オリジナルBL小説を扱ってます。
メインはLiebeシリーズ(不良×平凡)サブでCuadradoシリーズ(生徒会長×お調子者と親友たちの4角関係)も。pixivで漫画連載してます。更新情報はツイッターでどうぞ。
- 12/02 初夏の嵐(6)
- 10/13 初夏の嵐(5)
- 10/09 【お知らせ】コメント欄について。
- 09/16 fragile (51) Side: 翼 最終回
- 09/08 fragile (50) Side: 俊&巧
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「あー…わっかんね…」
オレはイライラしながら、教科書と睨めっこをしていた。
放課後の図書室なんて、オレは数えるほどしか訪れたことがない。
そんなところにわざわざやってきた理由はただひとつ、中間テストのためだ。
しかも初日にいきなり大嫌いな数学があるもんだから、オレは焦りを覚えていた。
(…こんなとき、いつもだったら真っ先に翼を頼るんだけどさ…)
あいつに頼んで、また三人で…という流れになったとき、オレは平然としていられるだろうか。
その自信が無くて、恐くて…頼むことができなかった。
でも、所詮オレ一人の力なんてタカが知れている。
先ほどから頑張っている問題も全く進まなくて、意味の無い数式がぐちゃぐちゃに並ぶだけだ。
「ああもう…くっそ…」
情けない。
こんなとき、オレは翼にばかり頼っていることを思い知る。
オレの世界にはいつだってあいつがいて、あいつを指針にして生きているようなモンなんだ。
(大げさ…ともいえないんだよな…これが…)
はああ、と深い溜息を吐いた時。
すっと、ノートに影が落ちた。
耳に心地よいバリトンの声色と、長い指が数式をなぞらえる。
「そこの代入が間違ってるんだ」
「巧!」
ばっと顔を上げた先にいた頼もしい友人の登場に、ついつい大声を出してしまう。
カウンターにいた司書のおばさんの鋭い眼差しが飛んできて、慌ててトーンを下げた。
「…とと、お前もテスト勉強?」
「まあな」
言いながら巧が向かいの席に座る。
そしてオレの惨状をざっと見渡して悟ったらしく、僅かに柳眉を寄せた。
「困ってるみたいだな」
「うんそう…あのさ…迷惑じゃなかったら、ちょっと教えてほしいなー、なんて…」
「ああ、構わない」
オレはイライラしながら、教科書と睨めっこをしていた。
放課後の図書室なんて、オレは数えるほどしか訪れたことがない。
そんなところにわざわざやってきた理由はただひとつ、中間テストのためだ。
しかも初日にいきなり大嫌いな数学があるもんだから、オレは焦りを覚えていた。
(…こんなとき、いつもだったら真っ先に翼を頼るんだけどさ…)
あいつに頼んで、また三人で…という流れになったとき、オレは平然としていられるだろうか。
その自信が無くて、恐くて…頼むことができなかった。
でも、所詮オレ一人の力なんてタカが知れている。
先ほどから頑張っている問題も全く進まなくて、意味の無い数式がぐちゃぐちゃに並ぶだけだ。
「ああもう…くっそ…」
情けない。
こんなとき、オレは翼にばかり頼っていることを思い知る。
オレの世界にはいつだってあいつがいて、あいつを指針にして生きているようなモンなんだ。
(大げさ…ともいえないんだよな…これが…)
はああ、と深い溜息を吐いた時。
すっと、ノートに影が落ちた。
耳に心地よいバリトンの声色と、長い指が数式をなぞらえる。
「そこの代入が間違ってるんだ」
「巧!」
ばっと顔を上げた先にいた頼もしい友人の登場に、ついつい大声を出してしまう。
カウンターにいた司書のおばさんの鋭い眼差しが飛んできて、慌ててトーンを下げた。
「…とと、お前もテスト勉強?」
「まあな」
言いながら巧が向かいの席に座る。
