オリジナルBL小説を扱ってます。
メインはLiebeシリーズ(不良×平凡)サブでCuadradoシリーズ(生徒会長×お調子者と親友たちの4角関係)も。pixivで漫画連載してます。更新情報はツイッターでどうぞ。
- 12/02 初夏の嵐(6)
- 10/13 初夏の嵐(5)
- 10/09 【お知らせ】コメント欄について。
- 09/16 fragile (51) Side: 翼 最終回
- 09/08 fragile (50) Side: 俊&巧
This is new entry
息が止まるかと思った。
嬉しい。
嬉しくて、泣けてしまう。
そう思っているうちにみるみる先輩の顔が滲んでくる。
オレの目尻に優しくキスを落として、先輩が耳元で続ける。
「愛してる、直」
「…っ」
こんなに幸せな言葉って、あるだろうか。
オレも先輩が好きで、先輩もオレのことを、好きだと言ってくれて。
同じように言いたいのに嗚咽が出てしまいそうで、オレは先輩の手を握り返すことしか出来ない。
でもそれだけで伝わったようだ。先輩が、目をそっと細める。
ああ、こんな顔、するんだ。
いつも夜の海のように冷たかった瞳が、春の日差しのような優しさを宿して。
そしてそこに、オレを映してくれる。
愛撫は喉、鎖骨とゆっくり降りてくる。
「ひゃっ…!」
と同時に右手がシャツの下から素肌に触れて、吃驚して変な声が出てしまう。
も、もしかしなくても、これって…
「直…いいか?」
「…っ」
考えていると、先輩が確かめるように尋ねる。
短い言葉のなかにも滲む、切羽詰った声色。
理性で必死に抑えようとしているのは明白だった。
オレの迷いなど、一瞬だった。
嫌なんかじゃない。
だから、だから…
こくん、と一つ頷くと、先輩は唾を飲み込んだ。
そして、壊れ物を扱うようにそっと、長い指がシャツのボタンへと伸びる。
魅力的でもない、平凡で貧相な身体だけど。
先輩の手が触れてくれるだけで、こんなオレでもいいんだって、思えるから。
だから。
先輩に、抱いてほしい。
嬉しい。
嬉しくて、泣けてしまう。
そう思っているうちにみるみる先輩の顔が滲んでくる。
オレの目尻に優しくキスを落として、先輩が耳元で続ける。
「愛してる、直」
「…っ」
こんなに幸せな言葉って、あるだろうか。
オレも先輩が好きで、先輩もオレのことを、好きだと言ってくれて。
同じように言いたいのに嗚咽が出てしまいそうで、オレは先輩の手を握り返すことしか出来ない。
でもそれだけで伝わったようだ。先輩が、目をそっと細める。
ああ、こんな顔、するんだ。
いつも夜の海のように冷たかった瞳が、春の日差しのような優しさを宿して。
そしてそこに、オレを映してくれる。
愛撫は喉、鎖骨とゆっくり降りてくる。
「ひゃっ…!」
と同時に右手がシャツの下から素肌に触れて、吃驚して変な声が出てしまう。
も、もしかしなくても、これって…
「直…いいか?」
「…っ」
考えていると、先輩が確かめるように尋ねる。
短い言葉のなかにも滲む、切羽詰った声色。
理性で必死に抑えようとしているのは明白だった。
オレの迷いなど、一瞬だった。
嫌なんかじゃない。
だから、だから…
こくん、と一つ頷くと、先輩は唾を飲み込んだ。
そして、壊れ物を扱うようにそっと、長い指がシャツのボタンへと伸びる。
魅力的でもない、平凡で貧相な身体だけど。
先輩の手が触れてくれるだけで、こんなオレでもいいんだって、思えるから。
だから。
先輩に、抱いてほしい。
覚悟を決めて、ぎゅっと目を瞑る。
…と、なにやら、ドアの向こうから数人の話し声のようなものが聞こえてきた。
『ちょ、お前ら…っ!押すなって…っ』
『だって見えないんスよ!』
(…ん…?)
