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オリジナルBL小説を扱ってます。 メインはLiebeシリーズ(不良×平凡)サブでCuadradoシリーズ(生徒会長×お調子者と親友たちの4角関係)も。pixivで漫画連載してます。更新情報はツイッターでどうぞ。
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「翼っ」

どこか焦ったような声に呼び戻された。
はた、と顔をあげれば、こちらを不思議そうに窺っている俊と、相変わらずの仏頂面の巧がいた。

…否。相変わらず、というのは語弊がある。
何の感情も浮かべていないようでいて――そこにありありと示しているのは、あからさまな殺気。
尤も、それに気づくのは同種の感情を持ち合わせている者だけだろう。

(…やべ)

オレは今、何をしていた?
伸ばしていた手を間抜けにもゆっくりと目線で追う。
自分の指が、頬に触れていた。
女の子のように白いわけでもない――けれども艶かしいまでに柔らかく誘う、その肌に。

「っ…」

驚いて手を離す。
友人以上の接触を、範囲を超えぬようにしていた筈なのに…自分からあっさりと跨いでしまっていた。
「も、平気だろ…気をつけろよ、な」
視線を外しながら、平静を装う。
心臓は早鐘のように鳴り響いていた。

不審には思われなかっただろうか。悟られなかっただろうか。


「おう、あんがとなー」

それは杞憂だったらしい。
まだちょっと痛いけど、と言って笑う聖人からは何の疑いも感じられなくて、ほ、と息を吐いた。


自分でもよく分かっている、この感情がコントロール出来なくなっていることを。
あまりに無防備なコイツに、幾度となく高ぶりそうになる熱を抑えることに苦労している。
一人で勝手に盛り上がって、一人でブレーキを掛けて…完全に独り相撲だ。

(こんなこと…コイツに知られたら、終りだな)

自分の席に戻り腰を降ろしながら、深い深い溜息を吐く。
聖人は傷つくことだろう。
漸く心を許せる親友が出来たのに、そいつが己のことを恋愛対象としてみているなんて。

(いや…)

そんな生温い言葉では到底片付けられない。
本当は、もっともっと――


「ほんと、火傷には気をつけなきゃだよな~」

この場の微妙な空気に気付かない聖人が、両手でコップを持つと何度も息を吹きかけながら恐る恐るカップに口をつけた。
そしてぽつり、と続ける。


「日曜もさ」
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※これはキリリク作品で、「山田くんの~」の後日談です。

オレが扉を開けた途端、殆ど全ての人の視線が集中した。
先ほどまで友人達と雑談に花を咲かせていた生徒の凍りついたその表情に、どう思われているのか容易に想像がつく。

(…まあ…無理もない、よね…)

平凡代表の看板を背負って歩いているようなオレの頬には、昨日までなかったガーゼが当てられて。
その後ろに、この学校…いやこの地域トップと称される不良グループの総長が立っているのだから。


「じゃあ、また昼迎えに来る」
「あ、はい。有難う御座います」

しかし篤也先輩はそんな彼らの視線など慣れたものなのか、気にも留めずオレに話しかける。
頷いたオレの頭を撫で満足そうに口端を緩めた先輩は、そのまま廊下を歩いていった。
先輩の背中を見送ってから、オレも教室に一歩足を踏み入れる。
…正直こんな空気の中に入りたくは無かったけれど、致し方ない。

「な、ななな、直!」

と、途端に金縛りが解けた様に駆け寄ってきたのは、親友の順平だった。すっかり顔面蒼白だ。
「お、お前」
「ま、待って!これは先輩に殴られたんじゃないから!」

皆まで言うな、と手で制しながら取り敢えず最大の誤解を解いておく。
ロードに時間がかかったようで、順平は暫く固まっていた。
そしてゆっくりと数回、瞬きをした。

「…え、違うの?」


それから短い休み時間をいくつか使って、なんとか昨日までのあらまし全てを説明することが出来た。
Red Scorpionに対立するグループに拉致されたこと。
そこには先輩のことを好きな女性もいて、知らない間に恨みを買ってしまっていたこと。
襲われそうになりピンチのところを、間一髪で先輩達に助けてもらったこと。

そして何より――オレ自身の気持ちに気づくことが出来て、先輩と正式な恋人同士になれた、こと。


全てを話し終える頃には、順平もすっかり安心したようだ。
そっか、としきりに何度も相槌を打って聞いていた。

「オレさ、結構心配してたんだよ。直ってさ、自分の気持ち中々口に出せないだろ?」
「うん…そう、かな」
思い当たる節は沢山ある、と思いながら同意を示すと、順平が大きな手でがしがしと頭を撫でた。
先輩のそれとは違って友人同士の気安いそれに、思わず笑みが浮かぶ。

「ちょっと順平、髪ぐしゃぐしゃに…」
「…直が幸せそうで、よかった」
「…え」
急に変わったトーンに彼を見る。
凪のような穏やかな瞳には本当に心配してくれていたんだと窺える優しさが滲んでいて、微かに息を呑んだ。
こんな彼の顔は、初めて見たかもしれない。

