オリジナルBL小説を扱ってます。
メインはLiebeシリーズ(不良×平凡)サブでCuadradoシリーズ(生徒会長×お調子者と親友たちの4角関係)も。pixivで漫画連載してます。更新情報はツイッターでどうぞ。
- 12/02 初夏の嵐(6)
- 10/13 初夏の嵐(5)
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- 09/16 fragile (51) Side: 翼 最終回
- 09/08 fragile (50) Side: 俊&巧
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冷たい雨が降りしきる路地裏。
重なるように倒れている人間達を見ても、なんの感情も動かなかった。
3対10でやった喧嘩は不意打ちで襲われたということもあり、こちら側も多少の傷を負っていた。
オレも久々に頬を殴られた。それだけで苛立ちを募らせるには充分すぎた。
手加減なんてものは知らない。骨を折っている奴もいるだろう。
まあ、オレに喧嘩を吹っ掛けてきたのだから、それぐらいは覚悟しているだろうが。
『も、もう…許し…』
よろよろと顔を上げた一人が、命乞いをしてくる。
頼むくらいなら仕掛けてこなければいいだけの話だ。
虫のいい哀願にまた機嫌が悪くなって、オレはその頭を思い切り踏みつけた。
『…うぜえ…』
『なあ、篤也ー』
オレの後ろで最後の一人をのした龍人が間延びした声で話しかけてくる。
『オレ達このあとアジト戻るけど、どうするー?』
『…行かねえ』
一瞬考え、呟くように断る。
今日は酒を飲んでも女を抱いても、気分が晴れそうにもない。
右手に残る殴った感触だけが鮮明で、それがまた無性にムカついて。
なんにも考えずに、ふらりと歩き出した。
優士と龍人の視線を背中に感じたが、アイツ等は無駄なことは言わない。
そのまま見送るのだろうと判っていたから、オレも黙って歩き出した。
地面に打ち付けては跳ねる雫。
制服はすっかり濡れて、随分と重くなっている。
雨に打たれれば少しは綺麗になるかと思ったが、状況は何も変わらない。
オレは天を仰ぎ、舌打ちをした。
駄目だ。
全然、満たされない。
心が、渇きが、癒されない―――
そのとき、不意に声がした。
か細い、今にも消えそうな声だった。
重なるように倒れている人間達を見ても、なんの感情も動かなかった。
3対10でやった喧嘩は不意打ちで襲われたということもあり、こちら側も多少の傷を負っていた。
オレも久々に頬を殴られた。それだけで苛立ちを募らせるには充分すぎた。
手加減なんてものは知らない。骨を折っている奴もいるだろう。
まあ、オレに喧嘩を吹っ掛けてきたのだから、それぐらいは覚悟しているだろうが。
『も、もう…許し…』
よろよろと顔を上げた一人が、命乞いをしてくる。
頼むくらいなら仕掛けてこなければいいだけの話だ。
虫のいい哀願にまた機嫌が悪くなって、オレはその頭を思い切り踏みつけた。
『…うぜえ…』
『なあ、篤也ー』
オレの後ろで最後の一人をのした龍人が間延びした声で話しかけてくる。
『オレ達このあとアジト戻るけど、どうするー?』
『…行かねえ』
一瞬考え、呟くように断る。
今日は酒を飲んでも女を抱いても、気分が晴れそうにもない。
右手に残る殴った感触だけが鮮明で、それがまた無性にムカついて。
なんにも考えずに、ふらりと歩き出した。
優士と龍人の視線を背中に感じたが、アイツ等は無駄なことは言わない。
そのまま見送るのだろうと判っていたから、オレも黙って歩き出した。
地面に打ち付けては跳ねる雫。
制服はすっかり濡れて、随分と重くなっている。
雨に打たれれば少しは綺麗になるかと思ったが、状況は何も変わらない。
オレは天を仰ぎ、舌打ちをした。
駄目だ。
全然、満たされない。
心が、渇きが、癒されない―――
そのとき、不意に声がした。
か細い、今にも消えそうな声だった。
にゃあ、というそれに足元を見ると、ダンボールに入れられたまだ小さな子猫がこちらを見上げていた。
身体は震え、手は血で赤黒くなっていた。
最後の力を振り絞っているのか、オレに対して懸命に鳴いている。
『…怪我、してんのか…』
その姿に思わず手を伸ばす。
が、自分のそれを見て咄嗟に引っ込めた。
血だらけの手。
これで命を助けるのか?先程まで傷つけていた手で?
『…人を殴ってたこんな手じゃ…救えねえよな…』
一時の感情とはいえ何をしているのだろうと滑稽な気分になり、オレは口端を皮肉に吊り上げた。
『…悪いな』
立ち上がり、背を向ける。
猫の鳴き声はまだする。が、もう振り向けなかった。
『オレには…お前を助けてやれる資格なんて――ないんだ…』
そうだ。オレは奪うことしかできない。
優しさを、愛情を与えるということを、知らないから。
『あっ』
数メートル歩いたときだ。
今度は、知らない誰かの息を呑む声がした。
突然のことに驚いて、咄嗟に壁に身を隠す。
(…って、何隠れてンだ、オレは…)
そんな必要もないのに、と己の行動にまた舌打ちをする。
首だけ振り返ってみれば、先程の猫の前にしゃがみこむ人影が見えた。
身体は震え、手は血で赤黒くなっていた。
最後の力を振り絞っているのか、オレに対して懸命に鳴いている。
『…怪我、してんのか…』
その姿に思わず手を伸ばす。
が、自分のそれを見て咄嗟に引っ込めた。
血だらけの手。
これで命を助けるのか?先程まで傷つけていた手で?
『…人を殴ってたこんな手じゃ…救えねえよな…』
一時の感情とはいえ何をしているのだろうと滑稽な気分になり、オレは口端を皮肉に吊り上げた。
『…悪いな』
立ち上がり、背を向ける。
猫の鳴き声はまだする。が、もう振り向けなかった。
『オレには…お前を助けてやれる資格なんて――ないんだ…』
そうだ。オレは奪うことしかできない。
優しさを、愛情を与えるということを、知らないから。
『あっ』
数メートル歩いたときだ。
今度は、知らない誰かの息を呑む声がした。
突然のことに驚いて、咄嗟に壁に身を隠す。
(…って、何隠れてンだ、オレは…)
そんな必要もないのに、と己の行動にまた舌打ちをする。
首だけ振り返ってみれば、先程の猫の前にしゃがみこむ人影が見えた。
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