ひそひそと小さな声だが、却ってよく拾ってしまうもので。
なにやら前園先輩と他の人達が何か言っているらしい…けど、何が見えないんだろう。
なんてことを、オレは熱情に揉まれながらぼんやりと頭の端っこで考えていた…そのときだ。
突然雪崩のように人が飛び込んできた、のは。
「……」
「……」
どさどさっと人がVIPルームに転がり込んで、それから不気味なくらい沈黙が続いた。
脳が理解するのが遅いからか、ただ何を言っていいか判らないからか…
それを破ったのは、やっと思考回路が繋がったオレだった。
「ま、前園先輩…っ!?」
一緒に居るのは当たり前だけど同じチームの人達で…まあ要するに、覗かれていたということ、だった。
カッと耳まで羞恥に染まったのがよく判って、慌ててシャツの前を握り締めたけど遅いだろう。
あの会話の様子だと、ナニをしようとしていたかはばっちり見られていただろうから。
(は、恥ずかしすぎる…!!)
穴があったら入りたい。そのまま住んでしまいたい。
あわあわとそれきり言葉が出ないオレに、へらりとした笑いを貼り付けて前園先輩が頭を掻く。
「い、いやあ…オレ達も直クンの様子が気になったっつーかなんつーか…ねえ?」
いや、ねえ?と疑問符をつけられても。
それよりオレは…先ほどから微塵も動かない篤也先輩の様子のほうが気がかりだ。
「ほーんの出来心だからさー…許して篤也」
てへ。
そんな感じでかるーく放たれた謝罪の台詞に、先輩のこめかみがひくついたのが…よく見えた。
「…それで…」
先輩がゆらりと立ち上がる。
先ほどの険相とは又違った種類の…けれどもとても恐ろしい、オーラを纏っている。
それに気づいたその他のチームの皆さんは、小さく悲鳴をあげた。
「オレが許すと思ってんのか、ああ!?」
「わああ!総長がキレた!」
「捕まったら殺されんぞ!!」
「ひいいい、逃げろーっ!!」
大噴火を合図に、蜘蛛の子を散らしたかのように一斉に逃げていく。
先輩がそれを物凄い勢いで追いかけていき、VIPルームには動けないオレ一人が残された。
「ちょ、優士、真!助けろって!!」
「嫌だね」
「嫌です」
逃げ回りながら前園先輩は傍観者2人に助けを求めるが、呆れと軽蔑の眼差しを向けられるだけだった。
(……な、なんか…力抜けた…)
オレはへなへなと座り込みながら、震える指でボタンを締めなおす。
熱はすっかり収まってしまったけれど、動悸は煩いままだ。
(…ちょっと…残念だったりして…)
そう確かに思ってしまうのも事実で、胸の位置でぎゅうと制服を握りしめた。
「ちょっとなんで、オレだけ!」
「うるせえ!お前が首謀者だろうが!!」
先輩の標的はいつの間にか前園先輩一人に絞られていた。
が、逃亡者は小回りよく立ち回り、バーの出入り口から外に飛び出してしまう。
「テメエ…!」
「ごめんって言ったじゃーん!篤也のケチー!」
「言ってねえだろうが!!」
あ、確かに…
先輩の的確なツッコミも虚しく、前園先輩は逃げるが勝ちと夜の街に紛れてしまったようだ。
軽く肩で息をしながら戻ってきた先輩は、マジで許さねえ…と尚も悔しそうだ。
「先輩…」
「直…悪い」
やっと起き上がれたオレが近付くと、怒りから180度、申し訳なさそうに柳眉が下がる。
それがまた愛しくて、オレは思い切り先輩に抱きついた。
「直?」
(…なんて、焦らなくてもいいんだよ、ね)
先輩のコロンの匂いを胸一杯に吸い込んでから、顔を上げた。
オレを覗き込む、愛しいひとがそこにいた。
「篤也先輩…オレ…先輩が大好きですっ」
突然のオレの告白に、先輩が大きく目を見開く。
そしてそれから――嬉しそうに、満面の笑みを浮かべてくれた。
そう、焦らなくてもいいんだ。
だって、オレ達の時間はこれから沢山、あるのだから。
…ちなみに、後日前園先輩の頭には沢山タンコブが出来たそうです…。
FIN
++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
不良×平凡シリーズ第一弾「山田君の災難。」はこれにて終了です。
お付き合いくださり有難う御座いました!!
そして篤直カップルの今後はこれからも続きますので、よろしくお願いします!
…と、なにやら、ドアの向こうから数人の話し声のようなものが聞こえてきた。
『ちょ、お前ら…っ!押すなって…っ』
『だって見えないんスよ!』
(…ん…?)