そしてオレの惨状をざっと見渡して悟ったらしく、僅かに柳眉を寄せた。
「困ってるみたいだな」
「うんそう…あのさ…迷惑じゃなかったら、ちょっと教えてほしいなー、なんて…」
「ああ、構わない」
「マジで!?」
つい嬉しくて再び出してしまった声に、おばさんにまたもやキッと睨まれる。
三度目は追い出されそうだと口を塞ぎ、小さな声で巧に感謝を述べた。
「ほんと助かる!ありがとな!」
「…ああ」
早速だけど、とオレは今悩んでいる問題を見せる。
巧は既に答えまでの計算式が頭に入っているらしく、すらすらと流れる水のように滑らかに教えてくれた。
しかもそれは数学担当の教師よりも分かりやすい説明で、先ほどまであんなに苦戦していたのがバカらしくなるくらいだった。
「そっか、ここさえ直せば答え出るんだな…」
驚きで呆然となるオレに、巧が深く頷く。
「式の初めで躓いてしまうから点が取れないんだろう。基本さえ理解すれば、ぐっと回答率も上がるはずだ」
「なるほどー…」
「ああ。お前なら、きっと出来る」
言いながら、巧が手で頭をぽんと叩く。
骨ばったその手はオレよりもずっと大きくて、穏やかなその動きに安心を覚える。
「…巧って、ほんと優しいよな」
口数は少ないけれど、その分ひとつひとつに心が籠っている。
皆ロボットだとか失礼な渾名をつけるけれど、それは本当の彼を知りもしない奴らの偏見だ。
(それに、よく笑ってくれるし)
オレが漏らした言葉が意外だったらしい。
巧の手がぴくりと止まると、そっと頬へ移り、肌を撫でた。
「…お前だからだよ」
「え?」
「…俺は誰にでも優しい訳じゃない」
「……巧…」
(それ…て…?)
静かな声色に、どきりと心臓が騒ぐ。
巧の凪のような穏やかな瞳の奥に、確かに揺らめく感情の焔。
それを見ると何故だか心がざわついて――オレは、息を呑んだ。
「ここにいたのか」
不意に降りてきた声。
振り向くとそこには翼と―――俊の2人が、立っていた。
つい嬉しくて再び出してしまった声に、おばさんにまたもやキッと睨まれる。
三度目は追い出されそうだと口を塞ぎ、小さな声で巧に感謝を述べた。
「ほんと助かる!ありがとな!」
「…ああ」
早速だけど、とオレは今悩んでいる問題を見せる。
巧は既に答えまでの計算式が頭に入っているらしく、すらすらと流れる水のように滑らかに教えてくれた。
しかもそれは数学担当の教師よりも分かりやすい説明で、先ほどまであんなに苦戦していたのがバカらしくなるくらいだった。
「そっか、ここさえ直せば答え出るんだな…」
驚きで呆然となるオレに、巧が深く頷く。
「式の初めで躓いてしまうから点が取れないんだろう。基本さえ理解すれば、ぐっと回答率も上がるはずだ」
「なるほどー…」
「ああ。お前なら、きっと出来る」
言いながら、巧が手で頭をぽんと叩く。
骨ばったその手はオレよりもずっと大きくて、穏やかなその動きに安心を覚える。
「…巧って、ほんと優しいよな」
口数は少ないけれど、その分ひとつひとつに心が籠っている。
皆ロボットだとか失礼な渾名をつけるけれど、それは本当の彼を知りもしない奴らの偏見だ。
(それに、よく笑ってくれるし)
オレが漏らした言葉が意外だったらしい。
巧の手がぴくりと止まると、そっと頬へ移り、肌を撫でた。
「…お前だからだよ」
「え?」
「…俺は誰にでも優しい訳じゃない」
「……巧…」
(それ…て…?)
静かな声色に、どきりと心臓が騒ぐ。
巧の凪のような穏やかな瞳の奥に、確かに揺らめく感情の焔。
それを見ると何故だか心がざわついて――オレは、息を呑んだ。
「ここにいたのか」
不意に降りてきた声。
振り向くとそこには翼と―――俊の2人が、立っていた。
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