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オリジナルBL小説を扱ってます。 メインはLiebeシリーズ(不良×平凡)サブでCuadradoシリーズ(生徒会長×お調子者と親友たちの4角関係)も。pixivで漫画連載してます。更新情報はツイッターでどうぞ。
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(…なんだ?あのガキ…)

見たところ1、2歳…いや、もっと年下だろうか。
随分と幼い印象を与えるのは、大きな瞳と少年特有の丸い輪郭のせいだろう。
ソバカスのある顔を悲しげに歪めて、そいつは黒猫に話しかけている。

『お前…捨てられたのか?怪我までしてるのに…』
そう呟くと、そいつは荷物を地面に置き――怪我ひとつない綺麗な手で、迷わず抱き上げた。

『ごめんな…っ』
そのまま暖めるように背中をさすってやりながら、堰を切ったように続ける。
声が揺らぐ。
嗚咽を噛み殺しながら、雨に塗れた頬に違う雫が伝った。

『こんなところに捨てられて…痛かったよな?寂しかったよな?…本当に…ごめんな…』
猫を真っ直ぐ見つめ、何度も何度も謝罪の言葉を口にする。


その光景を、オレはぼんやりと見つめていた。
このまま行ってしまえばいいと思うのに、足が動かない。
それだけ、あのガキの行動が不可解に映っているからだろう。

変な奴だ。

自分が捨てた訳でもないし、そもそも関係も無い筈だ。
なのに何故、あそこまで苦しそうな顔をするのだろうか?

可哀想だからと、上っ面の気持ちで手を差し伸べるのならば。
それならば、あんなふうに泣いて謝ったり…するだろうか。


(…分かんねえ)

傘も投げ捨て抱きしめるそいつの身体は、既にズブ濡れだ。
足元も跳ね返るドロのせいで汚れている。
それなのに、一向に構わずに抱きしめ続けている。


こいつは、一体なにをしているのだろう。
オレには理解出来ない。

でも、目が離せなかった。


すると、それまでずっと大人しく抱きしめられていた猫が、伸びをしてそいつに近付き、頬を舐めた。
捨てられたことを分からないはずも無いだろう。
それなのに人間に対して警戒するどころか、まるで慰めるような行動を取る。

(…あいつ……)

驚いたのはそいつも同じのようで、ハッとして顔を覗き込んだ。
「お前…!」
その呼びかけに応えるみたいに、子猫がひと鳴きする。


すると、そいつは泣きはらした目を大きく見開いたかと思うと。
本当に嬉しそうに――笑ったのだ。



その瞬間、オレは呼吸すら忘れていた。



(…なんだ…あれ…)

あんなにも純粋で裏表の無い笑顔を、オレは今まで見たことがない。
媚びるでもなく、怯えるでもなく――ただただ、喜びと慈愛の籠った微笑みだった。

(ひとは…あんな顔ができるのか…)

信じられないものを見ているようだ。
オレは無意識に、胸のあたりを強く握り締めていた。
鼓動は勢い良く波打っていた。速いそれに、更に戸惑う。

と、同時にじわじわとなにかがせりあがってくることにも気付いていた。
先程まであんなにイラついていたのが嘘のように、凪のような穏やかな気分だった。

(…オレは…満たされている…のか…)

その光景を見ているだけで、胸の痞えがスッと消えていく。
そしてまるで、不毛の大地に水が沁み込むように――酷かったあの心の渇きが、なくなっていた。

嬉しいと思った。
もっと見ていたいと、素直に思えた。


(ああ、そうか……)


やっと、やっと解った。
オレはずっと…ガキのころからずっと。



この笑顔に、癒されたかったんだ――
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