ひそひそと小さな声だが、却ってよく拾ってしまうもので。
なにやら前園先輩と他の人達が何か言っているらしい…けど、何が見えないんだろう。
なんてことを、オレは熱情に揉まれながらぼんやりと頭の端っこで考えていた…そのときだ。
突然雪崩のように人が飛び込んできた、のは。
「……」
「……」
どさどさっと人がVIPルームに転がり込んで、それから不気味なくらい沈黙が続いた。
脳が理解するのが遅いからか、ただ何を言っていいか判らないからか…
それを破ったのは、やっと思考回路が繋がったオレだった。
「ま、前園先輩…っ!?」
一緒に居るのは当たり前だけど同じチームの人達で…まあ要するに、覗かれていたということ、だった。
カッと耳まで羞恥に染まったのがよく判って、慌ててシャツの前を握り締めたけど遅いだろう。
あの会話の様子だと、ナニをしようとしていたかはばっちり見られていただろうから。
(は、恥ずかしすぎる…!!)
穴があったら入りたい。そのまま住んでしまいたい。
あわあわとそれきり言葉が出ないオレに、へらりとした笑いを貼り付けて前園先輩が頭を掻く。
「い、いやあ…オレ達も直クンの様子が気になったっつーかなんつーか…ねえ?」
いや、ねえ?と疑問符をつけられても。
それよりオレは…先ほどから微塵も動かない篤也先輩の様子のほうが気がかりだ。
「ほーんの出来心だからさー…許して篤也」
てへ。
そんな感じでかるーく放たれた謝罪の台詞に、先輩のこめかみがひくついたのが…よく見えた。
「…それで…」
先輩がゆらりと立ち上がる。
先ほどの険相とは又違った種類の…けれどもとても恐ろしい、オーラを纏っている。
それに気づいたその他のチームの皆さんは、小さく悲鳴をあげた。
「オレが許すと思ってんのか、ああ!?」
「わああ!総長がキレた!」
「捕まったら殺されんぞ!!」
「ひいいい、逃げろーっ!!」
大噴火を合図に、蜘蛛の子を散らしたかのように一斉に逃げていく。
先輩がそれを物凄い勢いで追いかけていき、VIPルームには動けないオレ一人が残された。
「ちょ、優士、真!助けろって!!」
「嫌だね」
「嫌です」
逃げ回りながら前園先輩は傍観者2人に助けを求めるが、呆れと軽蔑の眼差しを向けられるだけだった。
(……な、なんか…力抜けた…)
オレはへなへなと座り込みながら、震える指でボタンを締めなおす。
熱はすっかり収まってしまったけれど、動悸は煩いままだ。
(…ちょっと…残念だったりして…)
そう確かに思ってしまうのも事実で、胸の位置でぎゅうと制服を握りしめた。
「ちょっとなんで、オレだけ!」
「うるせえ!お前が首謀者だろうが!!」
先輩の標的はいつの間にか前園先輩一人に絞られていた。
が、逃亡者は小回りよく立ち回り、バーの出入り口から外に飛び出してしまう。
「テメエ…!」
「ごめんって言ったじゃーん!篤也のケチー!」
「言ってねえだろうが!!」
あ、確かに…
先輩の的確なツッコミも虚しく、前園先輩は逃げるが勝ちと夜の街に紛れてしまったようだ。
軽く肩で息をしながら戻ってきた先輩は、マジで許さねえ…と尚も悔しそうだ。
「先輩…」
「直…悪い」
やっと起き上がれたオレが近付くと、怒りから180度、申し訳なさそうに柳眉が下がる。
それがまた愛しくて、オレは思い切り先輩に抱きついた。
「直?」
(…なんて、焦らなくてもいいんだよ、ね)
先輩のコロンの匂いを胸一杯に吸い込んでから、顔を上げた。
オレを覗き込む、愛しいひとがそこにいた。
「篤也先輩…オレ…先輩が大好きですっ」
突然のオレの告白に、先輩が大きく目を見開く。
そしてそれから――嬉しそうに、満面の笑みを浮かべてくれた。
そう、焦らなくてもいいんだ。
だって、オレ達の時間はこれから沢山、あるのだから。
…ちなみに、後日前園先輩の頭には沢山タンコブが出来たそうです…。
FIN
++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
不良×平凡シリーズ第一弾「山田君の災難。」はこれにて終了です。
お付き合いくださり有難う御座いました!!
そして篤直カップルの今後はこれからも続きますので、よろしくお願いします!
PR