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オリジナルBL小説を扱ってます。 メインはLiebeシリーズ(不良×平凡)サブでCuadradoシリーズ(生徒会長×お調子者と親友たちの4角関係)も。pixivで漫画連載してます。更新情報はツイッターでどうぞ。
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ガキの頃からずっと、心が渇いていた。


一流企業に勤めるキャリアウーマンの母と、資産家の父。
家も広く使用人も数人いて、暮らしとしては上流階級だったのだろう。

けれど、己の境遇を幸福だと思ったことは一度もなかった。

両親が仕事のことしか頭になく、その邪魔になる子供のオレを疎ましく思っている――
そんなことは、物心ついたころには既に理解していたからだ。

彼らは家に帰ることも殆どなく、オレはいつも一人ぼっちだった。
寂しさから泣いて我侭を言ったこともあったけれど、その度に両親が浮かべる表情は迷惑そうなもので。
そこに一握りの愛情でもと縋ったことにすら傷ついて、いつしか2人に期待することがなくなった。

どんなに金があろうと、どんなにモノを与えられようと――温かみのないあの家は、牢獄と同じだった。


けれど、周りは違った。
あれは、中学生のときだ。

『嘉堵川君』
呼び止められ振り向くと、クラスメートの数人がやけにニコニコしながら近寄ってくる。
『君のお父様の話を聞いたよ。また事業に成功したそうじゃないか』
『…は?』
いきなり何を言い出すのかと思ったら。
名前も覚えていない奴の口から出てきた親の話に、眉間に皺が寄る。

中学校は親の勝手な方針により、金持ちばかりが通う私立に入れられていた。
どこの家が名門だとか、どこの親が成功しているだとか、そういう話にばかり感心を持っている奴らばかりだった。
こいつも例外ではないらしい。
不機嫌そうに聞き返したオレにはお構いなしで、横にいた生徒も口を揃える。

『お母様も相変わらず大活躍だし…本当に君の家は素晴らしいね』
『うんうん…君が羨ましいよ』
まるで首振り人形のように同調する奴らに、益々機嫌が降下していく。
ここに入ってから、何度この手の話をされたことだろう。

『……そんなに欲しいならくれてやる』

無性に苛立ちが募って、舌打ちと共に小さく吐き出した。


ああ、こいつらみんな同じだ。


何を期待してるのか、オレの周囲にはいつも媚び諂う奴らばかりが群がってきた。
皆オレを見ない。見るのはその後ろにある、家、そして金だ。

そんな環境に慣れていくのと同時に荒れていくのは――当たり前のこと、だった。

最初に殴ったのは、いつものようにオレの親を気持ち悪いくらいに褒め続けた同級生だった。
いつも成績優秀で問題など起こしたことの無かった…ただ無気力に生きていただけだったのだが…オレの突然の豹変振りに、教師も青褪めて大騒ぎになった。

だが、それはオレにとってなんの不思議もない結果だった。
じりじりとゆっくり解れていった紐が遂に切れた、ただそれだけのことだ。

それからは学校にも段々と行かなくなり、街で喧嘩をするようになった。
黒髪を金に染め、ピアスがいくつも開くようになった。

すっかり学校一の問題児になったオレのせいで何度も呼び出された親は面子を潰されたと憤慨し、自分たちの体面を護る為に転校させた。
そして所有していたマンションのひとつに放り込み、そこから絶縁状態になった。

やっと手に入れた自由だった。
これで親の話もされなくなるし、あの家に帰らなくてもいいと思うと返ってせいせいした位だ。
…だが、心は少しも満たされなかった。

それからの暮らしは一層酷くなった。
放し飼いのような状況で益々荒れたオレは、今まで以上に喧嘩を繰り返した。
どこにぶつけたらいいのか分からないフラストレーションを抱えて、街をぶらついた。

だが、どんなに人を殴っても女を抱いても――渇きは酷くなるばかりだった。


高校生になり、気がつけばオレは『月峰の餓狼』などと呼ばれるようになっていた。
唯一信じられた奴ら…龍人達と出会ってチームを作ってからも、喧嘩に明け暮れていた。

(ああ、そうだ)


…あの日も、そうだった。



目蓋を閉じると浮かぶ、雨の路地裏。
人生を変えた、日だった。
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