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オリジナルBL小説を扱ってます。 メインはLiebeシリーズ(不良×平凡)サブでCuadradoシリーズ(生徒会長×お調子者と親友たちの4角関係)も。pixivで漫画連載してます。更新情報はツイッターでどうぞ。
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「…っ」

消毒液が沁みて思わず小さな声を漏らすと、篤也先輩の眉が寄る。
「…痛むか?」
「いえ、平気です」
こんなことくらいで弱音を吐くのも情けないので笑ってみせると、先輩は微かに笑ってその上から絆創膏を貼り付けた。

先輩達のアジト「Dark Night」に戻ってくると、オレはVIP専用ルームの上質な革張りのソファーの上で恐れ多くも篤也先輩に直接治療してもらうことになった。
自分で出来ますと遠慮しようとしたのだが、やらせてくれと懇願するように頼まれては断ることなど出来なかった。
先輩はやはり、責任を感じてしまっているようだった。


(しかしこの顔…母さんが見たら倒れそうだな…)
今まで喧嘩なんてものに巻き込まれたことなどない。
そんな子が口端と頬に怪我をしている姿を見た親の顔が容易に想像できる。

オレは小さく苦笑しながら、先輩にお礼を告げた。
「あの、有難う御座います。手当てまで…」
「いや…」
先輩は短く断ると、救急箱の蓋を閉じてこちらへ身を屈めた。

「…それと」

(え)

流れるような動作で後頭部に手を回し、額に軽いリップ音を落とす。

「…早く治るまじない、な」
「え、ええっ…!?」


あまりにも自然にされて、一気に心臓が跳ね上がる。
耳まで熱くなったオレに、先輩が目を細めた。
うわ、なんだこれ、恥ずかしすぎる…!

でももっと困ったのは、ちっとも嫌じゃない…どころか、嬉しい、ということで。

(…って、これ、好きって自覚してから初めての2人きりだ…っ!)

他の皆さんは治療に集中できるようになのか、はたまた気を使ってくれたのか、他のフロアに集まっている。
幾ら皆がいるといってもここは2人だけで…どうしたって、意識してしまう。

先輩も、オレから好きだと告げたからか…今まで以上に優しく、そして愛しげにオレに触れる。
今だって大きな左手に頬を撫でられて、びくっと背中が跳ねた。

「あ、あのッ!き、聞いてもいいですか…っ!」
「ん?」

このままだとなんだか沸騰してしまいそうで、オレは話題を探そうと声を掛けた。
でも唯逃げただけじゃなくて…ずっと聞きたかったことがあったのだ。


「先輩はどうして…その、オレのこと、好きになった…んですか?」


そう。
だって、想いが通じ合った今でも信じられないんだ。
こんなに強くて格好良くて、そして住む世界も違う篤也先輩が…平凡まっしぐらなオレのどこに惚れたのだろうか、と。

篤也先輩は意外なオレの一言に瞠目していたが、ややあって、微笑んだ。

「…そうか。そういえば、まだ話してなかったな…」

先輩はオレから身体を離すと、向かい合うように座りなおした。
そしてどこか考え込むように長い人差し指を唇に掛けてから、オレに一言尋ねる。
「…少し長くなるが…聞いてくれるか?」
「あ、はい」
寡黙な先輩の大事な話なのだ。オレは何度も頷いて、一字一句も聞き逃すまいと耳を欹てた。


先輩はどこか遠い眼差しをしながら…ゆっくりと、話し始めた。


「…ずっと…」



ずっと、渇いていた。
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