オリジナルBL小説を扱ってます。
メインはLiebeシリーズ(不良×平凡)サブでCuadradoシリーズ(生徒会長×お調子者と親友たちの4角関係)も。pixivで漫画連載してます。更新情報はツイッターでどうぞ。
- 11/27 [PR]
- 09/23 fragile (19) Side: 巧
- 09/10 fragile (18) Side: 翼
- 08/29 fragile (17) Side: 聖人
- 08/26 fragile (16) Side: 俊
- 08/13 キリ番お返事(13500)
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短いようで長く感じた、テストが漸く終った。
再開された部活動に勤しむ生徒達は、まるで水を得た魚のようだ。
御多分に漏れず、そのなかに己も含まれているのだが。
久しぶりに満足のいく練習を終えたのは、大分長くなってきた日も傾きかけた、6時過ぎだった。
「じゃーなー!」
「おー!」
部室棟の壁に寄りかかりながら、待ち続ける。
俺の前を通り過ぎていく中に探している顔がないことを見届け、時計を何度か確認して。
そしてやがて聞こえてきた声の中に、ひとりを見つけた。
なんでもない風を装って、声を掛ける喉はやや掠れていた。
「聖人」
その声に犬の耳があったらピンと立ったことだろう、きょろきょろと辺りを見渡して、俺を見つけた聖人が顔を綻ばせる。
「巧!」
その一連の仕草にはなんの計算もなくて、だから余計に心が締め付けられる。
「よかったら、その…」
「おう、一緒に帰ろうぜ!」
言いたい言葉の最後を掬い、聖人が当たり前のように隣へ並んでくれた。
一週間のテスト期間の最中には一度も会えなかったから、久しぶりの距離感は気分を浮つかせる。
歩くたびに少しだけ触れる、肩。
劣情のままに引き寄せてしまいたい。
何度も衝動に駆られながら、表情はいつもの通りに繕う。
こんな浅ましい自分を知ったら、どう思うだろうか。
考えると恐怖心が芽生えるのに、こいつなら否定しないでいてくれるはずだ、なんて実に楽観的な答えを期待してしまう。
「あーひっさしぶりに動いたから疲れた~」
「たった1週間だろう?それにお前のことだから、走りこみ位はしていたと思うが」
「まーなー。これで本当になんにもしてなかったら、それこそシバっちにどやされるって」
「それでもレギュラーか!ってさ~」と顧問の真似をしてみせながら、聖人が笑う。
少し似ていたそれに、つられて小さく笑った。
再開された部活動に勤しむ生徒達は、まるで水を得た魚のようだ。
御多分に漏れず、そのなかに己も含まれているのだが。
久しぶりに満足のいく練習を終えたのは、大分長くなってきた日も傾きかけた、6時過ぎだった。
「じゃーなー!」
「おー!」
部室棟の壁に寄りかかりながら、待ち続ける。
俺の前を通り過ぎていく中に探している顔がないことを見届け、時計を何度か確認して。
そしてやがて聞こえてきた声の中に、ひとりを見つけた。
なんでもない風を装って、声を掛ける喉はやや掠れていた。
「聖人」
その声に犬の耳があったらピンと立ったことだろう、きょろきょろと辺りを見渡して、俺を見つけた聖人が顔を綻ばせる。
「巧!」
その一連の仕草にはなんの計算もなくて、だから余計に心が締め付けられる。
「よかったら、その…」
「おう、一緒に帰ろうぜ!」
言いたい言葉の最後を掬い、聖人が当たり前のように隣へ並んでくれた。
一週間のテスト期間の最中には一度も会えなかったから、久しぶりの距離感は気分を浮つかせる。
歩くたびに少しだけ触れる、肩。
劣情のままに引き寄せてしまいたい。
何度も衝動に駆られながら、表情はいつもの通りに繕う。
こんな浅ましい自分を知ったら、どう思うだろうか。
考えると恐怖心が芽生えるのに、こいつなら否定しないでいてくれるはずだ、なんて実に楽観的な答えを期待してしまう。
「あーひっさしぶりに動いたから疲れた~」
「たった1週間だろう?それにお前のことだから、走りこみ位はしていたと思うが」
「まーなー。これで本当になんにもしてなかったら、それこそシバっちにどやされるって」
「それでもレギュラーか!ってさ~」と顧問の真似をしてみせながら、聖人が笑う。
少し似ていたそれに、つられて小さく笑った。
