロックに遭い、結果接触して転倒してしまった。
ここ数日の考え事なんて関係ない。
焦るあまりオレのプレーが乱雑になっていたことと、相手のタイミングが悪かったことが重なって起こった事故だった。
シバっちに交代するかと尋ねられて「いけます」と即答したものの、段々と足の痛みは酷くなるばかりで。
結局オレはベンチに引っ込むことになってしまった。
(情けない…)
オレの沈んだ姿はチームにも悪影響だった。
流れはがらりと変わり、結局大差で負けてしまったのだ。
皆は口々に「気にするな」「本番で勝とうぜ」と言ってくれたけれど、それは罪悪感を募らせるばかりだった。
これ以上迷惑を掛けたくなくて、シバっちが病院まで車を出してくれると言うのを断った。
重たい身体はベンチに張り付いたまま動かなくて、オレはぼんやりと虚空を見つめたまま動けないで居た。
そんなときだ。来てくれたのは――巧だった。
抱き寄せられる形になって、オレの頭を大きな手が撫ぜていく。
「お前は本当に…感情を押し殺してまで笑おうとするんだな」
「…巧?」
「お願いだ…俺の前ではそんな顔をしないでくれ…」
「……」
そんな顔って。オレは今、どんな表情をしているのだろう。
(きっと情けないんだろうなあ…)
その証拠にすでに涙でぐちゃぐちゃで、彼のワイシャツを濡らしている。
悪いから身体を起こそうと思ったのに、いいからと更に距離を縮められた。
虚勢はとうに見抜かれている。
だから嗚咽があがるだけで、言葉が上手く出てこない。
けれど巧は構うことなく、あやすように撫で続けてくれた。
「…なあ、聖人」
どのくらいそうしていたのだろう。
不意に、巧がぽつりと呟いた。
大分落ち着いてきたオレはゆっくりと彼を見上げた。
間近にある端正な顔。
悲しげに寄せられた眉に、オレを心配してくれているのだと痛いくらいに伝わってきた。
「今度からは、俺を頼ってくれないか?」
「…え?」
「翼じゃなくて…俺を」
(翼じゃなくて……)
頭の中で言葉を反芻する。
そして溜息を吐いた。
ああ、やっぱりオレは、誰の目から見てもあいつに頼りすぎているんだ。
『――…オレは、オレのしたいことしか、しない主義なんだ』
(翼はああ言ってくれたけど)
ちょっと考れば判る。
翼はどんなに悪態を吐いても、見放すことなんて出来ない人間だ。
だからここまで面倒を見てしまったオレに対しても、突き放さないんだ。
だって、中学のときに約束してしまった。
『…オレがいる。オレは絶対に、お前の傍から離れないから』
あんな言葉を言わせて――あいつを縛り付けたのは、オレなんだ。
目の前の男をじっと見つめる。
巧は…オレなんかを好きになって、背負い込んでしまって、いいんだろうか。
不意に、巧が口端を緩めた。
ポーカーフェイスが多い彼にしては珍しい、ちょっと照れたようなそれだった。
「…お前、余計なことを考えてるだろう」
「え…?」
「甘えて欲しいんだ。惚れた相手に対して、それは当然の欲求だろう?」
「よ、っきゅうって…」
巧の口から出てくると、いやに色気を感じる単語にどぎまぎする。
オレの髪を滑る指はいつのまにか頬へと移動し、顎にかかる。
キスでもしそうなほどに、近付く。
(あ…)
思わず手を付いて離れる。
雰囲気に呑まれそうになってしまった自分に動揺し、耳まで熱くなった。
巧がオレをどういう気持ちで見つめていたかは判らない。
まるで何事もなかったかのように立ち上がった彼は、オレに手を差し伸べた。
「…さて。そろそろ病院に行くか。お前を引っ張ってでも連れて行けって、頼まれたからな」
「…あ、ありがと」
そろそろとその手に重ねて、そっと立ち上がる。
肩を貸してくれるその人を横目で窺いながら、オレは翼のことを考えていた。
(もう…傍にいちゃいけないな…)
そしてきっと――この手を取れば自由にしてやれる。
楽になるんだ。
あいつも。
この胸の、痛みも。
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