オリジナルBL小説を扱ってます。
メインはLiebeシリーズ(不良×平凡)サブでCuadradoシリーズ(生徒会長×お調子者と親友たちの4角関係)も。pixivで漫画連載してます。更新情報はツイッターでどうぞ。
- 12/02 初夏の嵐(6)
- 10/13 初夏の嵐(5)
- 10/09 【お知らせ】コメント欄について。
- 09/16 fragile (51) Side: 翼 最終回
- 09/08 fragile (50) Side: 俊&巧
This is new entry
裏通りから一本出ると、学校帰りの学生が多く平日の午後というのに人でごった返していた。
辟易しながら足早に歩きだす。
『あ、篤也じゃん!』
『うっそ、マジ!?』
雑踏の中、甲高い声に名前を呼ばれたかと思うと、2人の女子高生が近寄ってきた。
相手は知っているようだが、一向に覚えがなかった。
尤も他人に興味を持つことが殆どないから、顔を見て見当が付くはずがないのだが。
『ねえ、篤也ー私とデートしようよ』
『えーずるい!私としてよ~篤也』
女共は馴れ馴れしく腕を絡ませると、大きく開いた胸元を寄せてくる。
それらの行為と咽返るほどの香水の匂いに、刻んだ眉間の皺が深くなった。
『うぜえ…近寄ンな』
『えーひっどーい!』
吐き捨てるように言っても本気だと思っていないのか、一笑して去る様子もない。
(めんどくせえな…)
イラついて怒鳴ろうと口を開きかけたときだ。
『順平、お待たせー』
『!』
男にしては高めの、柔らかな音。
あの声、だった。
勢い良く顔を上げ、顔を確かめる。
数メートル先、スーパーの入り口から出てきたのは、紛れもなくあの時の少年だった。
(いた…!)
見つけた。
やっと、やっとだ…!
中学生くらいかと思っていたが、着ている学ランの襟章は己の高校のもので。
まさか同じ学校だったとは思いもしなかった。
最近サボっていたことを酷く惜しみながら、その横顔をまじまじと見つめる。
辟易しながら足早に歩きだす。
『あ、篤也じゃん!』
『うっそ、マジ!?』
雑踏の中、甲高い声に名前を呼ばれたかと思うと、2人の女子高生が近寄ってきた。
相手は知っているようだが、一向に覚えがなかった。
尤も他人に興味を持つことが殆どないから、顔を見て見当が付くはずがないのだが。
『ねえ、篤也ー私とデートしようよ』
『えーずるい!私としてよ~篤也』
女共は馴れ馴れしく腕を絡ませると、大きく開いた胸元を寄せてくる。
それらの行為と咽返るほどの香水の匂いに、刻んだ眉間の皺が深くなった。
『うぜえ…近寄ンな』
『えーひっどーい!』
吐き捨てるように言っても本気だと思っていないのか、一笑して去る様子もない。
(めんどくせえな…)
イラついて怒鳴ろうと口を開きかけたときだ。
『順平、お待たせー』
『!』
男にしては高めの、柔らかな音。
あの声、だった。
勢い良く顔を上げ、顔を確かめる。
数メートル先、スーパーの入り口から出てきたのは、紛れもなくあの時の少年だった。
(いた…!)
見つけた。
やっと、やっとだ…!
