オリジナルBL小説を扱ってます。
メインはLiebeシリーズ(不良×平凡)サブでCuadradoシリーズ(生徒会長×お調子者と親友たちの4角関係)も。pixivで漫画連載してます。更新情報はツイッターでどうぞ。
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- 10/13 初夏の嵐(5)
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先輩の独白を、オレは驚きと…同時に、悲しい気持ちで受け止めていた。
時折見せる陰のある表情が気になっていたのだけれど…友人どころか、両親にも愛されていなかった、なんて。
(そんなの…辛すぎる…)
そして自分の境遇を省みる。
平々凡々で特筆すべきところはなにもないと思っていたけれど、家庭は円満だし気の置けない友人もいる。
それがどれだけ恵まれていたことなのだろうと、改めて思い知った。
先輩が傷つけたのは、周囲だけじゃない。
それ以上に自身に痛みを刻んで――深く傷ついていた。
でもそうしてしまうのは、このひとが優しいから。
本当に優しくない人なら、もうとっくに心が壊れている。
こうやって、泣きそうな顔なんて、しない。
そう思うとオレは堪らなくなって、先輩の手をそっと自分の頬にやった。
(こんなオレでも、役に立てるのかな)
自問して、応えるように強く願う。
(ううん…役に立ちたい)
「…ほら、こんなに温かい」
体温を感じて、にっこりと微笑んでみせる。
先輩が救われたと言ってくれた笑顔なら、沢山あげるから。
だから、だからどうか。
ほんの少しでもいい。
オレがいることで、この人が幸せになれたなら――
先輩がひゅ、と息を呑んだ。
それからぴくりともしなかった手が意思を持って、オレの頬を撫でる。
「……本当に、お前は……」
「え…?」
聞き返そうと思ってあげると、頭上に影が差した。
出そうとした言葉は途切れてしまう。
少し動いただけの唇は――暖かいそれに、塞がれていた。
時折見せる陰のある表情が気になっていたのだけれど…友人どころか、両親にも愛されていなかった、なんて。
(そんなの…辛すぎる…)
そして自分の境遇を省みる。
平々凡々で特筆すべきところはなにもないと思っていたけれど、家庭は円満だし気の置けない友人もいる。
それがどれだけ恵まれていたことなのだろうと、改めて思い知った。
先輩が傷つけたのは、周囲だけじゃない。
それ以上に自身に痛みを刻んで――深く傷ついていた。
でもそうしてしまうのは、このひとが優しいから。
本当に優しくない人なら、もうとっくに心が壊れている。
こうやって、泣きそうな顔なんて、しない。
そう思うとオレは堪らなくなって、先輩の手をそっと自分の頬にやった。
(こんなオレでも、役に立てるのかな)
自問して、応えるように強く願う。
(ううん…役に立ちたい)
「…ほら、こんなに温かい」
体温を感じて、にっこりと微笑んでみせる。
先輩が救われたと言ってくれた笑顔なら、沢山あげるから。
だから、だからどうか。
ほんの少しでもいい。
オレがいることで、この人が幸せになれたなら――
先輩がひゅ、と息を呑んだ。
それからぴくりともしなかった手が意思を持って、オレの頬を撫でる。
「……本当に、お前は……」
「え…?」
聞き返そうと思ってあげると、頭上に影が差した。
出そうとした言葉は途切れてしまう。
少し動いただけの唇は――暖かいそれに、塞がれていた。
「ん…っ」
ぬる、とした感触が舌だということに気づいたのは、歯列をなぞられてからだった。
驚いて開いた隙に入り込んだそれに己の舌を取られ、絡まる。
「んん…」
背筋に震えが走る。
不快感などではなく――それは明らかな、快感で。
初めて深いキスをされて…耳が熱くなる。
衝撃に息継ぎが出来なくなったオレを察したのか、唇が不意に離れる。
一気に吸い込んだ酸素につっかえながら、オレは至近距離のその瞳を見返した。
先程までとは違いとても穏やかな色を讃えたそれと、かち合う。
「あ、篤…っ」
「――お前が居てくれて、本当に良かった」
(先輩…)
心からのその言葉だと分かる、優しい響き。
先輩はそう言うと、また唇を寄せてくる。
今度は分かっていたから、オレもゆっくりと目を閉じた。
軽く啄ばむようなキスから、舌を入れるディープなものまで。
今までは下校の別れのときに一回キスをされるだけだったから、こんなに沢山したことなどなくて。
どきどきして、くらくらして。
でも先輩の気持ちを、全部受け止めたくて。
頬を引き寄せる先輩の大きな手を握って、空いた左手も、指を絡ませて。
「ん…んん…」
またしても段々と苦しくなってくると、先輩がふっと吐息のように微かに笑う。
「息、鼻で吸って」
(あ、そっか…)
当たり前のことなのに忘れてた。
恥ずかしくなって呼吸をすれば、安心したのかまたキスが再開される。
知らなかった。
キスって、これだけでこんなにも満たされるんだ。
「ん…んっ」
舌を吸われたかと思うと、急に身体が傾く。
革の質感を背中に、頭に感じる。先輩の右手が顔のすぐ隣に降ろされた。
肩を上下するオレを見下ろしながら、先輩が唇に引いていた銀糸を親指で拭う。
その仕草が妙に色っぽくて…また心臓が五月蝿くなった。
ただぼうっと見つめるオレに――先輩が囁く。
「――愛してる」
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