オリジナルBL小説を扱ってます。
メインはLiebeシリーズ(不良×平凡)サブでCuadradoシリーズ(生徒会長×お調子者と親友たちの4角関係)も。pixivで漫画連載してます。更新情報はツイッターでどうぞ。
- 12/02 初夏の嵐(6)
- 10/13 初夏の嵐(5)
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- 09/16 fragile (51) Side: 翼 最終回
- 09/08 fragile (50) Side: 俊&巧
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「ぼくって…ことは…男…?」
「見れば分かるだろ」
たっぷり数秒間を空けて反応した間抜け面を、オレは苦笑しながら小突いた。
まあ、聖人がすぐに理解出来ないのも無理は無い。
オレも数十分前までは、女性だと思いこんでいたのだから。
「よろしくね、えっと…進藤くん?」
しかし彼は失礼な聖人の言葉に気分を害することもなく、にこりと笑みを浮かべて小首を傾げる。
それは同性からみてもどきりとする仕草だろう。
現に隣の男は、さっと耳まで赤くなった。
「あ、オレは聖人でいいから!よろしくな、俊!」
「うん、こちらこそ」
そしてオレの腕から抜け出すと、満面の笑みで転校生と握手なんてしている。
すぐに状況に対応できるのがこいつの長所でもあるとは分かっているのだが…如何せん、変わり身が早い気もする。
「でもお前、どうやって俊と知り合いになったんだよー?ナンパでもしたのか?」
む、と眉を寄せたオレを急に振り返り、聖人がぴっと人差し指を突き立てる。
人を指すな、と釘を刺しつつ、少し濁して応えた。
「するかよ。…まあ、ちょっと…電車の中でな」
「そ、そうなんだ。僕が迷っているときに助けてくれて…」
「ふうん?」
曖昧なオレの言葉を、城ヶ崎が慌ててフォローする。
聖人は疑問が残るようだったが、それ以上は追求してこなかった。
誰よりも当人が一番知られたくないだろう。
オレと知り合ったきっかけが…痴漢だなんて。
「見れば分かるだろ」
たっぷり数秒間を空けて反応した間抜け面を、オレは苦笑しながら小突いた。
まあ、聖人がすぐに理解出来ないのも無理は無い。
オレも数十分前までは、女性だと思いこんでいたのだから。
「よろしくね、えっと…進藤くん?」
しかし彼は失礼な聖人の言葉に気分を害することもなく、にこりと笑みを浮かべて小首を傾げる。
それは同性からみてもどきりとする仕草だろう。
現に隣の男は、さっと耳まで赤くなった。
「あ、オレは聖人でいいから!よろしくな、俊!」
「うん、こちらこそ」
そしてオレの腕から抜け出すと、満面の笑みで転校生と握手なんてしている。
すぐに状況に対応できるのがこいつの長所でもあるとは分かっているのだが…如何せん、変わり身が早い気もする。
「でもお前、どうやって俊と知り合いになったんだよー?ナンパでもしたのか?」
む、と眉を寄せたオレを急に振り返り、聖人がぴっと人差し指を突き立てる。
人を指すな、と釘を刺しつつ、少し濁して応えた。
「するかよ。…まあ、ちょっと…電車の中でな」
「そ、そうなんだ。僕が迷っているときに助けてくれて…」
「ふうん?」
曖昧なオレの言葉を、城ヶ崎が慌ててフォローする。
聖人は疑問が残るようだったが、それ以上は追求してこなかった。
誰よりも当人が一番知られたくないだろう。
オレと知り合ったきっかけが…痴漢だなんて。
その朝、いつもの同じ時間の同じ車両に乗り込んで、オレは満員電車に揺られていた。
休み明けは特に人混みが辛く感じてしまう。
早く降車駅に着けと念じながら、大人しくつり革に捕まっていたときだった。
突然、隣の人の身体が不自然に跳ねた。
(ん…?)
どうしたのだろうと斜め下に視線を走らせる。
背の低い女子高生が、俯いて唇を噛み締めていた。
つり革に捕まるその小さな手が震えている。
尋常ではない様子にゆっくりと首だけを動かして後ろを見ると、混雑しているとはいえ妙にその女子高生に密着しているサラリーマンがいた。
その右手がごそごそと動いているのを見つけ…すっと目を細める。
(人が苛立っているときに、余計に不快な行動を取りやがって…)
自分勝手な怒りも多分に含めつつ、オレはその腕をむんずと掴み、捩じ上げた。
『イテッ…!』
『おいオッサン。ナニ触ってんだよ』
オレのストレートな断罪の言葉に、周囲の人々がざわつく。
見れば40代そこそこといった男性はいきなり自分の罪を咎められ、羞恥に戦慄いた。
『な、なにを…!私は何も…!』
『言い逃れする気か?オレは見てんだよ。…な、アンタ、今触れただろ?』
保身に走る言葉に呆れながら、被害者の女性を見遣る。
突然の事態に呆然となっていた彼女はハッと我に返り、幾度も頷いた。
『は、はい…』
そんなやり取りをしている最中に電車が次の駅へと滑り込む。
とドアが開くや否や、オレの手を猛然と振り切ると男は外へと飛び出した。
『あ、このっ…!』
『あ、いいんです、もう!』
捕まえようと飛び出しかけたオレの腕を掴んだのは、被害者たる本人で。
些か面食らいつつも振り返れば、彼女は苦笑しながら首を横に振っていた。
『男が痴漢されたなんて恥ずかしいので…もう、平気です』
『へ?』
何を言っているのだろう、と、その姿を確かめ――オレも絶句した。
聞けば城ヶ崎は今日が転校初日ということだったので、まだ道にも慣れていないだろうとオレ達は一緒に登校することとなったのだった。
オレが少しの間回想に浸っているうちに聖人はもう頭の中が切り替わっているらしく、真ん中に城ヶ崎を挟むように右へと移動するとにこにこと話しかけていた。
「オレ、俊と同じクラスがいいな~そしたらもっと仲良くなれるしなっ」
「うん、そうだといいね」
「あ、ついでにお前もな!」
「オレはおまけか」
ひょい、と首を傾げてオレを見るので、やれやれと肩を竦めた。
まるで猫のように、次々へ興味が移る癖。慣れているが、正直に言えばあまり面白くない。
憎まれ口でも叩いてやろうかと開きかけたとき、落ち着いたテノールが響いた。
「…朝から何をやっているんだ」
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