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オリジナルBL小説を扱ってます。 メインはLiebeシリーズ(不良×平凡)サブでCuadradoシリーズ(生徒会長×お調子者と親友たちの4角関係)も。pixivで漫画連載してます。更新情報はツイッターでどうぞ。
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「…嘘だろ……」

麗らかな春の日差しが照らす、朝の通学路。

爽やかな空気とは対照的に、オレは先ほどから何度もその言葉を繰り返していた。
頭を抱えてしまいたくなるくらいに衝撃的だった、朝見た夢のせいだ。

オレ――進藤聖人が見たのは、堂本翼という男に抱かれている夢。

勿論オレはアイツとそんな関係でもなければ、そういう意味で好きなわけでもない。
中学生のときに出会ったあいつは――オレの人生を変えてくれた、謂わば恩人なのだ。
あいつを夢とはいえ汚してしまったようで、オレはぐるぐると罪悪感に苛まれていた。

(潜在意識で好き…とか?いやいやいや、それはないって!)

一瞬思いついたそれを、即効で打ち消す。
確かに高校生になった今でも付き合いがあるほどに好きだけど、それは当然友人のそれであって恋愛対象ではない。
オレも健全な男子高校生なのだ。ゴツイ男より、可愛い女の子が大好きに決まってる。
(そりゃ彼女が出来たことはないけどさ。それは只オレにチャンスが無かっただけで…)
いつの間にか思考は、翼から己の経験の無さに向いていく。


アイツと同じ、進学校である広海高校へと入学して2年目の春。
今年こそは彼女を作って花の青春を謳歌するのだ、とオレは息巻いていた。
そんな矢先、新学期一日目の朝にあんな夢を見てしまったのだ。
悲しくもなるというものだろう。

(翼は…彼女とか作る気ねえのかなー)
完璧なルックスにモデル並みにすらりと長い足、それに帰国子女というおまけつき。
いつだって女子生徒から熱い視線を集めているアイツはそれこそ不自由しないだろうに、中学のときから告白を了承したことが殆どないらしい。
付き合ってもすぐに別れてしまうのだと聞かされた時は嫌味かと腹も立ったものだが。

「全く…贅沢な奴だよなあ…」
ずり落ちそうになった鞄の肩紐を直して、オレは軽く溜息を吐いた。
オレなんていっつも面白い人やいい人、で終わっちまうってのに…


考えているうちに段々とムカついてきて、朝見た夢のことは薄らいでくる。
それに少し安堵しながら、角を曲がったとき。
数メートル先を歩く、翼の背中を見つけた。

「あ、おーい、つば…」

名前を呼ぼうとしてそのまま固まる。
その隣を楽しげに歩く、女子高生を見つけてしまったからだ。

(え、なに!あの超可愛い子!!)

背の高い翼と歩いているからか、彼の腰辺りに頭がくるくらいの身長がまた可愛らしい。
横顔だけでも分かる長い睫毛、亜麻色の髪がふわふわと風に靡いている。
行き交う人々も思わず振り返ってしまうくらいの美少女は、アイツと歩いているとまるでお似合いのカップルにしか見えない。

一瞬胸の辺りにチリ、と焼けつくような痛みが走ったが、それはきっと翼に対しての嫉妬だろう。
(あいつ、早速彼女作りやがったのか…!?)

一緒に彼女作ろうな、と持ちかけても、断るとか言ってたくせに…!
オレは焦りと怒りを覚えて、猛スピードで2人に追いついた。
そしていきなり、翼の鞄を掴んでやる。

「痛っ!」
「おい翼!お前いきなり彼女といちゃつきやがって…!」
「聖人!?はあ?なに言ってんだよ!つか痛いんだよ、放せっての!」
「お前が吐いたら放してやるよ!」
ぎゅーと力一杯鞄の紐を掴んでやったら肩が食い込んで痛いのだろう。分かってやっている。
しかし反撃とばかりにチョークスイーパーを掛けられ、オレも苦しくなる。

「あでで…!」
「放せっての、このバカ…!」
「うわ、ひでー!バカっていう奴がバカなんだよ!」
朝から往来でプロレスごっこをしている男子高校生ほどバカなものもないだろう。
分かってはいるのだが、一度仕掛けてしまうと引っ込みがつかないのもまた事実というもので。
「お前だけには言われたくないね…!折角オレが教えてやったのに、この前の英語も赤点取っただろ!」
「うわ!今それ言う!?春休みで忘れてたのに!翼のロクデナシ!」
「1年の復習しとけって言っただろーが!バカ聖人!忘れてんじゃねえよ!」

「……あのー…」

おずおず、といったように声を掛けられ、オレと翼は同時に我に返った。
ハッと振り返れば、先ほどの美少女が困った顔でこちらを見上げていた。
大きな瞳に見つめられ、どきんと心臓が跳ねる。
(うわ、近くで見ると殊更可愛い…!)

「あ、ごめんごめん、突然現われて…オレは進藤聖人。とりあえずこいつの友達で…」

言いながら視線をずらしていく…オレと同じネクタイ、同じ色のズボン…
ん?ズボン?

一度顔に戻りかけた視線をもう一度下半身に転じる。
どう見ても……男子高校生が着ることになっている、ズボンだった。
(んん?)

オレの疑問がありありと手に取るように分かったのだろうか。
苦笑しながら、自己紹介を始める。


「はじめまして、僕は城ヶ崎俊。この春に転校してきたばかりなんだ」
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