オリジナルBL小説を扱ってます。
メインはLiebeシリーズ(不良×平凡)サブでCuadradoシリーズ(生徒会長×お調子者と親友たちの4角関係)も。pixivで漫画連載してます。更新情報はツイッターでどうぞ。
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- 10/13 初夏の嵐(5)
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- 09/16 fragile (51) Side: 翼 最終回
- 09/08 fragile (50) Side: 俊&巧
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相手は振り向かなくても分かっていた。
オレよりも幾分か背の高いその人物は、呆れ顔でこちらを見下ろしていることだろう。
ゆっくりと首を捻ると、予想通りの鋭い目線にかち合う。
「あ、巧!」
オレがやっぱり、と思うのと同時に、聖人の能天気な声が上がる。
普通の人ならこの眼差しだけでたじろぐものだが、こいつにはそんなものは通用しないらしい。
「えっと…?」
城ヶ崎も御多分に漏れず、高校生らしからぬ雰囲気を醸し出す男に動揺してしまったようだ。
おろおろとオレ達を見比べる彼に、聖人がすかさずフォローを入れた。
「あ、こいつは西園寺巧!我が高校フェンシング部の期待のエースなんだぜ!」
な、と言いながら、聖人は男の…巧の肩をバシバシと叩く。
「へえ…凄いんだね」
「だろ~?」
「なんでお前がそんなに得意そうなんだよ」
「え、だって自慢じゃん!なあ?」
本人に確認するように言っても、困らせるだけだろうに。
オレが内心そう突っ込みを入れるも、巧は柳眉を僅かに吊り上げただけだった。
「全く…お前は本当に元気が良すぎるな」
「ごめんごめん」
「……」
仕方ない、と一見呆れた様なその仕草はごく自然なものだ。
だからだろう、聖人の奴も少しも疑問に持たず、笑いかけながら再び歩き出した。
それに続く形で、城ヶ崎も着いていく。
「……」
「あれ、堂本くん?」
「あ、ああ…今行くよ」
幾分ぎこちないながらも、反射的に浮かぶ笑顔を向けた。
傍から見れば、極々一般的な、友人同士の会話なのだろう。
分かっている。そうでなければ。
歩きながらふと、ポケットに入れたままの掌を握り締めていたことに気づく。
力を緩めると、そこはすぐに血の気を取り戻した。
オレよりも幾分か背の高いその人物は、呆れ顔でこちらを見下ろしていることだろう。
ゆっくりと首を捻ると、予想通りの鋭い目線にかち合う。
「あ、巧!」
オレがやっぱり、と思うのと同時に、聖人の能天気な声が上がる。
普通の人ならこの眼差しだけでたじろぐものだが、こいつにはそんなものは通用しないらしい。
「えっと…?」
城ヶ崎も御多分に漏れず、高校生らしからぬ雰囲気を醸し出す男に動揺してしまったようだ。
おろおろとオレ達を見比べる彼に、聖人がすかさずフォローを入れた。
「あ、こいつは西園寺巧!我が高校フェンシング部の期待のエースなんだぜ!」
な、と言いながら、聖人は男の…巧の肩をバシバシと叩く。
「へえ…凄いんだね」
「だろ~?」
「なんでお前がそんなに得意そうなんだよ」
「え、だって自慢じゃん!なあ?」
本人に確認するように言っても、困らせるだけだろうに。
オレが内心そう突っ込みを入れるも、巧は柳眉を僅かに吊り上げただけだった。
「全く…お前は本当に元気が良すぎるな」
「ごめんごめん」
「……」
仕方ない、と一見呆れた様なその仕草はごく自然なものだ。
だからだろう、聖人の奴も少しも疑問に持たず、笑いかけながら再び歩き出した。
それに続く形で、城ヶ崎も着いていく。
「……」
「あれ、堂本くん?」
「あ、ああ…今行くよ」
幾分ぎこちないながらも、反射的に浮かぶ笑顔を向けた。
傍から見れば、極々一般的な、友人同士の会話なのだろう。
分かっている。そうでなければ。
歩きながらふと、ポケットに入れたままの掌を握り締めていたことに気づく。
力を緩めると、そこはすぐに血の気を取り戻した。
ゆっくりと、だが、確実に。
オレはこの関係が――…少しずつずれているような、そんな妙な感覚を抱き始めていた。
聖人が変わったわけでもない。
あいつ本来の明るいところも、調子がいいところも、いつも通りだ。
初めて会ったときのようなあんな顔は、もう見せなくなった。
(……分かってる)
原因は聖人ではない。
…その横に立っている男だ。
中学のあの時からずっと、オレは聖人の悪友兼親友の立場を貫いてきた。
あいつの一番近くにいる自覚も、あいつの一番の理解者という自負もあった。
他の友人達もいたが、ここには入ってこられないと…そう思っていた。
「そうだ巧、お前の今度の試合っていつ?」
「来週の日曜だが」
「お、その日ならオレ部活休みだ!応援しに行くな!」
「ああ」
無防備に満面の笑みを向ける聖人に、チリ、と胸の奥が焼け付くような痛みを覚える。
「?翼?お前変な顔してるぞ」
「なんでもねえよ」
「そっか~?」
なんでこんなときだけ鋭いんだと顔を歪ませて、軽く頭を小突いてやる。
何も知らないのだ、こいつは。
影で鉄の仮面と呼ばれるほど表情を変えないその男が、お前には穏やかに微笑みかけていることの意味を。
それを近くで見せられるたびに、オレがどんなにムカついているかということを。
しかし、どこかで安堵していることもまた事実だった。
だからこそ、こうしてオレ達は友達で居られる。
そして、心を開いてくれるのだから。
「……」
分かっては、いるのだ。
だけど。
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