オリジナルBL小説を扱ってます。
メインはLiebeシリーズ(不良×平凡)サブでCuadradoシリーズ(生徒会長×お調子者と親友たちの4角関係)も。pixivで漫画連載してます。更新情報はツイッターでどうぞ。
- 12/02 初夏の嵐(6)
- 10/13 初夏の嵐(5)
- 10/09 【お知らせ】コメント欄について。
- 09/16 fragile (51) Side: 翼 最終回
- 09/08 fragile (50) Side: 俊&巧
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オレはそのままアジトへと戻ると、今回得た情報を真に伝えた。
参謀は薄いフレームの眼鏡を中指で押し上げると、自慢の手製パソコンのキーボードを素早く叩き始めた。
そして数秒もしないうちに、口元に笑みを浮かべる。
『…総長、解りましたよ』
そう言って、彼がパソコンの画面をこちらへと向ける。
オレはそこに映っていた人物に、息を呑んだ。
大きな瞳、ソバカス、幼さの残る輪郭。
紛れもなく、本人そのものだった。
『山田直――月峰高校1年6組、ですね』
真がすらすらとその名前を告げると、両隣の彼らがそれぞれ反応を示した。
『ひゃー…相変わらずスゴイねー真のデーターベースはー…一体どうなってんの?』
『そこはまあ、企業秘密、ということで』
『へえ…可愛い子じゃないか、篤也』
軽口を叩き合う真と龍人を余所に、優士がオレの肩越しから覗き込みながら、そう話しかけてくる。
しかしオレはそれに応える余裕もないくらい、画面に魅入っていた。
データ元は恐らく、学校側の生徒の名簿なのだろう。
学生証用で多少緊張気味の写真の横に、名前が書かれている。
直。山田直。
その名前を何度も反芻する。
渾名かもしれないと思っていたが、本名そのままだったのか。
名が体を現すというのは本当のことのようだ。
素直で真っ直ぐ…あいつを表現するのに、これ以上ぴったりくる表現もないだろう。
(……逢える…やっと、逢える)
言いようの無い喜びに震えながら、オレはそっと画面を指でなぞった。
一刻も早く、逢いたい。
待ちきれなかった。
(明日、逢いに行こう…)
参謀は薄いフレームの眼鏡を中指で押し上げると、自慢の手製パソコンのキーボードを素早く叩き始めた。
そして数秒もしないうちに、口元に笑みを浮かべる。
『…総長、解りましたよ』
そう言って、彼がパソコンの画面をこちらへと向ける。
オレはそこに映っていた人物に、息を呑んだ。
大きな瞳、ソバカス、幼さの残る輪郭。
紛れもなく、本人そのものだった。
『山田直――月峰高校1年6組、ですね』
真がすらすらとその名前を告げると、両隣の彼らがそれぞれ反応を示した。
『ひゃー…相変わらずスゴイねー真のデーターベースはー…一体どうなってんの?』
『そこはまあ、企業秘密、ということで』
『へえ…可愛い子じゃないか、篤也』
軽口を叩き合う真と龍人を余所に、優士がオレの肩越しから覗き込みながら、そう話しかけてくる。
しかしオレはそれに応える余裕もないくらい、画面に魅入っていた。
データ元は恐らく、学校側の生徒の名簿なのだろう。
学生証用で多少緊張気味の写真の横に、名前が書かれている。
直。山田直。
その名前を何度も反芻する。
渾名かもしれないと思っていたが、本名そのままだったのか。
名が体を現すというのは本当のことのようだ。
素直で真っ直ぐ…あいつを表現するのに、これ以上ぴったりくる表現もないだろう。
(……逢える…やっと、逢える)
言いようの無い喜びに震えながら、オレはそっと画面を指でなぞった。
一刻も早く、逢いたい。
待ちきれなかった。
(明日、逢いに行こう…)
先輩が擽ったそうに目を細めながら、オレの頬を撫でる。
「それで…あの日、お前に逢いに行ったんだ」
「そう…だったんですか…」
知らなかった。
先輩が、そんなにオレのことを思っていてくれたなんて…
照れくさいけれど、それ以上にとても嬉しい。
「あ、あり…」
「…だが」
お礼を言いかけたオレに被せるように、先輩ががらりと口調を変えて続ける。
「オレが求めちまったせいで、お前が狙われた……」
頬の手がすべり、オレの肩を掴む。まるで縋るように。
「…解っていた。オレが望めば、それだけ直を危険に晒すということも…」
「せんぱ…」
「あの女がアイツらと組んでいたことさえ、見抜けないなんてな……」
そう言って先輩は、自嘲的な弱弱しい笑みを浮かべた。
まるで迷子の子供のような、今にも泣きそうなそれ。
心臓をそのまま鷲掴んで揺さぶられるようで、苦しくなる。
「いや…あいつに二度と近寄るなと言ったのはオレだ…追い詰めたのも…」
篤也先輩の手に力が籠り、オレの肩に頭を寄せた。
震えているのか、オレよりもずっと大きなその背中が、酷く小さくみえた。
「…結局、オレには人を傷つけることしか……出来ないんだな…」
痛かった。
その言葉が今までの先輩の辛さを全て物語っていて…オレは肩に置かれた手を両手で握り締めた。
言いたいことは沢山あって、どれも上手く伝えられそうにもなかった。
だから万感の想いを籠めて…そっと紡ぐ。
「オレ…先輩の手、好きですよ」
先輩の肩が揺れる。
見たこともない、戸惑うような瞳がこちらに向けられる。
「直…?」
「この手に触れられると安心するんです。優しい、先輩の気持ちが伝わってくるようで――」
そう。
このひとは優しい。
本当は誰よりも優しくて――だからこそ、ずっとずっと苦しんでいたんだ。
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