中学生くらいかと思っていたが、着ている学ランの襟章は己の高校のもので。
まさか同じ学校だったとは思いもしなかった。
最近サボっていたことを酷く惜しみながら、その横顔をまじまじと見つめる。
『って、お前一杯買ったな~主婦か』
『だって、特売だったからさ…』
隣に立つ男に指摘され、彼はふたつのビニール袋を掲げ気恥ずかしそうに笑う。
左手に持つ袋に入っているのは野菜やら肉やら、やたら家庭的なものばかりだ。
男もその中身が気になったらしい。ひょいと覗き込むと、そのなかを指差した。
『てか、猫の餌も沢山あんだな。ひょっとして、この前言ってた猫用か?』
『そうなんだ。モモの怪我もすっかり良くなってさ。ご飯も一杯食べるようになったから、嬉しくて…』
あの猫は無事だったのか…
甲斐甲斐しく世話をしたのだろう。本当に安堵したように話す顔が緩んでいる。
(…綺麗だな)
優しい眼差しで語るその姿に、思わず見蕩れる。
なんて澄んでいるのだろう。
濁りひとつない、あんな瞳をした奴を――オレは他に知らない。
あいつの横にいる男も同じことを思ったのだろう。
目を細めて、その髪を軽く撫ぜた。
『…ほんと、ナオって優しいのな』
『そ、そんなことないって』
真正面から褒められ、恥ずかしそうに肩を竦める。
何度か同じようなことをされているのだろうか、あいつは照れつつも嫌がる素振りもない。
オレが届かないその存在に他の男が容易く触れていることが不快で、無意識に奥歯を噛んでいた。
ただの友人だろうがなんだろうが、彼の傍にいてその微笑みを受けているだけで酷く許せない気持ちになる。
自分がここまでなにかに執着したことなどなかった。
こんなに嫉妬深かったのか、と呆れる一方で、だからこそ本気なのだと自覚するのもまた、確かで。
(…これが本当の恋…なのか)
離れたところで一人戸惑っているオレに気付くこともなく、2人は話しながら歩き始めた。
『今度オレも猫見に行ってもいいか?』
『うん、勿論いいよ』
『!待…っ』
また行ってしまう。
焦ったオレは、慌てて声をあげようとした。
『ねえ、篤也何処行くの?』
『!』
しかしそれは女に腕を掴まれ阻まれる。
邪魔されたことにカッとなり、それを乱暴に振り払った。
『離せ!』
『あ…っ!』
長い爪の拘束を解くも些か遅く、見上げてみた雑踏の中にはもうあの少年の姿はなかった。
(クソ…!)
再び逸した機会に舌打ちしながら、それでも収穫はあったと己を励ました。
同じ高校。そして、「ナオ」という名前。
(……ナオ…か)
『だって、特売だったからさ…』
隣に立つ男に指摘され、彼はふたつのビニール袋を掲げ気恥ずかしそうに笑う。
左手に持つ袋に入っているのは野菜やら肉やら、やたら家庭的なものばかりだ。
男もその中身が気になったらしい。ひょいと覗き込むと、そのなかを指差した。
『てか、猫の餌も沢山あんだな。ひょっとして、この前言ってた猫用か?』
『そうなんだ。モモの怪我もすっかり良くなってさ。ご飯も一杯食べるようになったから、嬉しくて…』
あの猫は無事だったのか…
甲斐甲斐しく世話をしたのだろう。本当に安堵したように話す顔が緩んでいる。
(…綺麗だな)
優しい眼差しで語るその姿に、思わず見蕩れる。
なんて澄んでいるのだろう。
濁りひとつない、あんな瞳をした奴を――オレは他に知らない。
あいつの横にいる男も同じことを思ったのだろう。
目を細めて、その髪を軽く撫ぜた。
『…ほんと、ナオって優しいのな』
『そ、そんなことないって』
真正面から褒められ、恥ずかしそうに肩を竦める。
何度か同じようなことをされているのだろうか、あいつは照れつつも嫌がる素振りもない。
オレが届かないその存在に他の男が容易く触れていることが不快で、無意識に奥歯を噛んでいた。
ただの友人だろうがなんだろうが、彼の傍にいてその微笑みを受けているだけで酷く許せない気持ちになる。
自分がここまでなにかに執着したことなどなかった。
こんなに嫉妬深かったのか、と呆れる一方で、だからこそ本気なのだと自覚するのもまた、確かで。
(…これが本当の恋…なのか)
離れたところで一人戸惑っているオレに気付くこともなく、2人は話しながら歩き始めた。
『今度オレも猫見に行ってもいいか?』
『うん、勿論いいよ』
『!待…っ』
また行ってしまう。
焦ったオレは、慌てて声をあげようとした。
『ねえ、篤也何処行くの?』
『!』
しかしそれは女に腕を掴まれ阻まれる。
邪魔されたことにカッとなり、それを乱暴に振り払った。
『離せ!』
『あ…っ!』
長い爪の拘束を解くも些か遅く、見上げてみた雑踏の中にはもうあの少年の姿はなかった。
(クソ…!)
再び逸した機会に舌打ちしながら、それでも収穫はあったと己を励ました。
同じ高校。そして、「ナオ」という名前。
(……ナオ…か)
PR