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(…大人気なかったか)
頂点に上った太陽が照らす、帰り道。
隣でいつものように色んな話をする聖人を横目に、オレは少し反省していた。
帰ってしまうコイツを見た途端、頭で考えるよりも先に声を掛けていた。
テストが始まってから、ろくに話もしていなかった。
それが思った以上にオレの中でストレスになっていたようで、テスト中も殆ど集中出来ない始末だった。
まあ点の方は心配は無いが、それよりも大事なのはこいつのことで。
聖人が、オレと距離を取るんじゃないか。
そう考えただけで、堪らなかった。
どうやらこいつの存在は、オレの考えるよりもずっとずっと――心の深くに根付いているらしい。
これが他の誰かだったなら、きっと何にも思わない。
オレは結構酷い奴だから、近付いてくる人間にも関心がないし、離れていく人間は追いかけたりしない。
(俊にも、フォローしとかないとな…)
2人で帰るとはっきり言ってしまったから、怪訝に思ったことだろう。
俊はいい奴だから傷つけるのは本位ではなし、明日適当に誤魔化しておこう。
「お」
ぐるり、と思考が一周したところで、一通り話し終えた聖人が声をあげた。
何事かと思ってみれば、こいつが好きでよく利用している駅前のコンビニが見えていた。
と、なれば。次に言うことは決まっている。
聖人はこちらを向くと、まるでおやつを待っている子犬のようにきらきらした眼差しで続けた。
「なあ翼、オレアイス食べたい!」
ほら、やっぱりだ。
頂点に上った太陽が照らす、帰り道。
隣でいつものように色んな話をする聖人を横目に、オレは少し反省していた。
帰ってしまうコイツを見た途端、頭で考えるよりも先に声を掛けていた。
テストが始まってから、ろくに話もしていなかった。
それが思った以上にオレの中でストレスになっていたようで、テスト中も殆ど集中出来ない始末だった。
まあ点の方は心配は無いが、それよりも大事なのはこいつのことで。
聖人が、オレと距離を取るんじゃないか。
そう考えただけで、堪らなかった。
どうやらこいつの存在は、オレの考えるよりもずっとずっと――心の深くに根付いているらしい。
これが他の誰かだったなら、きっと何にも思わない。
オレは結構酷い奴だから、近付いてくる人間にも関心がないし、離れていく人間は追いかけたりしない。
(俊にも、フォローしとかないとな…)
2人で帰るとはっきり言ってしまったから、怪訝に思ったことだろう。
俊はいい奴だから傷つけるのは本位ではなし、明日適当に誤魔化しておこう。
「お」
ぐるり、と思考が一周したところで、一通り話し終えた聖人が声をあげた。
何事かと思ってみれば、こいつが好きでよく利用している駅前のコンビニが見えていた。
と、なれば。次に言うことは決まっている。
聖人はこちらを向くと、まるでおやつを待っている子犬のようにきらきらした眼差しで続けた。
「なあ翼、オレアイス食べたい!」
ほら、やっぱりだ。
「聖人!」
その声に、びくりと肩が揺れた。
まさか呼び止められるとは思っていなかったからだ。
テストが終わって帰ろうとちらりと翼を見たら、俊と楽しげに会話を交わしていた。
あの日…テスト勉強を一人でやろうと思ってから、どことなくあの2人の仲に入ることが戸惑われていた。
友達同士でこんなことを考えるのは可笑しいのだと、分かってはいる…んだけど。
今の頭の中がぐちゃぐちゃになってるオレが、彼らと一緒にいるのは悪いような気がして…どうしても距離を取ってしまう自分が居た。
(…なんて、言い訳か)
上手く笑える気がしない。
いつものオレでいられる自信が、ないんだ。
傍にいた友人と適当な会話を交わして、オレはもう帰ってしまおうと鞄を肩に掛けなおした。
横目で2人を映しながら、こちらに背を向けている翼は気付かないだろうと思いながら――
(さっさと帰って明日のテスト勉強しよ…)
ぼんやりそう思ったときだった。
翼がオレの名前を呼んだかと思うと、傍まで足早にやってきた。
「な、なに」
「何じゃねえよ。なんで一人で帰ろうとしてんだ」
「なんでって…オレだって早く帰って勉強したいし」
下手な言い訳だと思いつつ、他に上手い言葉も見つからない。
翼はじっと、真っ直ぐな黒檀の瞳をオレに向ける。
昔からこういうときに目が合うと、必ずボロが出る。
だから直視出来なくて僅かに視線を下げると、翼が溜息を吐いた。
