オリジナルBL小説を扱ってます。
メインはLiebeシリーズ(不良×平凡)サブでCuadradoシリーズ(生徒会長×お調子者と親友たちの4角関係)も。pixivで漫画連載してます。更新情報はツイッターでどうぞ。
- 12/02 初夏の嵐(6)
- 10/13 初夏の嵐(5)
- 10/09 【お知らせ】コメント欄について。
- 09/16 fragile (51) Side: 翼 最終回
- 09/08 fragile (50) Side: 俊&巧
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「あ…あのときの…」
案の定、直は黒目がちの瞳を零れんばかりに見開いていた。
予想通りの吃驚した顔がなんだか可愛くて、小さく微笑ってしまう。
ああ、と頷きながら、オレは話を続けた。
「…けれど、お前に見惚れていて、その場では声も掛けられなかった…」
子猫を抱いた直が路地裏から去るまで、オレはただ見送っていた。
そのあとどうやって家に帰ったのかも記憶がない。
ただ、ふわふわとした妙な感覚に襲われていた。
しかしそれは、決して嫌なものではなくて――寧ろ、やっと落ち着くべきところを見つけたような、そんな安心感で。
それは表情にも出ていたらしい。
オレの変化に龍人達は目敏く気がついたようで、翌日直ぐに事の次第は露見することとなった。
ただこいつらは話をしてもいいと思えるほどに信頼していたから、オレは昨日のことを話すことにした。
2人は一様に驚いた様子だったが、話を聞き終わると考え深げに頷いた。
『そっかそっかー。あの篤也が恋しちゃうとはねえー』
『それも真実の恋、ってところかな』
『…恋…?』
言葉にされた単語をぼんやり鸚鵡返しするオレに、龍人が苦笑する。
『え、ちょっと篤也、無自覚だったの?』
『……』
確かに自覚はしていなかった。
が、考えれば確かにこの感覚は、慕情よりも恋情…に近いのかもしれない。
オレはどうしても忘れられないでいる。
否、それどころではない。
あの笑顔が、見たい。傍に居て欲しい。
あれから、それだけを考えるようになっているのだから。
案の定、直は黒目がちの瞳を零れんばかりに見開いていた。
予想通りの吃驚した顔がなんだか可愛くて、小さく微笑ってしまう。
ああ、と頷きながら、オレは話を続けた。
「…けれど、お前に見惚れていて、その場では声も掛けられなかった…」
子猫を抱いた直が路地裏から去るまで、オレはただ見送っていた。
そのあとどうやって家に帰ったのかも記憶がない。
ただ、ふわふわとした妙な感覚に襲われていた。
しかしそれは、決して嫌なものではなくて――寧ろ、やっと落ち着くべきところを見つけたような、そんな安心感で。
それは表情にも出ていたらしい。
オレの変化に龍人達は目敏く気がついたようで、翌日直ぐに事の次第は露見することとなった。
ただこいつらは話をしてもいいと思えるほどに信頼していたから、オレは昨日のことを話すことにした。
2人は一様に驚いた様子だったが、話を聞き終わると考え深げに頷いた。
『そっかそっかー。あの篤也が恋しちゃうとはねえー』
『それも真実の恋、ってところかな』
『…恋…?』
言葉にされた単語をぼんやり鸚鵡返しするオレに、龍人が苦笑する。
『え、ちょっと篤也、無自覚だったの?』
『……』
確かに自覚はしていなかった。
が、考えれば確かにこの感覚は、慕情よりも恋情…に近いのかもしれない。
オレはどうしても忘れられないでいる。
否、それどころではない。
あの笑顔が、見たい。傍に居て欲しい。
あれから、それだけを考えるようになっているのだから。
じっと考え込んでいるオレに、優士がやんわりと諭すように紡ぐ。
『…相手が男の子だから、戸惑っているのかい?』
『……いや…』
確かに、あいつもオレも男だ。
だが、それを改めて思い返しても、指摘された感情の形が揺らぐことはないようだった。
そんなことは問題ではなかった。
女とか男とか、そういう前に――これまで出会ったなかで、心を動かしてくれたのはただひとりで。
それを愛しいと思うことは、もう必然のようなものだった。
オレはひとつ深呼吸をして、2人を見据える。
彼らは黙って、こちらの様子を見守っていた。
『…そうだな。オレは…あいつが好き…だ』
確信をもってそう呟くと、2人は嬉しそうに頷いたのだった。
からん、とグラスの中の氷を回して、龍人が尋ねる。
『ねえー、まだ例の子、見つからないの?』
『……ああ』
『そっかあー。ほんと、どこの子なんだろねえー』
『……』
それから、幾日も経った。
真も交えた幹部の3人も捜すのを手伝ってくれていたが、あの少年が見つかることはなかった。
『あーあ。オレもその子に会いたいのになー』
『僕もだよ』
2人の会話を遠く聞きながら、オレはじりじりと焦りを感じていた。
(…探すのは容易じゃない)
同じ街に住んでいるとはいえ、名前は勿論どこの学校の生徒かも知らないのだ。
分かっていたとはいえ、なんの手がかりもないまま悪戯に時間だけが過ぎていくことに苛立ちが募る。
このまま、もう逢えないのか――
浮かんだ絶望を揉み消すように吸殻を灰皿に押し付け、立ち上がる。
フロアへと続く扉へ向かうオレに、優士が声を掛けた。
『あれ、篤也?』
『…帰る』
再会出来なければ、また同じ生活が続くだけだ。
今と何も変わらないというだけで、それは酷く憂鬱な気分にさせた。
深淵の底で見つけた光に縋ってしまった。
それすらも、オレにとって高望みだったのだろうか。
『…相手が男の子だから、戸惑っているのかい?』
『……いや…』
確かに、あいつもオレも男だ。
だが、それを改めて思い返しても、指摘された感情の形が揺らぐことはないようだった。
そんなことは問題ではなかった。
女とか男とか、そういう前に――これまで出会ったなかで、心を動かしてくれたのはただひとりで。
それを愛しいと思うことは、もう必然のようなものだった。
オレはひとつ深呼吸をして、2人を見据える。
彼らは黙って、こちらの様子を見守っていた。
『…そうだな。オレは…あいつが好き…だ』
確信をもってそう呟くと、2人は嬉しそうに頷いたのだった。
からん、とグラスの中の氷を回して、龍人が尋ねる。
『ねえー、まだ例の子、見つからないの?』
『……ああ』
『そっかあー。ほんと、どこの子なんだろねえー』
『……』
それから、幾日も経った。
真も交えた幹部の3人も捜すのを手伝ってくれていたが、あの少年が見つかることはなかった。
『あーあ。オレもその子に会いたいのになー』
『僕もだよ』
2人の会話を遠く聞きながら、オレはじりじりと焦りを感じていた。
(…探すのは容易じゃない)
同じ街に住んでいるとはいえ、名前は勿論どこの学校の生徒かも知らないのだ。
分かっていたとはいえ、なんの手がかりもないまま悪戯に時間だけが過ぎていくことに苛立ちが募る。
このまま、もう逢えないのか――
浮かんだ絶望を揉み消すように吸殻を灰皿に押し付け、立ち上がる。
フロアへと続く扉へ向かうオレに、優士が声を掛けた。
『あれ、篤也?』
『…帰る』
再会出来なければ、また同じ生活が続くだけだ。
今と何も変わらないというだけで、それは酷く憂鬱な気分にさせた。
深淵の底で見つけた光に縋ってしまった。
それすらも、オレにとって高望みだったのだろうか。
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