「自覚ないかもしんないけど…篤也先輩の話するとき、お前すっげえいい顔してるよ」
「…そう、かな?」
「ああ。…ちゃんと恋人、なんだな」
「…順平…」

改めて第三者から「恋人」と言われると、本当にそう思ってもらえるのだと…思ってもいいのだと、知る。
順平はとても頼もしい笑顔で、応援するからな、と言ってくれた。

「ここだよ、ここ」

数歩前を歩いていた聖人くんが立ち止まる。
僕は無意識に止めていた息をそっと吐き出した。

放課後ということと、ここが特に一般の生徒も近寄らないということもあって、学校の中でも酷く静かな一角。
ここに掛けられているプレートが、その厳かな雰囲気を醸しだしているのかもしれない。
事実、僕もちょっと緊張しているくらいだ。

けれど、聖人くんは変わらない。
中に居るのが自分の友達だからだろうか、その普段の振る舞いが羨ましく映る。

「んじゃ、入ろっか」

まるで鼻歌でも歌いだしそうな調子で僕にそう声を掛けると、迷うこともなく扉を開けた。


「よーっす!」

その声に、中にいた役員が2人、顔をこちらに向ける。
いつものように無表情な西園寺くんと、そして眼鏡を掛けた…翼だ。


「お前なあ…ノックくらいしたらどうだ」
「あれ?今してなかったっけ?ごめんごめん」
「ったく…もうオレ達しかいないからいいけどな…」
呆れて溜息を吐いた翼が、読んでいた書類を机に置いた。
僕達の登場で集中力が切れたらしい。
休む態勢に入ったのだろう、西園寺くんも立ち上がる。

今日は放課後、生徒会室にいる翼に会いに来た。
尤もそれは聖人くんの用事だったのだけれど、僕も行きたいと我侭を言ったのだ。
彼が快く了承してくれたので、こうして教室以外の、普段では入室できない場所にまで来ている。

「あ、皆帰ったんだ」
「ああ、だから自由に座ってくれ」
「おう!ありがと、巧」
コーヒーの置いてある給湯室へ向かうその背中に声を掛けた聖人くんが、翼の右隣に腰を降ろす。

僕は自然を装い、反対側に座ることにした。
丁度西園寺くんが座っていた席の二つ隣だ。


「あの、ごめんね翼…仕事の邪魔、しちゃったよね」
彼に行くことは伝えてあったとはいえ、困らせてしまったかなと思い翼にそっと声を掛ける。
すると眼鏡を外しながら、彼はにこり、と微笑んだ。

「ああ…いいんだ。どうせ、そろそろ休憩しようと思ってたところだから」
「そう、なんだ?」
「ああ。だから俊が気にすることじゃないから、な」
「っ」


笑顔を讃えたまま、翼にそっと頭を撫でられる。
大きなそれに初めて触れられ、どきりと心臓が大きく音を立てた。

(どうしよう、顔真っ赤だよ…)
キリ番を踏んで下さった方、一言コメント有難う御座いました!
最近仕事が忙しく先月は中々更新できてなくてすみませんでした…!
今Cuadradoシリーズについてはネタ神さまが舞い降りてますので(笑)
書けるうちに頑張りたいと思います…!

Liebeもまだまだお話はありますので、これからもどうぞ見てやってくださいませ!

コメント有難うございましたー!
「つっばさ!」

授業終了を告げるチャイムが鳴り終わる前に、突然背中へ体重が掛かる。
教室を出て行こうとしていた英語の年配女性教師に笑われたのが視界の端に映って、オレはわざと呆れたように溜息を吐いた。
コイツが真っ先にオレに報告しにくるであろうことは予測していたのだが、そんなことはおくびにも出さないでおく。

「聖人、重い」
回された腕や首筋に感じる体温になるべく意識を向けないようにしながら、身体を起こす。
するりと解けたそれに、そうなるようにしたのは自分なのに酷く残念に思う。

「じゃーん!見てみて!この点数!」

ご丁寧に自分で効果音をつけて広げて見せてきたのは、授業開始早々に返却された先週のテストだ。
赤いペンで70点と書かれている文字が少し大きいような気がするのは、先生もこの結果に多少ならずとも感動しているからだろうか。
(そうだろうな…こいつっていつも赤点ギリギリだし)

「おおーよかったな」
本当はテストを受け取った聖人が大げさに喜んでいた時点で大方分かってはいたのだが、初めて知ったように喜んでやる。
そんな簡単なことで、こいつは本当に嬉しそうに笑うから。

オレはなるべく自然を装い、その頭をくしゃくしゃと撫でた。
「へっへー!」
「言ったろ?お前はやれば出来るって」
「おう!」
気持ちよさそうに目を細める仕草は猫のようだ。

オレと数センチしか変わらないのに、もっと撫でて欲しいのか首を傾けてくるから聖人が自然と上目遣いになる。
「なあ、オレって実は天才だったりするかな」
きらきらと光る瞳がこちらを覗くだけで、えも言われぬ劣情がせりあがってくる。

オレは無意識に唾を飲み込んでいた。
耐えろ、と強く念じながら、最後はわざと髪をぐちゃぐちゃに乱してやる。
「…次に直すのはそのすぐ調子に乗るところだな」
「ぐわっ」
急に乱暴になった仕草に聖人がよろける。

(危なかった…)
これで、ぽんぽんといつもの小気味のいいやり取りになったはず、だ。

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