きっとその癖すら見抜かれているんだろう。
「…じゃあ、一緒に帰ろうぜ」
「へ?」
その声に、びくりと肩が揺れた。
まさか呼び止められるとは思っていなかったからだ。
テストが終わって帰ろうとちらりと翼を見たら、俊と楽しげに会話を交わしていた。
あの日…テスト勉強を一人でやろうと思ってから、どことなくあの2人の仲に入ることが戸惑われていた。
友達同士でこんなことを考えるのは可笑しいのだと、分かってはいる…んだけど。
今の頭の中がぐちゃぐちゃになってるオレが、彼らと一緒にいるのは悪いような気がして…どうしても距離を取ってしまう自分が居た。
(…なんて、言い訳か)
上手く笑える気がしない。
いつものオレでいられる自信が、ないんだ。
傍にいた友人と適当な会話を交わして、オレはもう帰ってしまおうと鞄を肩に掛けなおした。
横目で2人を映しながら、こちらに背を向けている翼は気付かないだろうと思いながら――
(さっさと帰って明日のテスト勉強しよ…)
ぼんやりそう思ったときだった。
翼がオレの名前を呼んだかと思うと、傍まで足早にやってきた。
「な、なに」
「何じゃねえよ。なんで一人で帰ろうとしてんだ」
「なんでって…オレだって早く帰って勉強したいし」
下手な言い訳だと思いつつ、他に上手い言葉も見つからない。
翼はじっと、真っ直ぐな黒檀の瞳をオレに向ける。
昔からこういうときに目が合うと、必ずボロが出る。
だから直視出来なくて僅かに視線を下げると、翼が溜息を吐いた。
きっとその癖すら見抜かれているんだろう。
「…じゃあ、一緒に帰ろうぜ」
「へ?」
テスト終了を告げるチャイムが鳴り、教室中から緊張感が抜ける。
僕も詰めていた息を吐き出し、シャーペンを置いた。
一昨日から続いていたテストも、これで残すところ1日となった。
最終日は得意な教科ばかりだから、そう思うと随分と気が楽になる。
後ろの生徒が順にテスト用紙を回収し、教師が出て行ったところで生徒達も騒ぎ出す。
(翼はどうだったかな…)
こんなことを聞くまでもないだろうけれど、つい視線が彼を追ってしまうのはもう癖のようなものだった。
ちらり、と後ろを振り返ると、彼は筆記用具を仕舞っているところだった。
「つば…」
声が届かない範囲ではない。
だからつい呼ぼうとしたところで…彼の視線が動いた。
それに気付き、僕はそのまま止まってしまった。
翼はその斜め後ろの席の、ある人物を見遣っていた。
(聖人…くん?)
見つめられている当の本人は、他の生徒達に囲まれて楽しそうに笑っている。
それを、じっと動かずに見つめている翼は――一体、どんな顔をしているのだろう。
傍に行けば、このまま呼び掛ければ――きっと翼は、いつものように笑いかけてくれる。
だけど何故だか…それが、出来ない自分が居た。
「おーい、席付けーさっさと終わらせるぞー」
そうこうしているうちにSHRの為に担任教師がやってきて、立っていた生徒がバラバラと席に着く。
よかった、とよく分からない安堵を抱えて、僕は担任の言葉を上の空で聞いていた。
僕も詰めていた息を吐き出し、シャーペンを置いた。
一昨日から続いていたテストも、これで残すところ1日となった。
最終日は得意な教科ばかりだから、そう思うと随分と気が楽になる。
後ろの生徒が順にテスト用紙を回収し、教師が出て行ったところで生徒達も騒ぎ出す。
(翼はどうだったかな…)
こんなことを聞くまでもないだろうけれど、つい視線が彼を追ってしまうのはもう癖のようなものだった。
ちらり、と後ろを振り返ると、彼は筆記用具を仕舞っているところだった。
「つば…」
声が届かない範囲ではない。
だからつい呼ぼうとしたところで…彼の視線が動いた。
それに気付き、僕はそのまま止まってしまった。
翼はその斜め後ろの席の、ある人物を見遣っていた。
(聖人…くん?)
見つめられている当の本人は、他の生徒達に囲まれて楽しそうに笑っている。
それを、じっと動かずに見つめている翼は――一体、どんな顔をしているのだろう。
傍に行けば、このまま呼び掛ければ――きっと翼は、いつものように笑いかけてくれる。
だけど何故だか…それが、出来ない自分が居た。
「おーい、席付けーさっさと終わらせるぞー」
そうこうしているうちにSHRの為に担任教師がやってきて、立っていた生徒がバラバラと席に着く。
よかった、とよく分からない安堵を抱えて、僕は担任の言葉を上の空で聞いていた。